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レイチェルの正体

 街の中央に進むと目前に大きな塀が現れる。


「ゴシユア王国の王弟殿下の屋敷だよ」

とレイチェルが説明をしてくれる。


 王弟殿下の屋敷、だからこんなに立派な塀で囲まれているのか。


「まぁ、ここが私の実家で、王弟殿下って私のお父様だけどね」


 …………え?


 俺が確認する前にレイチェルが屋敷へと進む。


 屋敷の門が開けられており、門前には衛兵のギースさんと屋敷の使用人とみられる人たち数名が出迎えの用意をしていた。


「ありがとうございます」とレイチェルが言うとギースさんは膝を付いた。


「いえ、私のような者の名前を憶えていてくださり、光栄の極みです」


「そんな大袈裟な言葉はいりませんよ。それからこちらの方はアレックス・ロード様です。大切な客人として接してください」


 レイチェルの口調はとても落ち着いていた。

 普段の彼女からは考えられない気品がある。


「ロード様、私はこの屋敷の警備責任者のブラッドと申します」


 初老の執事の男性、ブラッドさんが言う。

 頬に大きな傷があり、雰囲気が明らかに普通の人ではない。

 恐らく、戦場を知っている人だ。


 俺とレイチェルを繋ぐ手にブラッドさんの視線が移る。

 それでもこの場で言及されることは無かった。


「レリアーナお嬢様、ここは人の目がありますのでこちらへ」


 ブラッドさんは全てのことを後回しにして俺たちを屋敷の敷地内へ入れてくれた。


 んっ?

 レリアーナ?


 それがレイチェルの本当の名前なのか?


 両脇を護衛に守られて、俺たちは屋敷の中を進んでいく。


 街の中心とは思えないくらい広い庭だ。


 やがて立派な屋敷が見えてくる。


「馬車はこちらで預かりましょう」


 ブラッドが言う。


「は、はい。お願いします」


 俺は狼狽しながら、馬車をブラッドへ渡した。


「ブラッド、私は自室にいます」


「かしこまりました。フリード様のご準備が出来ましたら、お呼びします」


「じゃあ、お願いしますね。……行こ、アレックス」


 レイチェルは俺の手をグイッと引っ張った。


「えっ、あっ、うん」


 俺はレイチェルに引っ張られて、屋敷の中へ入っていく。


 屋敷へ入るとレイチェルは変身魔法を解いた。


「お帰りなさいませ、レイアーナ様」


 メイドさんたちがレイチェルへ頭を下げた。


 レイチェルは軽く対応しながら、二階へ上がる。


 その場では言わなかったが、メイドさんたちは明らかに俺のことを気にしていた。


「ここ」と言って、レイチェルはドアを開ける。


 部屋の中には必要な家具しか置いていないようだが、全てが高価そうだった。


「この部屋、椅子は一つしかないから、こっち」


 レイチェルはそう言って、俺をベッドへ誘った。

 二人で横になって腰掛ける。


「どう、驚いた?」


 レイチェルは悪戯の成功した子供のように笑う。


「理解が追いつかなくて、なんて返したらいいか分からないよ」


 俺は額に手を当てながら言う。


「だよね。…………改めて、王弟フリードの第二子女、レリアーナと申します……なんちゃって」


「えっ、うん……」


 俺が困った表情をするとレイチェルも困った表情になった。


「やっぱり身構えるよね?」


「…………正直、ね」


 だってさ、勇者ってだけでも本来、俺なんかが一緒にいられる存在じゃない。

 その上、王族なんて…………魔法の才能も無い平民の俺からしたら、遠すぎる存在だ。

 

 本来、こんな風に手を繋げる存在じゃない。


「無理だったら、諦めるけど今までみたいに話したり、接してほしい」


 レイチェルは握っている手に力を入れる。

 今までと関係が変わってしまうのが不安なのだろう。


 彼女は俺のことを初めて出来た同世代の友達だと言っていた。


 そりゃそうだ。

 レイチェルの身分を知って、普通の友達になれる人なんていない。


 俺は深呼吸をし、

「君が望むなら今まで通りに接するよ」

となるべく、普通に話すように心がけた。


「緊張しているでしょ?」


「まぁね」と正直なことを言う。


「けど、君は君だ。身分が分かったからって、君の望まないことをしたくない」


「ありがとう」


 正直、緊張するし、恐れ多いとも考えてしまう。

 でも、レイチェルが望むなら俺も今まで通りの関係でいたいと思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王家の姫は官能小説マニアだった そのうちレリアーナ賞とか生まれたり
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