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二分の二の約束  作者: 猫田七樹
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プロローグ

 はじめまして! 小説家になろうへの投稿は初となります。猫田七樹と申します。

 今まで別の投稿サイトで活動しておりましたが此度「集英社WEB小説大賞」で名乗りを上げようと馳せ参じました。

 これまで手掛けたものにオリジナル作品はほぼ無く、今回が初めて全力で取り組むオリジナル連載小説になります。期限内に目標の八万字を超えるべく張り切ってまいりますので、皆様は作品をぜひ楽しんでいってください!

 というか、目指せ完結!

 幽霊、ゴースト、亡者、霊魂。そういった“目に見えないもの”の類は今まで幾多の論争が繰り広げられてきた。近頃はサーモグラフィーやナイトショットなどカメラの技術が発展し、それに乗じてその不可解な現象の科学的な根拠を裏付けようと人々は尽力してきた。

 しかし現代の技術をもってしてもその進捗は芳しくなく、未だにその全貌は謎に包まれている。敢えて主観的な意見を述べるとすれば、心霊番組やネット上の極めてあやふやな情報源で無駄に不安を募らせるのは全くもって愚かしい。

 そこまで言い終えると彼女は目を細めた。それは些細な変化だったが、長年連れ添ってきた私からすれば充分といえるほどの成果だった。どうやら今日は成功したようだ。

 女子高生たちが流動する教室の中、私たちは目を見合わせて卑下な笑いをかみ殺した。

 そうして唯一無二の大親友、斎藤ももかは「やっぱりすごいな」と一言呟いて顔を伏せた。笑いを誤魔化すためなのだろうか、肩を小刻みに震わせている。

 私の方はというとそんな彼女の様子を見て気持ちが大きくなっていた。まあ、俗にいう有頂天、というやつだ。得意げに胸を逸らし、四足椅子の背もたれにふんぞり返って座った。どれどれ、と隣のグループに聞き耳を立ててみる。が、やはり未だに昨晩のホラー番組の話題で持ち切りなようだった。聞こえてくる他人の話題にとりあえず反論し説き伏せる、という一風変わった――というより悪趣味な――私たちのブームは高校生になっても終息することはなく、最近はついでに彼女を笑わせようという第二の達成項目を個人的に設立したほどである。それも今日は大成功、この遊びもいつから始めたのかもう思い出せないが、確実に白星の数はひとつ増えたことになる。

 チャイムが鳴る。

 いつになってもこの音だけは好きになれない。時間に縛られた生活を強要されているようで頭の奥がふつふつするし、それに従わざるを得ない自分にも心底呆れる。泥沼に沈んでいくこの気持ちと同様に目を伏せれば無造作に開かれたももかのノートが目に入る。端の方には授業中の退屈しのぎに埋め合わせたゾウのような生き物が鼻をもたげていた。彼女は幼い頃から絵心がいまひとつで、眼下のそれも「こんなもんだゾウ」という皮肉めいた吹き出しが書き加えられている。

 実際、件のページの仮テストの回答結果も随分と荒れ果てた様子である。丸よりもペケの方が圧倒的に多いのは彼女なりの必勝法なのだろうか。この有様で未だに赤点を獲得していないのは、幽霊とかよりもよっぽど不思議だ。

 いつの間にか傾いてきた夕陽が教室の窓から差し込んでいる。今日ももう帰る時間なのかと温かみのある空に呆気にとられていた。振り返ると、ももかがいない。いつもは声をかけずとも二人一緒になって帰路についていたのだが、何も言わずにいなくなるとは彼女らしくないではないか。鞄も無いようだからきっともう教室を出たに違いない。

 少しむくれて廊下へ顔を出す。そうすると運のいいことにターゲットの後ろ姿がちょうど廊下の角に消えていくのが見えた。

(しめたぞ)

 下唇をそろりと舐め、忍び足で教室を飛び出る。どうやら彼女は我先に帰ろうとしたのではないようだ。あの角の先は屋上へ伸びる階段がある。彼女の向かう先で可能性があるとしたら、家か屋上かの二択だろう。なぜこの私を差し置いて屋上へ向かったのか、この目で確かめてやろう。

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