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尋問/戦闘開始

 今、この世では政府派と反政府派の二つの勢力に分かれている。

 政府派はあくまでも魔法は自己防衛の為に使うべき、必要最低限に留めるべきだとし、反政府派は魔法は戦いの為の道具で、魔力が強いものほど上の地位に立つべきとしている。

 まあ、そうはいっても平等主義と実力主義の争いはあくまでも名目上で、どちらも内容としては大差がない。政府も結局は大義名分で魔法を戦いに使っているのに違いない。

 現にオレたち生徒会メンバーは実力で選ばれた戦闘員だ。防御が強いか、攻撃力に長けているか、情報収集能力に優れているか、そういった者が基準で選ばれている。

 オレの場合は全てを万遍なくできるが、そう言ったものではなく、他の誰もが持っていない能力を持っているからだ。

 ああ、本当に嫌になる。

 そんなことを考えながら、腕に絡んでる会長を引き離して生徒会室に入った。


 ここの生徒会室は豪華すぎるとオレは思う。まあ、オレが中流家庭で育っているせいかもしれないけど……。

 何で装飾だらけの上に絵画とか壁に飾ってんの? 必要ないよね? しかも、置いている物は全部高そうだし……。子どもが使う部屋じゃないよ。

 何年もここにきて仕事してるけど、本当に慣れない。

 オレは取り敢えず、問題を起こした生徒の事情聴取をする部屋を開けて、長月君と師走田君に霜月君を中に入れてくれと頼んだ。

 聴取室には最低限の照明と小さな机と、それを挟むように二つの椅子が中央にあり、壁には折り畳み式の椅子が数脚立て掛けられている。

 机を挟む片側の椅子に霜月君を座らせるように指示してから二人には部屋から出るよう指示した。

 それを見送ってからオレももう片方の椅子に座ってから話し掛けた。

「霜月君、意識はあるんだろう?」

「テメェがそうなるように殴ったんだろうが」

 忌々しいといった顔をオレに向け、威嚇するような声でそう言ってきた。

「君が暴れるのが悪いんだろう? 今回は何が原因なんだ?」

 あくまでも冷たい声で言い放つと沈黙だけが返ってきた。

 オレの持っている腕時計だけがカチカチと音を立てる空間でオレは向こうが反応するのをただ待ち続けた。

 もう十分くらいが経過しただろうかという時に、霜月君は目の前にある机をけ飛ばした。

 あと少しでオレにぶつかりそうだったから思わず、魔法を使って机の動きを止めてしまった。

「……テメェはいつもいつもウザいんだよ! 俺は別に生徒会なんかに入りたくなかったんだよ!」

 睨みつけながら怒鳴りつけてくる霜月君に冷たい目を向けると、彼はビクリと肩を揺らしてオレから目線を逸らした。

 ふぅっと溜め息を吐くと霜月君は額の辺りから一筋の汗を流した。

「君は全員が全員、生徒会に入りたくて入ったとでも思っているのか?」

 冷たい声で尋ねると、微かに肩を震わせていた。

「生徒会メンバーは強制で職務を全うしなければならないんだ。君だけが逃れる事は出来ない。生徒の代表でもあるのだから最低限の振る舞い、というより行動の仕方はあるだろう? 何故、しないんだ?」

「……っせぇよ。テメェには関係ないだろ?」

 強がってるのが丸わかりで、体がカタカタという音を立てながら震えていた。

 本当にオレを恐れない生徒は少ないな……。

「これでも生徒会副会長なんでね。関係ないという訳ではないんだよ。取り敢えず、今回はなんで暴れたんだ? 早く答えてもらえるかな?」

 あくまでも問いかける形で聞いたが、有無も言わさず答えるようにという空気を出した。

 そのおかげか小さな声だが、答えてくれた。

「い、行き成り向こうが絡んできただけ、だし……。ただ、直ぐに手出すべきじゃねぇって思って……」

「それで窓ガラスを割った……と?」

 そう聞くと霜月君は大人しく頷いた。

 これだけのことならさっさと話してくれたらいいのに……。

「取り敢えず、今回の被害は窓ガラスだけだから厳重注意だけで済ませるけど、なるべく暴れるのは減らすように。今日は以上」

 そう言ってオレが立ち上がると、霜月君は全身の力が抜けたように椅子のところでだらけた。

 本当に何でこんな恐れられてるんだろうな……。まあ、力が強すぎてそれに影響されているのもあるんだろうけど。

 事情聴取室から出ると、長月君と師走田君がいなくなっていた。

「あの二人は?」

 そう尋ねると、会長が口を開こうとしたが、直ぐに水無月さんが淡々と答えてくれた。

「割れた窓ガラスの修復に行ったわ」

「そう。ありがとう」

「別に……」

 水無月さんはそっぽを向いてそれだけを言うと、オレからなるべき離れた位置に歩いていった。

 その代わりというか、会長と神在さんが近付いてきた。本当にこの二人は……。

 溜め息を吐きそうになるのを我慢して、自分の席に着いて書類を取り出した。

 オレの机には数種類の書類が入っていて、その中から器物破損の報告書等、今回の事に関する書類を取り出した。

 オレは別に風紀担当ではないが、生徒会に関わること全般を管理している所為で仕事が多い。本来は会長がやることもこなしている。

 本当に会長はもう少し自分の仕事をちゃんとして欲しいよ。

 そう思いながらも黙々と仕事をこなすオレにも問題はあるんだろうけど。

 書類を書き上げた辺りに長月君と師走田君が帰ってきた。

「ただいま戻りました」

 二人が声を揃えて言ったのに対し、会長が笑顔でお疲れ様~っと出迎えていた。

「長月君、帰ってきて直ぐで悪いが、書類に目を通してハンコをくれないかな? あと、相手の方には事情は聞いてきてくれたかな?」

 オレが声を掛けると相手には聞いてきたと言ってから簡単に説明してくれた。それからは直ぐに行動に移してくれた。

 この風紀担当の二人は下手に怯えも馴れ馴れしさも見せないから、こっちとしても仕事がしやすいから楽だ。

「副会長、霜月はどうしました?」

 長月君が判を押し終わった書類を渡しながらそう尋ねてきた。

「ああ、霜月君なら事情聴取室で脱力していたよ。もう直ぐ出て来るんじゃない?」

 オレがそう言うと、長月君はそうですか、とだけ返した。

「会長も判、押してください。そしたら、提出してきますから」

 そう言って書類を差し出すと、会長は「オッケー!」と言って書類を受け取った。

 さて、他の書類も目を通しておこうかなと思って自分の席に戻ろうとした時、ガチャっという音を立てて事情聴取室のドアが開いた。

 そして、直ぐに霜月君が出てきた。オレと目があった瞬間は、ばつの悪い顔をしていた。

 それを見ながら溜め息を吐きたくなったけど、そうしたらまた気分を害されそうな気がして、どうにか溜め息を飲み込んだ。

 兎に角気を逸らそうと書類に向かおうとしたら、会長が「ハンコ押したよ~」とオレに書類を渡してきた。

 この人、タイミング悪いな~。

 そう思いながら書類を受け取った。

 取り敢えず確認しようと書類に目を通そうとした時、左目がズキッと痛んだ。

 思わず、眼鏡を乱暴に外し、左目を手で押さえた。ヤバい、そう思ったが、思ったよりは痛みは酷くはならなかった。

 周りはそれに反応してオレの言葉を待った。

 オレの能力、それは左目と右目で異なる。右目は視力とともに能力を失ってしまったが、左目はいまだ健在だ。

 左目の能力、それは『未来を視る』という能力だ。さっき、霜月君のことが見えたのも左目の力の影響だ。

 自分の意志でも使えなくはないが、この力はオレが視ようとしなくても偶に現れ、危険が近付いている時は痛む。

 そして、今回見えたのは反政府派が戦闘機まで使ってこの学園に近付いているものだった。

 その事をみんなに伝えると、全員が戦闘準備を始めた。

 戦いは主に学園に残って防御をするのと、前線に立つのと、皆の力の調節をする三つの役割からなっている。

 だが、調節は滅多な事では行わない為、殆どが防御と攻撃で戦闘を行っている。

 因みに防御担当は、会長、睦月野さん、白縫さんの三人で、あとのメンバーはオレを含め攻撃担当だ。

 こうしている間に、情処理担当の睦月野さんが敵のおおよその数と位置を特定した。

 そして、オレは学内全体に外に出ないようにと放送を掛けた。

「さあ、行こう」

 オレが静かに言うと、全員が頷いていつもの戦闘配置に着いた。


 ドクドクと心臓がなるのが聞こえる。それはオレが緊張している事を示している。

 いつもそうだ。オレは精神的に弱い。だからこそ、自分どころか、学校を守るこの役目を果たせるのかと思い、緊張が体を縛る。

 ふぅっと体に溜まった空気を逃がすと、オレは目を開き、力を発動させた。

「敵は西側から十基の戦闘機および陸上からはおよそ二十人が攻めてくる。能力は具現化が半分を占める。あとは、水に属する者が三名、火に属するのは二名、雷が一名、あとは土に属するものだ」

 メンバー全員に視えた情報を与えると了解とだけ返ってきた。

 魔法には属性を持つ者がいる。その場合、その属性の力を使えば強力な力を使える。その反面、自分の属性以外は酷い場合は全く使えない。

 オレの場合、基本的にオールマイティーだ。だが、未来を視るような能力はオレしか持っていない。他の誰も持っていない特殊能力。そして、この能力は『神の眼』と呼ばれている。

 でも、『神の眼』と言われていても、視えるだけであとはどう行動するかで未来は変わってくる。はっきり言って、『神』なんて呼ばれるような代物じゃない。

 溜め息を吐きながら、オレは戦闘態勢に入った。

 オレは物体に変化した魔法以外はすべて無効になる体質を持っている。だから、対物質用の結界さえ張っていたら攻撃は結界が破られない限り受けることはない。

 こういった能力を持っているから俺は最後の砦として、学園の最も高い塔の上から敵を倒す。

だから感情のままに動く事は許されない。どれだけ、他の人が傷付こうとも……。


 西側を見ていると、敵機が向かって来るのが見えた。

 それに向かい打とうと先ず動いたのは水無月さんだった。

 水無月さんの能力は自分の発した言葉を呪にして攻撃する。つまりは、自分の発した言葉を実現させる能力だ。

 水無月さんは大きく息を吸ってから言葉を放った。

『沈め! 沈め! 沈め!』

 その言葉が発せられたと同時に、ほとんどの敵機がその言葉の通りに空から沈んでいった。

 だが、未だに数基は残っている。

 次いで、それに挑んだのは神在さんだ。

 神在さんの能力は魔力を糸状にして、鞭のようにふるって攻撃したり、相手を捕縛したりする。

 神在さんは自分の手を一度合わせてから、糸を引くように手を離した。

「さあ、参りますわよ。覚悟なさってくださいませ!」

 そう言うと、神在さんは敵機を捕え、地へ叩きつけた。

 それを数回繰り返すうちに戦闘機は全て地に堕ちた。だが、その間に陸上から攻めてきた。

 それを真っ先に食い止めに入ったのは長月君と師走田君だ。

 二人は、それぞれ竹刀と弓を持ち、それらに力を込めて強力な武器にしてから戦っている。

 その間をぬって態々前線に立ったのは霜月君だ。

 彼は高笑いしながら力を込めた拳を相手に叩きつけて戦っている。

 それでも、数人が間をぬって学園に攻め込もうとしてくる。

 それを止めるのは卯月谷君と佐々山君だ。

 卯月谷君は自分の影と血を使って戦う。影は自身の影を自在に伸ばし、刃物ようにして攻撃したり、布のように相手を包んで捕える事が出来る。血は自らの血を体外に出現させて自由自在に操り、攻撃にも防御にも生かす事が出来る。

 ただし、欠点は力を使うと血の消耗が激しい為に貧血になってしまう事だ。だから、彼は常に貧血気味で血色が悪い。

 佐々山君は、妹の白縫さんが防御として結界を張り、本人は属性をオールマイティに使える為、それで色々な攻撃を可能にしている。ただ、彼の場合、結界を張る事だけ出来ない為、白縫さんがなるべく近くにいないといけないという欠点を抱えている。

 この二人で止められなかった敵は俺が倒す事になっている。そう、今みたいに。

 たった一人だが、二人を突破してきた。

 卯月谷君はもう、血が足りなさ過ぎて膝をついている状態で、佐々山君の方は白縫さんが結界を張りきれず、それを庇おうとして軽傷を負ってしまった。その隙に一人が侵入してきた。

 みんな甘いんだよ。だから、オレが甘くあっちゃいけないんだ。

 すぅっと息を吸ってから相手に狙いを定めた。

『光よ我に力を貸したまえ。彼の者に刃を向けよ!』

 オレがそう言うと、光が刃状になって敵を切り裂いた。

 詠唱はあくまでも補助で、無くても使えるが戦闘が長引く時は体力温存の為にも有効な手の一つだ。そして、魔法を強力にする術の一つでもある。

 ダメなんだよ。甘えを見せちゃ。敵は、徹底的に排除しなきゃ。

 そう思いながらも、オレの手は微かに震えている。それを消す為に、手を握りしめた。

 早く、終わるといいなぁ。こんなこと……。

 それを誰にも聞こえないほど小さな声で呟いてからオレはその場を去って、生徒会室に向かった。

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