表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリュンポス  作者: ハーメルンのホラ吹き
4/68

少女との対面

自分を殴ったら痛かった。


これは自分が強すぎるのか、弱すぎるのか。


評価よろぴく☆


少女は夢見ていた。


お母さんと町に買い物へ出かけた時の事を。



馬車に揺られて長時間。


ついた場所は、外からの侵略を受け付けない防壁がある巨大な都市、王都。


王様のお膝元と呼ばれる場所だった。



奥に進むにつれて活気を帯びる街並み。


綺麗な服屋さんや少々怪しそうな魔法のお店。


想像もつかない魔物の素材を使った冒険者や、村の兵士とは違い厳格な立ち姿の騎士。


王都は自分の知っている村とは規模も世界も違った。



お母さんと私は、色々なおっ店を一緒に回ってお母さんたちのお店に必要な食器や小物を買った。


何もかもが見惚れるほど華やかで・豪華で、見ているだけで楽しい。



途中でお父さんと合流した。


仕入れ先であった問題を解決してたって言ってた。


二人ともホッとして笑いあってた。私も一緒に笑った。


王都には一泊した。



翌朝帰ろうと出入り口に向かっていると、中でも一際お客さんが集まった屋台を見つけた。


値段のわりに魔力も体力も治りが良い、疲れに良いと巷で噂されていた薬らしい。


強そうな冒険者の人たちも商品が良いって後押ししていたから、


お父さんもお母さんと相談して一個買っていた。



将来、自分もこんな都市に住んで色々としてみたい。


もっと、いっぱいいろんな場所をみてみたいな。







チョロチョロ、と水が流れる音が聞こえる。


頬が、体が冷たい。



「っ!!」



少女は飛び起き、辺りを確認した。


雑草も低く、太陽の光がキラキラと入ってくる開けた場所。


狼に襲われていた事を思いだした少女は、自分がどうやってここにいるのか混乱する。



「イタッ」



自分の体を見る。


そこら中に切り傷ができ、動かすと痛みが。



(私生きてる、生きてる!)



ズキズキとする痛みは、少女が確かに生きている事を実感させた。




「白いお花。龍脈。探さなきゃ...。」



自分が生きているなら、やることは一つ。


森に入った理由である白い花。そして龍脈をさがさなければいけない。



再び決心した顔の少女は、小さい体に鞭を打ち再び立ち上がる。


少女には、お母さんがいなくなる事の方が怖かった。



しかし、一度狼に襲われた恐怖は簡単に頭を離れない。


光の入ってくるこの場所からみる暗い奥の森。


その光景に少女は足を竦ませ、一歩が踏み込めなくなる。



(怖い、怖いよ。でも、行かないと、お母さんが。)



「っ!」



突然首を振り向かせ、川の流れている方角に顔を向けた。



(なに...今の音?魚?)



川から聞こえてくる水の音は、何か大きな生き物が川を移動している音だった。


不安ながらも目を凝らしよく見ると、木と葉の間に人影が映る。



「大人の人だ!」



少女は男の元へ駆けていく。







状況から少女が獣に襲われていた事を察したイルクル。


意識を失った人間(ヒト)種の少女を担ぎ上げ、体についた泥を取るために川にきた。


服を脱がし、綺麗な水で傷の周囲などを丁寧に拭いてやる。


なかなかに酷い傷だった。



(人間種は仙人以外は簡単に死ぬ奴らであったな。この娘も放って置けば死ぬか?)



結果的に守った形となった人間種の小娘に死なれても面白くない。



イルクルは指先に魔力を集め、酷い傷を中心になぞってやる。


パッカリ割れていた少女の肉が生きているかのように蠢き、傷が治った。


二、三回繰り返し傷の酷い場所を処置してやる。



(これで良い。)



一通り体を洗った後、服を着させ少女を日向に寝かせる。


イルクルは再び川に戻り、今度は自分の服を脱ぎ捨てた。



仙骨から生える真っ白な9つの尻尾。


窮屈から解放されたと言わんばかりにイルクルの全長に負けない程に膨れ上がる。



久しぶりに感じる冷気。


自分を掻き分けて流れる水の流れ。


イルクルの顔に笑顔が浮かび、感情の起伏に呼応するように尻尾が左右に揺れる。



全身を水につけ、ゆっくりと体を洗う。


頭を洗うと同時に、今まで隠れていたのか立派な獣のような耳が現れた。



数百億年を超えてする水浴びは格別。


あの空間から出れる事があれば、最初に水浴びをすると決めていた。


イルクルは静かに言葉にもできない悦楽を貪る。







(上がるとしよう。)



いつの間にか木にできた影の位置が大きく変化していた。


同じ場所で永遠にも思える時間を過ごした今、一刻や二刻はものの一瞬に感じる。



そんな短くも長い時間の中で、イルクルはある事に耽けていた。


それは、今この自分の踏みしめている地が『下界』であるという事。



下界とはイルクルがいた星:オリュンポス以外を意味する。


そして少なくともイルクルが誕生したその時から、封印を施されるその時まで続いた「常世の終焉」と呼ばれる神界対戦において、下界とは支配の対象にあった。


より多くの下界を支配下に置き、その力をもってしてオリュンポスにおける聖域を拡大する。


単純に捉えるならば、星間、更には宇宙全体を巻き込んだ侵略戦争だった。



(このような無防備な姿を見せておきながら、誰一人として仕掛けてこぬか。)



本来略奪の対象となった星は、その星の生命体と苛烈な交戦状態に入る。


完全に侵略されている場合には、この星に降り立った時点で既に発見され、


使徒や眷属との戦闘に入る。



しかしこの星は緑が青青としており静寂だ。


封印から解放されたイルクルの身としては、息抜きができるのでとても有り難かった。




(さてと、この星はどの神に魅入られておるのかの?)


(下界とはいえ、神次第で多少は面白いものが見れるやも知れぬしな。)



しかしながら、狙われれいない星などこの世にはない。



苛烈な交戦状態に入っているか、侵略済みか、


水面下で送りこまれた使徒や眷属が動き回っているか。



神の嗜好とその星の魅力にもよるが、大抵がそのようなものだ。


アルは少しの期待を抱きながら、ゆっくりと体を癒す。




....



しばらくの休息を経て、自分の服を取りかけた時だった。


がさごそと動いた草むらから、助けた小娘が顔を覗かせた。

評価よろぴく☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ