雑談は勧誘と共に
つまり……さっきの気配はルシア?
案外こういう奴でも強い、って事か?
「リ、リューナさん。僕の顔に何かついてます?」
「いえ、すみません。なんでもありませんよ」
この様子だと、あの気配はルシアのじゃないか……。
「ところで、リューナさんはなんでこんな騒々しい場所に?」
「実は、先程冒険者登録をしまして」
「え、リューナさん冒険者!?リューナさんはてっきり貴族が何かかと……」
「いえ、そんな大層な身分じゃありませんよ」
「敬語を知ってる平民なんて、結構珍しいですよ……それと、同業者ですし、敬語はやめにしません?」
同業者……そういえば、宿でも冒険者っぽい会話をしていたな。
今はあのバカ二人はいないようだが。
「はい……ああ、これでいいか?」
なんか前もこれ言った気がする。
ルシアの第一印象って、なんか気の弱い感じだったが……そうでも無さそうだ。
「うん、少なくとも冒険者の間では、それで良いと思うよ」
「分かった」
とは言っても、初対面の人に敬語を使うのは癖だからな。
異世界って事だし、別に失礼とかは無いんだろうが……。
「そうだ……リューナはどの戦闘ポジションが得意ですか?」
敬語……まぁ良いか。
戦闘ポジションか……前衛とかそういう事か?
なんて答えればいいか……銃は隠しておいた方が良いだろうし、前衛か?
でも紙には中衛って書いたし、弓も使えるって事にしとくか。
「俺は一応中衛……だけど基本は素手だし、特殊な弓があるけど、生憎故障中で使えない。だから実質前衛だ」
「素手? リューナは拳闘士なんですか?」
「いや、護身術と呼ばれる、受け流しや防御に特化した武術だ」
「素手で防御ですか? 不思議な武術でなんですね」
するとルシアは、何かを決意したような顔つきになる。
「リューナ、僕達のパーティーに入りませんか?」──ガタガタガタ
なんだ、いきなり周りが騒がしくなったぞ?
「あいつ新入りだろ……いきなり剣臣の団に勧誘されやがったぞ」
「何者だあいつ……」
剣臣の団……やっぱり凄いのか?
「とりあえず質問だが……パーティーってなんだ?」
「ああ、リューナは冒険者になったばかりだったね。
パーティーって言うのは、一緒にクエストを受ける仲間みたいなものだよ」
みたいな物って……。
「へぇ……でもなんで俺なんだ?」
「なんとなく」
…………
「は?」
「僕の直感だよ」
直感かよ……まぁなんでも良いけど。
銃が使えなくなると困るし、理由が何だろうと、入るわけにはいかないな。
「悪いけど、断らせてもらう」
「いや、僕こそごめんね、いきなり。 でも、たまに一緒にクエストを受けてくれると助かるよ」
「了解。 俺は宿に戻るから、またな」
「うん、また」
ふぅ……ようやくこの騒がしい所から出られる。
「リン、行くよ……リン?」
声をかけても反応しない。
どうしたんだ?
「おーい、リン」
「!?はっ、はい!」
「どうした。 何かあったか?」
「い、いえ、周囲からの視線が……」
「ああ……気にしなくて良いと思うが」
「そ、そう、ですよね!」
リンの様子がおかしいな……宿に戻ったら聞いてみるか。




