出会いはパンと共に
すみません、テスト勉強でして遅れてしまいました。
あの馬車はなんだ、盗賊が盗んだものでもいれるのか? だとしたら馬がうるさい気がするんだが……
魔法か何かで音を消したのかもしれない、いや、今考えてもしかたないな。
とりあえず中を確認するか。
「よいしょっと………ん?」
中を見ると……青髪の少女がよこたわっていた。
「えっ……おい、大丈夫か」
とりあえず声をかけるが返事はない、ただの屍のようだ。
……冗談はおいといて本当に大丈夫か?
近寄って確認すると、意識はなく、手足は縛られている。
体にもたくさんの傷があるが、幸い呼吸はしているようだ。
念の為手足の縄はそのままにしておき、床の上からテントの寝袋の上に移す。
情報の収集にもなりそうだし、早く目を覚ますといいが……
少女が目覚めるのを待つ間、馬車の探索をおこなう。
「おっ……」
馬車の中に大量のパンらしき物を見つけた。
毒があるかもしれないが、ここ最近何も口に入れていないので、反射的に頬張ってしまった。
十五個程食べた所で腹は膨れたので、アイテムボックスにパンを五十個程しまう。
飲み物は軍服召還時の水筒に入っている水を飲んでいるのだが、もうすぐなくなりそうなのでこちらも補給したい。
……俺の方が盗賊紛いの事をしているようだに感じるが、まぁ気のせいだろう。
「んっ……」
おっ……目を覚ましたか。
「此処……どこ?」
「起きたみたいだな」
「っ!?」
少女は驚いたように飛び退くと、震えながらこちらを見る。
言葉を選び間違えたか、いやどのみちこの反応だろう。
「安心しろ、俺は君に害は加えない」
とは言っても信用される訳ないか。
「これ、いるか」
少女は痩せこけていて栄養が明らかに足りない様子だ、食べ物をあたえられていなかったのだろう。
そんな安易な考えのもと、アイテムボックスから先ほど拝借(盗んだ)したパンを与える。
少女はパンを手に取るも、警戒しているのか食べようとしない。
「あなたは……だれ……?」
「俺か? 俺は……通りすがりの旅人ってとこだ、馬車の中で倒れてたお前をつれてきた」
「私が……怖くないの?」
なぜ? 何か理由があるのだろう、面倒ごとに首を突っ込むのは嫌だが。
「いや全然」
「なん……で?」
「なんでと言われても困るんだが」
「もしかして……私を……助けてくれたの?」
人身売買でもあるのかこの世界は……いや、あってもおかしくないか。
「お前がそう思うならそういう事になると思うが」
「あなたは……私を売らないの?」
「売らない」
そう答えると少女はパンをついばむように食べ始めた。
徐々に涙を目にためて、
「助けてくれて……あり、がとうっ……」
涙を流しながら、それでいて笑みを浮かべながら、 そう言った。
情報目的だった俺の良心が痛む……
ようやくヒロイン登場……