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りゅうじん
雨乞いをして百姓達を旱魃から救う。
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北陸の地方都市の北部一帯は、田園地帯が広がっている。
昭和五十八年(1983)五月十六日
朝から南の風が吹き荒れ、強い雨が降り続いていた。
この日から108日後、大韓航空機撃墜事件が発生する。
大韓航空007便・ボーイング747は、アンカレッジを離陸後航路を逸脱し、ソ連領空
を侵犯。樺太上空でソ連防空軍の迎撃戦闘機sui15に撃墜され乗員乗客269人が死亡した。
1983年9月1日の事である。
大国の強大な権力者が、小国の国民の生きる権利を蹂躙した。
翌日から青天が続き、31日にお湿り程度の雨が降ったきり、カラカラ天気が続いていた。
田圃が水枯れで亀の甲羅のように罅割れていた。
赤銅色に日焼けした顔で立ち尽くしている宮田喜好は、乾いて白くかさかさになった
唇を舐めながら、ぎらつく太陽を仰ぎ見て独り言ちた。
「今日は11日か。雨の6月というにまったく降らんのう。稲穂が渇きに悲鳴をあげている
わい。明日は朝から雨乞いに夜叉が池山へ登るとするか」
苛めからの解放。