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第34話



 畜生、見つかった。


「おーいおい。逃げんなよお。上司のお願いだ。なっ? 頼むよ!」


 影の中からぬっと出てきたのは、背は高いが痩せぎすの、常にどちらかの眉が歪み上がっている飄々とした男だった。


「サ、サンジュリオ師団長……」


 後ずさりながら、目の前に迫り来る男の名を呼んだ。


「おいおいおいおい、せっ、かっ、くっ、俺が特務隊に抜擢してやったのに、抜け出すたあな。それにしても馬鹿だなあ、お前は。この前逃げ切れたときに盟王都から出て行っときゃまだ生きられていたかもしんねーのに。俺の部下たちを薙ぎ倒していったあの女はどうしたぃ?」


 特務隊を一方的に抜けて逃げていたとき、追っ手に掴まり殺されかけた。

 そのとき彼女が目の前に現れ、瞬く間に訓練された九人の追っ手を撃退した。目を見張る光景だった。あの特務隊が手も足もでなかった。

 触れさせるどころか、構えることすら許さない神速の体術と石を穿つ拳。

 自分より背丈が高いながら、女性の細身にしっかりと乗った筋肉。腰辺りまで伸ばした赤髪は、まるで神獣を従えているかのように勇猛に舞う。


 ひと目で美しいと思った。顔立ちも、その立ち姿も。

 倒れていた自分を引き起こし大丈夫かと声をかけてくれた彼女は、自分が誰を倒したのかまるで知らないようだった。

 彼女に危険を伝えたかったが、声が届く前に去ってしまった。

 追っ手はチンピラに偽装していたから、彼女はおそらくリンチにでも遭っているんだと思ったのだろう。目の前で一人が複数人に襲われているのを見過ごせなかっただけかもしれない。しかしそれだけでも、彼女の真っ直ぐな心根が垣間見える気がした。


 彼女はその後、騎士試験の最中に貴族の子女誘拐を企て指名手配されたと聞いた。

 信じられなかった。短い邂逅ではあったが、彼女がそんなことをするような人間ではないことはわかっていた。でなければ自分のような人間を助けたりはしない。

 おそらく、サンジュリオ師団長の差し金だ。


「わ、わかりません。俺も知らない奴です……」


 彼女のことは絶対に口を割るわけにはいかない。

 ようやく掴んだ彼女の居場所。自分がしらばっくれていれば、師団長は何もわからないはずだ。


「んじゃあお前は、逃げてる最中に散歩してたヒーローにたまたま出くわして、そいつは俺の部下をぼっこぼこにして去っていったってわけか」


 明らかに不愉快そうな顔をしている。だがそれに関しては事実そうなのだ。彼女と出会ったのは全くの偶然だった。


「都合がいいのは認めます。ですが、俺はその人とそれ以上の関わりはありません。言葉で説明するなら、師団長の言った通りです」

「おかしな話だなあ? んじゃなんでお前は九死の一生を得たのにまだこんなところをほっつき歩いてるんだ? 俺は逃げることも思いつかねえような無能を隊に入れちまったってのか? つまりは、俺は人を見る目がなくて無能だってことだな?」


 威圧的に顔を近づけてくるサンジュリオ師団長。

 顔は笑っているが、目の奥の光は墓場に潜む野犬のように暗い。


「な? ほんとは知ってんだろ? そいつのゆ・く・え」


 男は顔と目を逸らし言い訳を口にする。 


「俺がここに残っていたのは……俺は、探していたんです……マクガネル副師団長を」


 あまり師団長の前でこの名前を出したくはなかったが、言い逃れるには他に方法がない。


「ああ?」


 その名前を出した瞬間、師団長の声が濁る。


「お前、俺があの正義漢ぶった野郎のこと嫌いなの知ってんだろ。俺の出世街道をことごとく妨害してくるいけすかねえ奴。なんだよ。お前、そっち側だったのか」

「た、単に意見をお聞きしたいだけです。俺がやってきたことは正しいことだったのかと」

「おいおい、おいおいおいおい? いつからお前は良い子ちゃんになったんだ? お前、昔はちゃちな盗賊だったよな? だから俺は、お前の経歴を尊重して特殊な任務をこなす特務隊に入れてやったんだぜ?」


 男は口ごもる。

 騎士軍は中央と東西南北の師団、さらに地方の常駐騎士をあわせて、総計数万人以上にもなる盟王国屈指の大規模集団だ。

 そこまで多いと全員が全員、出自が綺麗な者たちばかりではない。クリーンな貴族は大抵が中央の近衛隊に所属するし、一般騎士はほとんどが民間の出だ。

 中には、自分のように悪徳から足を洗って騎士になった者もいる。


 盗賊、傭兵、騎士と、生きる道を変えてきた。汚い道でしか生きられなかった自分に、盟王都で誘われ騎士になれたときは、心も洗われたようだった。

 実際には騎士とは言っても、自分は名ばかりの単なる雑兵に過ぎないことはわかっていた。現在の善行が褒められても、過去の蛮行が消えないこともわかっていた。

 それでも自分が光の舞台に上がれたような気がして、嬉しかったのだ。


 騎士となって数年目のある日、所属が決まったヴェストリ師団での任務中、ベリオ・サンジュリオ師団長から直接誘いがあった。

 ああ。お前は身のこなしが軽くていい。真正面から敵とぶつかっていくより、敵を翻弄して欺く方が向いてる。どうだ。お前みたいなやつに、ぴったしな部隊があるんだが。

 騎士であれれば一生末端の兵士でも構わないと思っていたころに、降って湧いた昇進の話。


 一も二も無く飛びついた。

 そうして所属することになったヴェストリ師団特務隊。盟王都や地方の治安維持、獣魔の討伐、災害救助、そういったことを主体とする一般騎士とは異なり、五人から二十人の小・中隊規模で別働隊として行動し、表には出せない任務を専門とする特殊部隊だった。

 要人の護衛、重要物資の護送、レジスタンスの抑制と危険因子の暗殺、汚職貴族の内偵――

 盟王都が抱える暗部の問題を解決するための作戦を次々任されていった。


 まるで自分が盟王都の深部に入り込んでいるような、一般人が知らない秘密を自分だけが知っているかのような高揚感に浸っている内に、気づけば知ってはいけないことを知り、知ったまま生きるためにはこの隊が不可欠になっていた。


「忘れたとは言わせねえぜえ? お前はその経験を活かして特務騎士としてもなんでもやったよな? 殺し、盗み、――誘拐もだ」

「――くっ」


 何も言い返せなかった。

 一年前のある日、あの任務もそうだった。隊を抜けるきっかけとなった、あの任務。

 最初は、不法難民のキャラバンを摘発しその中にいる隣国パルナトケのスパイを確保すると聞かされていた。


 初めは義憤に燃えていた。

 スパイなどと祖国を貶めるような輩は即刻処分されるべきだとすら考えていた。

 遠征した先で、不法難民キャラバンを見つけた。彼らは移動しながらテントで暮らし、釣りや狩猟で得た肉を食い、骨や牙で造った工芸品を近くの町村で売って生きていた。


 一見、難民とも思えぬ穏やかな暮らしぶり。

 あの中にスパイが、と疑いすら持たなかった。

 隙をついて強襲し、ヴェストリ騎士団特務隊は瞬く間に難民たちを制圧した。


 だがその中に一人、十人以上の騎士を前にして一人立ち塞がる男がいた。

 特異な魔力の使い方をする民族だった。その男は両手両足に濃い魔力を宿し、騎士たちの剣すら生身で撥ね除けた。

 しかし多勢に無勢だ。その難民の戦士は組み伏せられ、剣で両足の腱を切り裂かれた。あれではもはやこの先立ち上がることもままならないだろう。


 そのとき難民の子どもが叫んでいた、トーレンという名が今も耳に残っている。

 彼が一番の腕利きだったに違いない。彼を制圧した後は、武力で抵抗してくる者はいなかった。

 隊長は難民たちを殺すことを禁じた。その代わり、全員にある薬を飲ませた。スパイを炙り出すための薬だと言っていた。


 薬は効果てきめんだった。瞬く間に難民たちは意識が混濁し、ただこちらの指示を聞くだけの人形と成り果てた。

 隊長は全員を貨物車に詰め込んだ。指を挟みこむことすら難しいほどにぎちぎちに詰め込まれても、難民たちは一つも泣き声をあげなかった。中には十歳に満たない子どもたちや、まだ母親の腕に抱かれている赤ん坊もいたにも関わらずだ。


 そこにきてようやく疑念が湧いた。これが本当にスパイを捕まえるためのやり方なのか?

 貨物車の中で虚ろに開く両目と口。貨物車の揺れでぶつかり合っても、誰も呻き声すら漏らさない。

 異様な光景だった。帰路の途で、何度も吐き気を催した。隊長にいくら尋ねてもこんなことをする理由を教えてもらえなかった。


 薬が抜ければ彼らも元通りになる、そう自分に言い聞かせて耐え続けた。

 重い貨物を運ぶために訓練された獣魔は、人の肉詰めと化した貨物車をいとも容易く盟王都へ持ち帰った。

 ようやくこの陰惨な仕事から離れられる。彼らもじきに意識を取りもどすだろう。そう安堵した矢先だった。


 事は難民を連れ帰るだけに留まらなかった。今、彼らは――――。

 あれは、盟王国を守るための任務なんかじゃない。

 誘拐だ。それも、どこまでも利己的で、言葉に絶するほどに非人道的な。


「だ、だって俺は、キャラバンが盟王国防衛の危険因子だとしか知らされてなくて、なのに、なのに――盗賊だってしない。あんな、惨いことを……」


 任務の中には、人の命を奪わなければならないものもあった。心は痛んだが、任務だと割り切ってこなした。それができたのは、相手にも斬られる理由があったからだ。


 そう。人の命を、尊厳を奪うには理由が必要だった。

 だが最後の任務にはそれだけが足りていなかった。彼らは不法難民とはいえ、ただ生きるために過酷な環境から逃げてきただけなのだ。


 師団長は「はあ~あ」と大袈裟な溜息を吐く。


「呑み込めよ。呑み込んどきゃよかったんだよ。腹の中に入っちまえばみーんなどうでもよくなっちまう。嫁の不味いメシだってそうだろ? 口ん中に入れてる間だけが一番つれーんだよ。でも呑み込みゃ少しは楽になる。特務隊の任務だってそういうもんだ」


 サンジュリオ師団長は舌を出して演技掛かった不愉快そうな顔をしてみせてくる。

「な? お前のことだ。いたずらに機密を漏らしたりはしてねえんだろ? 今悔い改めれば特務隊に戻ってこれるように取り計らったっていいんだ。また俺と働こうぜ? 頼れる仲間と一緒に啜れば、どんな泥水だって美味い酒になる」


 その言葉に自分でも不思議なほどに揺れ動かなかった。

 それはきっと、彼女に助けられたからだろう。特務隊から逃げ自分の道に迷っていたそのときに、彼女は真っ直ぐな視線で俺の道を定めてくれた。


 あのとき決めたのだ。必ず告発すると。

 俺は、腐っても騎士だ。マクガネル副師団長だって、きっとこの不正を許しはしない。彼に辿り着きさえすれば、俺は自分の最後の高潔さを守れる。


「できません! 人を使ってあんなことをするなんて、騎士としての恥だ!」


 師団長に自分がどこまで通じるかはわからない。

 だが、ただで殺されるようなことはしない。噛みついてでもねじ伏せる。

 そう、掴みかかろうとしたときだった。


「あっそ。そりゃ残念」

「……あ、が?」


 なぜ……。師団長はまだ剣を抜いていなかったはず。

 黙って殺されるつもりはなかった。

 この人数相手には勝てなくとも、逃げる算段はとっていた。


 なのになぜ、自分の胸のど真ん中に深深と剣が突き刺さっているのか。

 この剣は、突然現れた。まるで元から自分の胸に刺さっていたかのように。


 これが、サンジュリオ師団長の力なのか。

 サンジュリオ師団長の強さは騎士団内でもよく噂になっていた。師団長に上り詰めるくらいなのだから、彼は並み居る猛者たちを下すほどの実力を持っているのだろうと。

 ただ、彼は決して他の騎士たちに戦う姿を見せなかった。訓練でも指導監督するばかりで自ら剣を握ったことはない。騎士団の中には彼が裏のコネクションで師団長にのし上がったのだとあけすけに言う者もいた。


 その認識が根底から間違っていたことを、たった今思い知った。

 彼はずっと、目の前で魔力を行使していたのだ。

 自分たちが気づかなかった間抜けなだけだったのだ。

 初めて目の当たりにした。いや、目にできなかっただけだ。見るものではなかったのだから。


 魔力による剣の透明化。

 サンジュリオ師団長は、常に抜き身の剣を自分の傍にぶら下げていた。

 腰に下げている騎士剣は、ただ相手を油断させるためのフェイク。おちゃらけたようにいつもぶらぶらと開いた両手は何も持っていないと見せかけるための動作だった。

 自分は胸元に剣先を突きつけられていながら、馬鹿のように吠え、自ら前に進んだのだ。


「ぐ、……うぐ……」


 伝えなければ。

 不意をつかれさえしなければ、彼女ならこの難局を乗り越えることができるはずだ。


 ああ、そうだ。今までなぜ気づかなかったのだろう。あの貨物車の記憶から目を離したくて、そんなこともわからなった。

 彼女の戦い方は、自分が連れ帰ってきた難民のあの戦士の戦い方にそっくりだ。

 彼女はきっとあの難民キャラバンの一員だったのだ。盟王都にいるのは一年前に消えた自分の一族を探しに来たのだろう。


 俺は死ぬ。

 死に際だからこそわかることがある。

 どうして自分がこれほど彼女に惹かれるのか。

 直感めいた感覚だったが、今なら言葉にできそうなほどに明瞭にわかる。


彼女はいずれ、この世を導く存在となる。

 去っていく彼女の背中越しに、輝く未来が見えたのだ。

 彼女がヒトの先頭に立ち、あの赤髪をたなびかせながら余裕の笑みで後ろにいる自分たちを振り返る姿が。


「……だから、伝えなければ……。彼女なら、盟王都を……」


 ようやく、見つけたのだ。彼女を。

 彼女なら、この腐った騎士軍から、盟王国の信念を取り戻してくれる。


「おいおい、おおい。その状態で走んのかよ。心臓ぶっ刺したはずなんだけどな?」


 師団長は嗤いながら、驚きを口にした。どれもこれもが演技がかって見えた。

 構うものか。伝えるのだ。

 サンジュリオ師団長の危険性と、そして彼女の家族や仲間たちが今どこにいるのかを。

 彼女に。人類の次なる英雄となるべき、あの若者に。


 師団長に背を向け、一心不乱に足を動かした。周囲の騎士たちの存在も忘れ、ただ一歩でも多く彼女に近付くために走った。


「つ、伝え……っが、はっ! な、な……っ!」


 瞠目した。またいつの間にかまた別の剣が刺さっていた。今度は腹に。

 透明になっているのは、一振りだけではなかった。見えない剣はまだあったのだ。

 しかも、刺さったのは師団長に背を向けて後ろを向いている自分の正面からだ。彼は二本目の剣をその手で持ってすらいなかったわけだ。


 一体、どうやって――


「あぐ……、く、くそ……」


 もう足は動かせなかった。師団長は悠々と歩いて追い越し、正面から見据えてくる。


「いいねえ。その悔しさに歪む表情。おまえ本来の育ちの悪さが滲み出てるねえ」


 満足げに嗤うサンジュリオ師団長は刺さった騎士剣に手を伸ばし、


「ほいっと」


 男の腹を力任せに横に斬り払った。







「死体は適当に剥いで浮浪者っぽく見せてそこらに放り投げとけ。どうせここらへんにいんのは貧乏人ばっかだから。死体とかいちいち調べねえから、あいつら」


 隊員の二人が死体を担ぎ、薄暗い路地の奥へと運んでいく。

 師団長は一仕事終えたというように腕を上に伸ばし筋肉をほぐす。

 休みが欲しいが重役というのは立て続けに腰を上げなければならないもののようだ、と自虐するように笑い、後ろに並ぶ部下を見渡す。


「よーし、今度はクーシェルから来たっつう奴らだ。なんでも一人は魔力量が凄まじいらしくてな。それから、もう一人の女の方も目と顔が良いらしい。ついでに多分身体も良い。千里眼っつうやつか? 俺とは相性わりいかもしんねえなあ。下手に動いても把握される恐れがあるらしいから十分作戦練っていけよ。ああ、それから、弟子も一緒にいるらしいが、まあ無視でいいだろ。使えそうなら諸共連れてけ」


 指示を飛ばすと隊員の一人が報告の許諾を求め、師団長は鷹揚に許可を与えた。


「あ? オリンゲンが急かしてくる? ああん、そんなのほっとけほっとけ。どうせあいつもそろそろボロが出そうで焦ってるだけだろ。ったく、もっと胸張れってんだ。人間なんてな、それっぽい服と家の中にいりゃ誰でも貴族に見えんだよ」


 一通りの命令を終えると、隊員たちの姿は影の中に溶け込むようにかき消える。表に出てくる騎士とは異なる、隠密で動く特殊な魔力訓練を積んだ兵士たち。


 王立騎士軍ヴェストリ師団特務隊。

 その実態は、サンジュリオ師団長の意のままに動き、目的のためなら暗殺・強盗・誘拐すら厭わない盟王都の暗部。


「新人に任せるにゃちっとばかし尚早だったかな。今度入れるやつはもっと教育してからがよさそうだ。ったく、ああゆうことも盟王都の発展のためには必要なことだってわかんねえ馬鹿がよお」


 サンジュリオ師団長は決して騎士軍を自己利益のために使っているとは思っていない。

 むしろ自分の働きこそが盟王都を支えていると自負している。

 さきの難民誘拐も、自分に必要だからやったわけではないのだ。

 全く以て、これほど祖国想いの男が他にいようか。


「にしても、俺のかわいい部下たちがたった一人にやられたってのは気にくわねえな。せめて実験体になってもらわんとこっちばっか損失が出て不公平じゃねえかよ。こっちもこれで一人死んだし、あいつも死んでもらう。それで等価ってもんだろ? な?」


 一人その場の残るサンジュリオ師団長は、月明かりに照らされた元部下の流した血の跡を一瞥し、踏みにじって口を歪める。


「ったく。どいつもこいつもマクガネルマクガネル。そんなにあの堅物がいいのかねえ。俺の方が気さくなのになあ? なあ、俺の方が上司として理想的じゃねえかよ。そうだろ?」


 うん、間違いねえ。と自分で納得し、気分がよくなったところで帰路につく。


「今ごろあいつも培養液の中でぐっすり眠ってんだろ。魔力の使い手としてだけは優秀だったしな。盟王国の発展に自らの身体で貢献。か~っ! 偉いねえ」


 その献身に杯くらいは傾けてやろうか。


「ま、俺がぶっ込んだんだけどな。素体として丁度よかったし」


 今日は酒が一層美味そうだ。







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