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雑談②

 俺たちのやり取りを見て、フリード様は笑い始めた。


「レイチェルは子供の頃から性的なことに興味を持っていた。何しろ十歳の時には私の書斎へ入って、私の執筆した本を読みふけっていたからな」


「お、お父様、それは言わないでください。…………アレックス、なんで笑っているんですか!?」


「君が普通の小説をすっ飛ばして官能小説を読むようになったか理由が分かって、すっきりしたんだよ。なるほどね、フリード様の執筆した小説で目覚めちゃったのか。で、こんな面白残念美少女に…………」


「アレックス~~」


 レイチェルはぎゅ~~、と手を強く握った。


「いたた、ごめんって!」


「安心したよ」とフリード様が言う。


「レリアーナにもそうやって会話をする相手が出来たのだね。アレックス君、重ねてお礼を言わせてくれ」


「そんなに感謝をされると恐れ多いです」


 俺は少し王族の印象が変わった。

 フリード様のような人もいるんだな。


「そういえば、お父様、私が家を出る前に国王陛下と揉めていた件はどうなりましたか?」


 唐突にレイチェルが言う。

 それは俺が聞いてもいい内容なのか?

 王族の権力闘争というやつか?


「どうにか解決したよ。まったく、『国王の妃を私が寝取る』は傑作だったのにな。売れ行きも順調で、応援の手紙も山のように来ていたのに……」


 フリード様は残念そうに言う。


 …………何だか、碌でもないことの気がしてきた。


「アレックス君、聞いてくれよ。兄上は私が執筆した小説のことに気が付き、出版を止めなければ、辺境に追放すると言ってきたんだ。だから、仕方なく発禁にした」


「残念です。あの小説は本当に面白かったのに…………。あっ、アレックス、今話している小説の内容はね、王弟が国王様の若い妃を寝取るんだよ」


「それはタイトルから分かるよ。…………ん? 王弟!?」


 俺はフリード様を見てしまった。


「おいおい、さすがに私が無類の女好きだからって兄上の妃には手を出していないぞ」


 俺はそれを聞いて安心した。

 さすがにそこまではしていないか。


「まぁ、兄上が娶ったばかりの美しい妃を見て、私が一晩一緒にいたいと言ったら、『叶えてやってもいいが、次の日には処刑台へ送るぞ』と言われたがな」


 やっぱり、この人、ヤバいかも。


「でも発禁処分ってことは在庫がどこかに残ってませんか?」とレイチェル。


「倉に残っているはずだ。アレックス君もどうだい? 自分で言うのもあれだが、傑作だぞ」


「遠慮します」


 フリード様の提案を俺は即答で断った。


 そんな発禁書籍を持ちたくない。

 どこかでバレて、厄介なことになるのは嫌だ。


「そうか、残念だ」とフリード様は残念そうに言う。


「あの、フリード様はそろそろ、レイチェルの呪いの話をしませんか?」


 少し失礼かと思ったが、この親娘のペースに乗っていたら、延々と下ネタに付き合わされる気がした。


「そうだな」


 フリード様は真面目な表情になる。


「アレックス君、君にはすまないが、数日間、この屋敷で過ごしてもらいたい。呪いに関する熟練者を数名屋敷に招き、解析がしたい」


「分かりました」


 どうか、これでジェーシと違う結論を出して欲しい。


「旅の疲れもあるだろうし、レリアーナを救ってもらった。出来る限りのもてなしはしよう。あと二時間ほどで食事の準備が出来る。その前に大浴場で疲れを取るといい」


「ありがとうございます。…………あ、あのこんな状態なので俺はレイチェルと一緒にいないといけないので……その……」


 俺が申し訳なさそうに言うとフリード様は笑った。


「分かっている。君は誠実な青年だ。二人で一緒に入って来るといい」


 理解のある人で本当に助かる。


「もし、我慢できずに童貞を卒業したら、感想は聞かせてくれるかい? だが、大浴場でやるのは気を付けろよ。夢中になると頭がクラクラする」


 などと聞いていない体験談まで話す。

 てか、自分の娘の前でそんなことを言うなよ。


「お母様と初めて情事に及んだ後、お父様は倒れたんでしたっけ」


 レイチェルが言った。

 どうやら把握しているらしい。


 フリード様は「あの頃は若かったな」と言って、なぜか誇らしそうだった。


 本当にもうやだ、この親娘…………

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