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ヒーローがいなくなったあとの世界で  作者: 東谷尽勇
第一章 再会
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第一章 その3

「汚い部屋だな」

「かたづける暇がないんで」


 塚原の自宅であるアパート前に到着すると関内はすぐに出発できるよう監視をするため塚原と共に塚原の部屋に入っていた。


「ふぅー」


 そして、関内は塚原の部屋の台所の換気扇を回し、タバコを吸い始めた。

 塚原は、今まで落ち着いてタバコを吸うことができず、きちんと換気扇を回してから吸ったので、関内が自分の部屋でタバコを吸い始めたことに特に文句はなかったのだが、一言だけ関内に言うことにした。


「キャリア組の人って、出世のこと考えてタバコ吸わないんですよね。そんなスパスパ吸って大丈夫なんですか?」

「ふんっ、タバコを吸っているくらいで出世させないのなら、そうすればいい」

「そうですか」


 関内の中ではタバコの方が出世よりも優先順位が上であった。


「それより、着替えはまだか?」

「あっ、もう大丈夫です」

「そうか。なら、このタバコを吸い終わったら出るとしよう」

「あはははっ……。じゃあ、テレビでも見て待ってます」


 関内は、心底落ち着いてタバコを吸いたかったようだ。

 塚原は、またいつ落ち着いてタバコを吸えるか分からない関内に思う存分落ち着いてタバコを吸ってもらうことにし、その間テレビを見て待つため、テレビをつけた。


『――――県で起こっている連続殺人事件でまた新たな犠牲者が出てしまいました』


 塚原がテレビをつけると、絶妙なタイミングで連続殺人事件に関するニュースが報道されていた。

 塚原は気まずい雰囲気になるのではと考えて咄嗟にチャンネルを変えようとするが、


「変えるな。そのままでいい」


 台所でタバコを吸っていた関内に止められた。

 関内はテレビの内容が気になるらしく、塚原は仕方なくチャンネルを変えずに連続殺人事件について報道するニュースを見ることにした。


『これで一連の連続殺人事件の被害者は六人となりましたが、一体警察は何をしているんでしょうね』

『まったくその通りです。人々の警察に対する不信感は最悪と言っていいでしょう』

『警察はいまだに犯人の目星すらつけてないんですよね』

『はい、その通りなんです。合同捜査本部の定例会見では捜査は一歩ずつ進んでいると発表していますが、警察が犯人像などについて詳しく公表したことは一度としてありません』

『本当に何をやっているんでしょうね、警察は』


 ニュース番組の司会やコメンテーターが警察を批判する。

 塚原はそんな司会やコメンテーターに反論したいところだが、言っていることは正しい。


 捜査進展ゼロ。


 これが現状であり、批判が出るのも当然だった。


「上の方で一度、住民に不安感を与えないため報道規制をしようという提案があった」


 ぼそっ、と関内が口を開いた。


「そんなことがあったんですか」

「だが、その提案は却下された。万が一、報道規制をしている中、新たな殺人が起こったとバレて、ネットにその情報が漏れたとしたら、世間から非難が殺到するだろうと考えられたからだ」

「まぁ、たしかに情報社会の中、隠しきれるかは微妙ですからね」

「だからこの批判を終わらせる方法はただ一つ。私達が、犯人を捕まえることだけだ」

「……そうですね」


 そう、この批判を終わらせるには、犯人を捕まえるしかない。


「ふぅー。……さて」


 関内はタバコを吸い終え、吸殻を携帯灰皿に入れた。


「行くぞ、塚原」

「はい」


 そして、塚原と関内は、部屋を出て覆面パトカーに乗り、県警本部に戻った。


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