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第一話    『消えた患者』    その二


 こんなときに患者が行方不明……って?悪いときには、悪いことが重なるものってことかしら。


 はあ。やっぱり、病院になんて勤めていたら、叔父さんを悼む暇もないのよね……とくに、今みたいに皆が慌ただしくなっているときは……。


 ……ダメね。愚痴っぽくなりすぎちゃっているわ。


 四階に行く。精神科の病室が並ぶ区域。セキュリティは緊密だ。外に出るのも、中に入るのも、ガラス張りのゲートを通る必要がある。


 カメラは……起動と録画を示す赤い光がついているままね。通常通り。


 ゲートも職員のカードキーが無ければ解放は無理。あとは、このフロアから外に出るには……避難階段もあるんだった。


 ……ダメね。パニックになったときは冷静に行動しにくい。避難階段じゃなく、いつもの階段を使って避難誘導をしてしまった。


 でも。言い訳になるけど。ここの患者たちをあの避難階段に連れていくのは無理があるのよね……。


 自殺願望もある。飛び降りようとする患者もいるし…………。


 嫌な予感がして、フロアを走った。


 避難階段につながるドアにたどりつく。心を落ち着かせるために、白く塗られたドアだ。


 普段は施錠されているけれど、火災時の時は開放される仕組みとなっていたはず。


 もしかして、鍵が開いたままで……水沢さんは、ここから外に出た?……避難階段からは、飛び降りることだって出来る。


 水沢さんは……リストカットの歴があったわね……火災のストレスと、叔父さんの焼死で、衝動的になっていてもおかしくはない。


 サイアクの状況が頭によぎった。避難階段からの飛び降り……っ。


 恐る恐る、ドアノブに触れて、それを回そうとした。


 でも。回らなかった。システムは平常運転らしい。


「ここは、閉まったままだったのね?」


「は、はい。一応、外も探してもらっているんですけど、避難階段とか、屋上にはいないみたいです」


 ……当然か。ここを調べるなんて、最初にするわよね。私、動く前に聞けばよかったのに。


 頭の働きが悪い。神経質になっている。


 でも。ゲートも非常階段のドアも閉じられているとすれば、どこに?


「病室は?」


「見て回りました。その、ベッドの下とかも……確認したんですが」


「それでも見つからないのね」


「はい」


「……リネン室は?あそこなら、隠れることも出来るけど」


「以前、そんなトラブルがあったから、施錠するようにしてます。一応、鍵を開けて調べたんですが……なかに水沢さんはいませんでした」


「……じゃあ、トイレも?」


「調べました。個室も調べたんですが……」


「…………お手上げね」


「そ、そうですね……どうしましょう?」


 行方不明者の捜索は専門外なんだけど。追い詰められたような表情の若い子に頼られていると、そうも言えないわね。


 知恵を絞らないと……そうだ。今すべきことは。


「……カメラの確認をします。このフロア全体を撮影していたはず。どこかに水沢さんが映っているかもしれない」


「わ、わかりました」


「ナースステーションのパソコンを借りるわよ。あそこからなら、私のIDがあればカメラの映像が見れるはず」


 看護師といっしょにナースステーションへと向かう。水沢さんの捜索に駆り出されていて、あるいは他の階の手伝いに向かい、ナースステーションは空だった。


 ここを空にするのも考えものだけど、状況が状況だから、仕方がない。


 据え置きのパソコンの前に座り、セキュリティ・カメラにアクセスする。


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