2 ユニークスキル
気が付かれたか。とは言え、すでに家族や友達は俺に違和感を感じている様子だった。そうなると爺さんにも気が付かれるかなとは思っていた。ここまでは予想通り、悪いことをしているわけでもないしうまく説得すれば、彼も納得してくれるだろう。ロアの記憶からして最大の理解者になってくれる可能性は高い。どのように話を進めるべきか。思慮深い人だから思いつきの小細工は通用しない。ここは大胆に攻めていくか。
「実は転生者です」
「なんと」
儀式で覚醒したこと、死んでこちらの世界に来たこと、ロアの記憶は俺の記憶と混じり合ったことを説明した。
「ならばこの槍の秘密を言ってみろ」
「特殊な魔法効果を持っている、その能力は「攻撃力アップ」。選ばれた者にしか扱えない。巨大な武器だが魔法の道具で収納することが出来る。昔、その石突で」
「石突で?」
「PT仲間、寝ている魔法使いのおっぱいを突いたことがある」
「……ロア、本物だな」
俺の喉元から斧槍を下げ、後ろの壁にたてかけた。この神斧槍フォーチュンヘブンはただの金属製の武器ではない。魔剣、魔槍等といった魔法効果が付属している特殊な武器、それらの上位種となる「神器」と呼ばれる武器。
神器は専用武器、本来なら爺さんしか装備できない。他の人が使った場合「攻撃力アップ」が発動しない。一応精霊と契約しなおしたり等の複雑な手続きを踏むことで他の人に譲渡することも出来るようだ。魔剣は誰でも使える。
この武器は金属製のカードに武器を収納することができる。武器収納は世界に数個と非常にレアなアイテムのようだ。おっぱいの件は俺と爺さんしか知らない秘密と言っていたな。不慮の事故だったらしいが。
「まあおっぱい関係なく、斧槍を突きつけられて嬉しそうにしているやつはロアぐらいだ」
確かに刃物を突きつけられたいたが、不思議と恐怖はなく、むしろ喜びを感じていた。これはロアの記憶によるところが大きいか。爺さんが言うには搦手が得意な魔族がいて、それで疑い深くなったとか。人間に変装したり、偽情報を流したりと賢い魔族がいたようだ。
「この先を話しても問題ないな。お前のユニークスキルのことなんだが」
ユニークスキルを手に入れていたか。嬉しいところだ。
「周辺機器って何のことかわかるか? ユニークスキルを意識しながらHPMPと同じ要領で目を瞑れ。ユニークスキルが出るはずだ」
集中し目を閉じると周辺機器と言う文字が。その下にいくつかスキルが表示されている。ライト、ヘッドセット、セーブカード、通信ケーブル。ああ、ゲーム本体の付属品のことか。爺さんに軽く説明する。
「しかしユニークスキルは1人1つのはずだが。複数の効果を有しているユニークスキルもあるにはあるが。まあ転生者ってことだから特別なのか。不思議な話だな。おっと、そろそろ時間だ。これ以上はユニークスキルを持っているのかと疑われてしまう。深夜に抜け出してまた話をしよう。俺達にとっていつものことだがな」
ユニークスキルを持っていない相談者、持っている者どちらも相談時間は同じ。ある場合は後ほど相談という形をとる。いつものことというのは、たまにロアは爺さんに連れ出してもらい深夜に冒険をしていた。もちろん近場をうろつく程度ではあるが。
家に帰り、寝て、深夜家からこっそりと出る。爺さんと合流し、村の外へ。まずは魔法剣から。爺さんから剣を渡される、両手持ちの剣だ。魔法剣士は大きめの剣を使う。これを斬ってみろと薪をこちらに向かって投げる。飛んできた薪に剣を合わせる。木材を叩く音がして薪は弾かれ飛んでいった。薪に多少傷がついた程度。レベル1ならそんなものさと爺さんが。
魔法剣を使ってみる。剣技を呼び出して説明を見ろと爺さんに言われる。「フレイムブレイド」、剣に炎の魔法効果を付与。丁度魔獣が出てきたので彼で試し斬りを。剣を握り剣技を呼び出す。
「フレイムブレイド」
剣に赤い炎がまとわりつく。燃え盛る剣で魔獣に斬りかかった。そして魔獣の身体を切断、即死、斬った部分は黒焦げに。なかなかの威力だ。薪より硬いやつを簡単に倒したなと爺さんが褒めてくれた。
ユニークスキルを試す、ライトから。暗闇を照らす明かりと説明書きが。使用すると目から光が発射、辺りを照らす。かなり明るい、夜間や洞窟で活躍しそうだ。ランタンや松明を使わなくても良くなる、それだけでもかなりの便利スキルと言えるだろう。
ヘッドセット。任意の相手とどれだけ距離があっても会話ができる。念じると手の上に「①」と描かれた光のシールが発生、これを爺さんに貼る。シールは吸い込まれるように消える。距離を離して会話をしてみた。鮮明に相手の声が聞こえた。
次にセーブカード。このスキルは対象のユニークスキルをコピー、使えるようになるようだ。爺さんのユニークスキルは「バーサーク」、とてつもなく攻撃力が上がるスキル。このスキルで多数の魔族を恐怖に陥れたとか。
「凄い能力だな。試してみようか」
直接相手に触って能力を吸い取るようだ。肌ならどこでもいい。首元に手を置き、能力を吸い出す。時間は少しかかる。吸い出しが終わり、バーサークを使ってみる。淡く赤い闘気のようなものが身体から放出される。爺さんが持っていた鉄の剣を借り、大木に斬りかかると、簡単に真っ二つにできた。