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見回り

 保健室を出た後、オレが向かったのは中学棟だ。

 目的の教室まで歩いていき、授業が終わっている事を確認し、中に入っていった。

「失礼。中村君と結城君はいるかな」

 騒がしかった教室はオレが入ると同時に静まり返り、オレの声は良く響いた。

 名前を呼ばれた二人はビクリと体を跳ねた。

「こちらに来てもらっても?」

 オレの言葉に逆らえないといったように二人は俺の近くまで歩みを寄せた。

 二人からは汗が滲んでいる。

「どうして呼ばれたかは分かるね?」

 疑問形で聞くが、それは分からないとは言わせないといった圧を含んでいる。

「あっ、その、な、中庭で……」

 中村君の方が声を絞り出すようにして話し出す。だが、全て言い終わるのを待っていたら日が暮れそうだ。

「うん。君たち二人が中庭でボールで遊んでいたからだね。あの場所はボールの使用は禁止されているはずだよ。そして、君たちは同じことで初等部の時にも注意を受けていたね」

「「は、はい……」」

 二人は震えながら返事をする。

「なら今後は学則を守って行動するように。今回は二度目だから反省文を書くように。提出は今日中だ。いいね」

「「はい。分かりました」」

 オレにボールをぶつけた事に対しての謝罪はなかったが、これだけ怯えているのだから追及するのは止めておこう。

 オレは二人にそれを言い渡すと、教室内を見渡した。

「……木村さん、君はスカート丈が基準より短い。戻すように。佐藤君、君は学章はどうした? 失くしたのなら早急に購入するように。鍛冶君、君のその耳に着けている装飾品は魔法具……のようだね。部活で制作しているものならば部を通して申請するように。違反者は以上かな。二度目は反省文になるからそれまでには直すように」

 オレは校則違反となるものを見つけ、注意していった。

 きっとこのくらい構わないと思う人も多いだろうが、それでは校則の意味がなくなる。

 校則を順守する代わりに、学園での行動が許されているのだから……。

 オレは小さく溜め息を吐いてからその教室を後にした。


 探査魔法をかけ、目的の人物の場所を探る。

 その人の元へ行くついでに見回りも行っていく。

 しかし、探査した場所には目的の人はいなかった。

 移動したのだろうと思い、今度は探査魔法をかけながら移動する。

 すると、目的の人物は逃げるように移動しているのが分かった。

 ……こうなると会うのは無理だな。

 オレは潔く目的の人物に会う事は諦め、見回りに集中する事にした。


 この学園は初等部から高等部まであるのもあって、敷地がかなり広い。

 校舎もだが、グラウンドに体育館、部活棟にプール他にも多くの校内施設が存在する。そして、校門から校舎までの道のりも長い。

 校舎の裏手には森が広がっている。因みにこの森が昨日敵の進行があった西側だ。

 敵が攻めてくるとしたら基本は西側だ。何故かというと校門のある東側は警備も敷かれていて簡単には侵入できないようになっている。

 そして、校舎や校内設備は魔法も物理も攻撃を防ぐ結界が張られている。

 因みに学校に張る結界は基本的に理事長が代々張り続けている。だが、今校舎に張られている結界は会長が張っている。

 あの人は結界を張るのだけは異常な程に上手い。たぶんオレより丈夫な結界を張れると思う。

 だが、結界も万能ではない。結界の種類も複数あって、瞬間的に張る簡易結界、長時間張る複雑結界が大きな分類ではある。

 広範囲で複雑な条件を付ければ付ける程、高等な技術と魔力が必要になる。

 そして、校舎に張っている結界は常に魔力を流し続けないと維持できない系統の結界になっている。

 会長は初等部に入ってからずっとこの結界を張り続けている。さすがにオレにはできない。

 できてもせいぜい一年か二年しか持たないだろう。

 あの人は平然と十年以上維持し続けている。

 あの人が凄いことは本当は分かっている。魔力量だって、今在学している人間の中だと一番強いだろう。

 ただ、デスクワークが苦手で、攻撃魔法はできてもそこまで強くなくて、騒がしくて割と残念な美人なだけだ。

 ……なんであの人の事考えてたんだっけ? まあ、謝ろうと持って探してはいたけど、さっき諦めたばっかりだっていうのに。


 オレは頭を振って雑念を吹き飛ばした。

 今は仕事だ。見回りを続けないと。

 校舎とかは結界のおかげで比較的安全だ。だから見回りと言っても校則違反やサボりがいないか見るくらいで済む。

 面倒なのは森だ。

 森は学園の敷地内ではあるが、結界の及んでいない範囲だ。

 まあ、態と攻め易くしているんだろう。

 一方向からの攻撃に備えればいいとなれば楽ではある。

 それに、森は磁場が歪んでいるのもあり、入ったら迷いやすい。

 その対策として、学生には必ず学章を着けるようにとなっている。

 誤って森に入っても、その学章自体は魔法具となっていて、森での遭難を防いでくれる。

 ただ、敵はそんなものは基本持っていないから迷うだろう。

 それでも、関係なくまっすぐ来れる奴はいる。そんな奴の侵入を防ぐのにオレはトラップ魔法を仕掛けている。

 その一つが幻惑魔法だ。幻を見せ、真っ直ぐに進めないようにしている。

 この魔法は設置型の魔法で、壊されない限りは持続し続ける。

 魔法は相殺や破壊する場合、同等の魔力もしくはそれ以上の魔力が必要になってくる。

 オレの魔法はそう簡単は壊されないだろうが、それでも何度も攻撃を食らえばいつかは壊れる。

 壊れていないかどうかを見るのも見回りの仕事の一環だ。


 トラップ魔法はいくつか仕掛けているがどれも壊れていないようだった。

 ……増やすか。でも、人が増えた分、今までよりは侵攻はしにくいだろうし……。

 思案しているとオレの腹が空腹を訴えてきた。

 時計を見ると昼はとっくに過ぎていた。

「……食堂、開いてるかな?」

 この学園では初等部のみ給食があり、それ以外は弁当を持参するか食堂や購買部を利用する。

 とは言っても、購買部で売られているのはほとんどが菓子パンだ。

 出来れば食堂を利用したい。そう思い、オレは食堂に向かった。

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