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オリュンポス  作者: ハーメルンのホラ吹き
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人間との意思疎通

ねぇ。


鏡って何色なの?


評価よろぴく☆


(小娘、意識を取り戻していたか。)


(少し気を緩めすぎておったわ。)



魔力も生命力もスズメの涙以下の人間。


この人間の子供の行いで危険に晒される可能性はどこの奇跡を呼び起こそうが不可能だが、


無意識下の警戒を容易に通り抜ける者は、それはそれで厄介なものだった。



「め・を・さ・ま・し・た・か。」



目があったからとイルクルが少女に声をかける。


だが、声をかけた少女は掻き分けた草から体を半分だけ覗かせフリーズしてしまった。



(なんじゃ、こやつ?)


(視線から見るに、尻尾と耳か?)


(確かに立派な物ではあると自覚しておるが、そんなに見なくともよかろう。)



「わ・っぱ。な・を・な・ん・と・い・う。」


「~◉~~△%~~◆~~#&~~~」



停止していた少女。


2回目の問いかけに対してようやく何かを語った。


しかし、それはイルクルには理解のできない言語。



(知り得ない言語を使うか。)


(これではまともに会話もでぬではないか。困ったものだ。)


(《念話》も出来るようにしておれば、こんなことにはならなかったのだがな。)


(下界に降りるとは、吾も思わん。)



イルクルは少々悩んだ。



大きな耳が付いているだけあって、聴力には優れている。


戦争においては、誰よりも強化された聴力で戦場のありとあらゆる音を聞き分けていた。


長距離における会話の手段など必要としない。


唯一身につけたのは、知性の低い魔物に簡単な感情を伝える《念思》のみ。


しかし、まともな会話をするには《念思》では事足りない。



(《念思》の延長線上に確か言語感覚の差異を無視したものがあったはずなのだがな。)



「《念思》名はなんと言うか?」


「っ!!。...アイーシャ」



着替え終わったイルクルは、《念思》を飛ばした。


すると少女は『名』といった感情を受け取ったことに戸惑いながらも、纏まりのある言葉を出した。



(アイーシャ...そう申したな。)



今度は念思を使い、『アイーシャ』『親』と二つの感情を送る。


それに対し、ハッとした顔で身振り手振りで何かを伝えようとしてきた。


しかし、少女の全力を持ってしても残念な結果に終わる。



(ふむ。これは困った。)


(まさか、この混沌狐と呼ばれた吾がこの程度の事で悩むとは。)



何か伝えようとしているが、身振り手振りでは限界がある。


少女:アイーシャも理解されなかった事で、どうすればいいのか分からず困った様子。






しばらく顎を人差し指で叩きながら考えていたイルクル。


何かを思いついたのか、アイーシャの手を掴んだ。



(その手があったか。)



元いた場所に連れていかれるアイーシャ。


イルクルにそこらに落ちていた枝を渡され、彼女は困惑した。


しかし、イルクルが次にとった行動でアイーシャの戸惑いは驚きに変化する。



(描かせればいい話よ。)



頬を膨らませ業火を吹き出す。


地面に生えていた雑草は瞬く間に一掃され、根までもが払拭された。



「《念思》描け。」



ハッとした顔を浮かべ、地面に座り込みアルの要望通り絵を描き始めるアイーシャ。



(これは親か?具合が悪い。)


(森に来て、そして花を探していると。)



アイーシャは書き終えるとイルクルを振り返った。


伝わったのか?伝わっていてくれ、といった期待の眼差しだ。



(ふむ、時間もあることじゃ。手伝ってやるのもまた一興よ。)



稚拙ながらも頑張って描いたアイーシャの絵は功を奏した。


再び手を翳し『手伝う』と《念思》を送ってやると、


少女は嬉しさからか涙を流した。



(ここまで喜んでもらえるとは。手伝い冥利に尽きる。)



下界の生き物ながら、嬉しさ・感謝の感情を感じ取り、


少なくとも悪い気分にはならなかった。



「アイーシャ、●△”◆」



落ち着いたアイーシャは、自分の名前を言いながら指を自分でさす。


追ってイルクルを指す動作を繰り返す。



(そうか。確かに小娘に吾が名を教えてなかったか。)



どうやら少女はイルクルの名前を知りたいようだ。


久しぶりに使っていない声帯をほぐし、話かたを流暢にすると



「イルクル・アルダザイム・ジエルクファ・アルティアーである。光栄に思え。」



と娘に言ってみた。


当たり前のようにアイーシャは覚えきれなかったが。



「アル?」



それが何度か繰り返し聞いた後にアイーシャが言った言葉だった。


名前のほとんどを略称され、非力な人間の幼体ならが思わず後ずさんでしまう。



(あれだけ吾を繰り返させておいて、それだけか!?なんと失敬な娘よ。)


(これ程までに名前を略されたことなど、敵にもないわ。)



下界の人間の子供に対する呆れを覚えつつも、


他にやることもないため、イルクルは暫くアイーシャに付き合うこととなる。

評価よろぴく☆

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