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話し合い

「で、話って何ですか?」

「流石に外で話すようなんじゃない。生徒会室に行くぞ」

「……分かりました」

 オレ達四人は生徒会室に移動した。


 山崎先輩はご丁寧に内鍵を掛け、オレ達に座すよう促した。

「で、話とは何ですか」

 座ってから改めて聞くと、山崎先輩は大きく溜め息を吐いた。

「……お前は実際どこまで気付いてる?」

「何がですか? 先輩達の事ですか?」

 質問に質問で返すと、気付いてるじゃないかとぼそっと呟かれた。

「先輩達が二人で行動しているって事は今回任務でこちらに来られたって事ですよね? 軍は基本二人一組で行動すると伺っています」

「ああ、そうだ。仕事だ。別に訓練つけるのがってわけじゃなかったがな」

 だろうなと思い、続きを話すよう目で訴えた。だが――

「俺が話す前に、お前がどのくらい現状把握してるか聞きたい」

 そこはどうも譲れないらしい。オレは溜息を吐いてから口を開いた。

「そうですね。まあ、先輩方が仕事で来られたのと、ここ数日軍の方が反政府派の学園への侵攻を食い止めてくださっている事には気付いてますよ」

「なんだ気付いてたのか」

「そりゃ気付きますよ。先輩方が来られる連絡を受けた翌日から、人の気配は増えてるし、敵の侵攻はないし。そうなったら嫌でも気付くでしょう?」

「他に気付いてる奴はいんのか?」

 オレは首を傾げた。

「こんなに分かりやすいのにみんな気付いてないんですか?」

 気付いてるもんだと思ったから何も言っていなかったし、態々言う事でもないだろうと思っていた。

 そんなオレに山崎先輩と道端先輩が大きな溜め息を吐いた。

「相変わらすぎんだろう……。まあ、いい。他に気付いてる事は?」

「……これは明確な事ではないのでオレの予測ですが、最近、街ではテロが増えてますよね。相手側もかなり体制整ってきてるんじゃないですか?」

 先輩達は何も答えなかった。

「学園を攻めてくる勢力も若干増えつつありますし、他は少しずつ動きが出ています。それでも今動いてるのはまだ捨て駒程度なんでしょうね。ですが、先輩達が戦力不十分としてオレ達を見ているという事は、近々苛烈化するのが分かっているんじゃないですか? 『死』を強調するのも今のままの勢力ではなくなるのが分かっているからじゃないんですか? もし、敵の勢力が増す事がなければ今のメンバーでも応戦は可能なはずです。そうなれば、態々先輩方がこの学園に『任務』で来られる必要なんかありませんよね」

 淡々と話すオレに山崎先輩はやっと口を開いた。

「まあ、合格点だな。このくらいも分かっていなかったら、もう一発殴ってやろうかと思ったよ。だが、それくらい分かってんなら、訓練を厳しくする必要性は分かってるんだろう。お前が司令塔になってるんなら、なおさらお前は厳しくあるべきだ」

 オレの事を睨みながら話す山崎先輩に、会長が行き成り口を挟んできた。

「葉月ちゃんにそんな厳しく言わないで!」

 山崎先輩は今度は会長の事を睨んだ。

「言っておくが如月、本来なら厳しき指導するのも会長の役目だ。それをせず怠っているお前にも非がある。お前の後輩に対する指導へのやる気の無さはなんだ? 遠目から見ていたが、お前は見ているだけで何もしていなかったじゃないか。そんなお前に何の存在意義がある」

 威圧的な言葉に会長は押し黙った。


 山崎先輩はしばらく会長を睨み続けていたが、溜め息を吐き、頭を掻いた。

「道端、悪いが如月と聴取室で話しといてもらえるか?」

「了解。如月、行くよ」

 道端先輩が声を掛けると、会長は大人しく聴取室に入っていった。

「で、こっちの話に戻すぞ。あいつがいると話が前に進まなくなる」

「でも、最近は話の間に割って入ってくる事は少なくなりましたよ?」

「それでも、ああいう風に止めるだろ。あれじゃかなわん」

 困ると言いながら山崎先輩は頭を掻いた。

「……厳しくしないといけないのは分かります。先輩方もそうしてくださっていて、それが生存確率を上げるのも分かっています。それは分かっているんです、けど……」

「お前は優しすぎんだ。だからお前が入ったばっかの時は道端やら内海やらが特に『そんなんならこの学園自体辞めてしまえ』って言ってたんだ」

 そんな事を言われていた事は今でもよく覚えている。

「分かってます。自分の事を思って言ってくださっていたのはよく分かっています。そりゃ、当時は分かっていない事の方が多かったですけど……」

 ただ単にいびられてるのかと思った事もあった。でも、結果的に見るとオレの為だったんだなぁっていうのは多々ある。

「まあ、分かり難いわな。恨まれかねないような事をしてでも、それが俺達なりの守る方法なんだよ。分かってるお前に厳しくしろって言っても、なかなか難しいのも分かってる。でも、お前だって距離は取ってる上に、嫌われるのは覚悟の上だろう? そうじゃなきゃ、威圧の為の魔力なんか纏ってないだろう。今のままでもいいから指導は続けろ。分かったな?」

「……はい」

 オレが了解の意を示すと、山崎先輩は大きく頷いた。

「で、話は変わるんだがな。もしもの話をするぞ。もしもの話だからな」

 もしもをえらく強調する先輩にオレは首を傾げた。

「もし、今のメンバーで誰か一人辞めさせるとしたら誰だ?」

「えっ、誰か辞めさせるんですか⁉」

「だから、もしもって言ってるだろう。別に俺自身に退学命令出せるような権限はねぇんだ。ただ、現状足引っ張ってるもしくはこれから先、戦力外になりそうな人間がいたら対策練らないといけないだろう?」

 行き成り言われた事に驚いたが、話を聞いて胸を撫で下ろした。

「敢えて一人を選ぶならという事ですよね。……そうですね、佐々山君、ですかね」

「理由は? 体力面で見るなら卯月谷や白縫だろう? 睦月野だってそうだ。まあ、睦月野の場合は情報っていうのがかなりでかいから、残すのはほぼ確定だろうが……」

 確かにそれを言われれば先輩の言う通りだ。けど……。

「卯月谷君の場合、能力も特殊ですが魔法を見た時に一番能力的には高いです」

「師走田よりか?」

「はい。体力が無いにも関わらず彼の場合、魔法を使いこなせています。つまり体力を補えれば、その分かなりの戦力になるという事です。コントロール、威力共にあの中のメンバーでは一番でしょう」

 どうしても体力面で目が行きがちだが、実際魔法だけで見たら、かなりの実力の持ち主だ。あれで小学五年生とは末恐ろしい。

「なら、白縫を選ばなかったのは? いくら防御が人数少なくて、如月が卒業してからの事を考えたとしても、絶対に残したいっていう要素が見当たらないが?」

「確かに先輩のおっしゃる事はも尤もです。ですが、敢えて一人を選ぶのならというのなら、やはり佐々山君です。

 佐々山君の場合、自身で結界を張る事ができない。つまり自分の身も守れない。

 一方、白縫さんの場合防御担当ではありますが、属性魔法に関して会長に見ていただいたところ、全属性扱えるとの事でした。威力はそんなに強くないにしても、能力だけで見るなら佐々山君より白縫さんの方が上です。

 それに、白縫さんが結界を張り損ねる時は大体佐々山君が無茶な攻撃をしようとする時です。

 お互いがお互いを気にしすぎるのが、彼らの弱点です。特に佐々山君は白縫さんを気にしすぎている。あれではお互いに危険です」

「つまり、引き離した方がいいって事か」

 片目を瞑りながらオレの話を聞いていた山崎先輩の言葉に、オレは静かに頷いた。

「う~ん。まあ考慮はしておかないといけなさそうだな。双子っていうのは厄介なもんだな」

「そう、ですね」

 兄弟がいない自分にはあまり分からないが、きっとお互いが特別なんだろう。

「あと、他のメンバーがいつこの学園に入ったか教えてもらえるか?」

「えっと、水無月さんは今年からです。神在さんは自身も言っていましたが小四の頃からです。それ以外の中等部のメンバーは中等部からの入学です。佐々山君と白縫さんは去年の冬ですね。かなり中途半端な時期に転入してきたんで。卯月谷君は小一から入っていたんですが、体が弱く小三までは休学していて、小四から復学したんです。睦月野さんは幼等部からです」

「えらくバラバラだな」

「まあ、ほとんどが家庭事情らしいです。神在さんは力の発現が遅く、編入したての頃はまだ魔法が使えなかったそうですよ」

「そうか……」

 山崎先輩は腕を組んで考え始めた。

「……家の事情は色々あるだろうし、お前も介入はできんだろうが、色々引っかかるところはなかったのか?」

「は?」

 何を言いたいのか分からず呆けた声が出た。

「まず、入学時期がさっき言った時期になったのはなんでだ? 生徒会に入るタイミングは入学時期によって変わるのは必然だが、本来なら小学校から入学してもおかしくないはずだ。今のメンバーは中立でもなく、完全に政府派の家の子供ばかりだ。だったら入学時期がおかしすぎる」

 確かにその通りだが、それこそ各家の事情があるからオレは踏み込めない。

「それに佐々山と白縫が離婚したのも未だに疑問が残る。あの家は利害が一致したから婚姻を結んだはずだ。地位のあるような家の人間は原則離婚が成立しない。なのに、何故離婚した?」

 何故というのはオレには到底分からない事だ。それは山崎先輩も分かっているのだろう。だから、これはオレに答えろという質問ではない。

「他にもあるぞ。卯月谷は小三まで休学していたにも関わらず、何故小四からは普通に学園生活が送れている? もし体調や病気なら普通には生活できないだろう。じゃあ、何故休学していた? それにあのフードは言っていた事が理由じゃないだろう」

 卯月谷君がフードを被っているのは、肌が弱いからといった理由だけではないだろう。きっと、あれは……。

「顔を隠す為、でしょうか?」

「おそらく、そうだろう。なら何故顔を隠さなければいけない? 全く分からない事だらけだ。お前は疑問に思わなかったか?」

「オレは、深く踏み込み過ぎる事はできませんから……」

 その理由は山崎先輩も分かっているようで、深くは追及してこなかった。

「時期がこの時期になったのと、反政府派の勢力の増大に関してはきっと無関係じゃないだろう。俺らが卒業してから、一度頭は捕まったが、残党達は残ってしまっていた。そいつらが立てなおしたにしてもだ、違和感がある」

「確かに、そうですね……」

「まあ、その辺含め、調査と学園の警護の為に俺らが来たんだけどな」

「そう、なんですか?」

 そう言えば任務内容は聞いていなかった。

「ああ、今はこの学園は生徒会メンバーを見ても分かるけど、良家の子供が多い。もし、この学園自体が人質になってなってみろ。それこそ劣勢になるのが目に見えて分かってるんだ。だからこそ、こっちの警護にも十分力を入れないといけないってわけだ。まあ、ある程度自分の身は自分で守ってもらわにゃならんけどな」

「だからこその訓練なんですよね」

「そうだ。いくら周りが目を掛けても本人達に頑張ってもらわにゃならん。まあ、お前も大変だろうが頑張れよ」

 その頑張れは一体どの事に対してだろう? 訓練? それともこれから起こるであろう戦いの事だろうか?

 分からなかったが、取り敢えず頷いた。

「俺もできる限りの事はするけどな」

「先輩方はいつまでこちらにいらっしゃるのですか?」

「ん? ああ、上が戻って来いって言うまではこっちにいる事が任務だ。報告とかがあれば俺か道端のどっちかが軍に戻るけどな」

「じゃあ、明確に期限があるわけではないんですね」

「ああ、だからみっちり鍛えてやるぞ」

 山崎先輩はにやりと笑う。それにオレは顔を引き攣らせた。


 こちらの方の話が一区切りついたところで、聴取室の方からパンという音が響いた。

 オレは椅子から立ち上がり、聴取室に駆け付けようとしたが、山崎先輩に腕を掴まれた。

「何故止めるんですか?」

「女の喧嘩に男が入ったらろくな事がない。死んでも止める覚悟のある時だけにしとけ」

 異常なほどに真剣な目をする山崎先輩に気圧され、オレは聴取室に向かうのは止めた。

 それが分かったのか、山崎先輩はオレの腕を放した。

 一体中で何があったのかそわそわしていると、そう経たずに二人が出てきた。

 二人とも目立った外傷はないが、一体何があったんだろう?

「お二人とも、大丈夫、ですか? その……何か叩くような音がしたんですが……」

 恐る恐る聞くと、会長はにっこり笑って何でもないよと答えた。

 一方、道端先輩は大きな溜め息を吐いて、あんたは気にしなくていいと言った。

「取り敢えず、話はできたのか?」

 山崎先輩は道端先輩にそう聞いた。

「まあ、取り敢えずね」

 疲れた様子の道端先輩は溜め息を吐きながら答えた。

「じゃあ、今日はこれで解散にするか。お前らも仕事は明日でも意見ならさっさと帰れよ」

「はい。お疲れ様です」

 急ぎの用事はなかったので、オレは先輩の言う通り今日は帰ろうと思った。

「会長はどうされます」

「私も、帰ろうかな? ちょっと疲れちゃった」

 いつもより、笑顔に元気のない様子で会長はそう答えた。

「そうですか。じゃあ、帰りますか」

「うん」

 オレ達は生徒会室を施錠すると、先輩達に見送られ帰路に就いた。

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