冒険者ギルドは謎の気配と共に
グランとの模擬戦の後、俺はグランに冒険者ギルドまでの地図を貰い、
「そこで冒険者登録をしてくればいい。詳しいことは受付嬢に聞けよ! なぁに、お前の実力なら大丈夫だ」
と、言われた。
正直、グランが説明してくれば良いだろう、と思ったが……。
その他にも聞きたい事はあったが、とりあえず地図通りに冒険者ギルドへむかっている。
門から三十分程歩くと、リンが何かを発見したようだ。
「あ、あれですリューナ様! あの大きな建物です。看板に冒険者ギルドと書いてあります、間違いありません!」
あれ……か? やっぱり目が良いんだな、俺には看板の字なんて全く読めない。
だが、かなり大きな建物である事は確認できる。
暫く歩くと、冒険者ギルドに到着した。
思っていたよりも遥かに大きい。日本武道館くらいはあるだろうか?
まぁ俺は行ったこと無いけど……そのくらいだろう。たぶん。
外壁の所々に石像が置いてあって、勇ましい雰囲気をかもちだしている。
「失礼します」
そう呟き、木製の引き戸を開け……ってうるせぇ!
奥に見えるカウンターの周囲では、笑い声や怒鳴り声、泣き声や奇声など、沢山の声が響いている。
ああ……少しは静かにできないのかよ?
「リュ、リューナ様?」
リンが怯えたように聞いてきた。
イライラが顔にでていたようだ。ポーカーフェイスは得意だった筈だが……。
「あ、いや、悪い……それにしても騒々しいな」
「さすがは王都の冒険者ギルドですね……」
「あれ? リンは賑やかなのが好きそうだったけど」
「賑やかなのは好きですが……これはまたちょっと違います」
流石のリンも煩いようだ。
こんな騒々しい所に長居したくないので、さっさと登録を済ませてしまおう。
ギルド内を見回すと、カウンター、掲示板、闘技場入口、休憩所などが目に映る。
ドアが沢山あるので、他にも施設があるのようだ。これだけ人もいるし、さぞかし儲かっていそうだ。
中央のカウンターには受付らしき人が三人程伺える。全員女性だ。
グランは受付嬢と言っていたので、あの人達の誰かに声をかければ良いのだろう。
とりあえず、カウンターの中央へ行きっ……気配!
「誰だっ!?」
あれ……いない?
「リューナ様! どうかなさりましたか!」
「あ、いや……気のせいだったみたいだ」
「そう……ですか?」
いや……おそらく気のせいでは無い。
どこだ……どこにいる……クソッ、気配察知全開でも分からねぇ!
もしかしてマジの気のせい……かもしれない。
念のため気配察知を続けながら、カウンター中央の女性スタッフに声をかける。
「すみません。冒険者登録をお願いしたいのですが」
「新規登録ですね? でしたら、こちらの登録用紙を人数分記入ください。
用紙に赤文字で書かれているものは必須項目ですので、必ず記入してくださいね」
「分かりました」
登録用紙を俺とリンの二枚分貰うと、仕切りのあるスペースに移動し、色々と書きこんでいく。
前衛、中衛、後衛も書くのか、緊急事態の時、適切な連携をとるのが目的だろう。
拳銃は……中衛で良いか。
この使用武器ってのは書かない方が良いか。銃がこっちにあるのかは分からないが、ギルドに銃を持った人は見受けられない。少なくともメジャーでは無いだろう。
リンにもそう伝えて、それ以外の出来るだけ多くの項目を埋めていく。
問題があったときに情報の開示率が高い方が有利になる……母さんの知恵だ。
少なくとも頭のネジが飛んだ父さんの知恵より百倍は頼りになるだろう。
リンにもできるだけ多くの項目を埋めるよう伝えておく。
「リューナ様、書き終わりました」
「ん、俺も後一つで……よし、終わった。待たせて悪いな」
「い、いえっ、決してそんな事はありません!』
「別にそこまでかしこまらなくても……まぁいいや、早く登録済ませよう』
「はいっ、了解しました!」
何やら凄く張り切っているようだが……リンが頑張っても何も変わらないと思う。
カウンターに戻り、登録用紙を渡す。
「はい、お受け取りしまっ……凄いですね、ここまで殆ど埋めてくれる人は少ないですよ?」
「え……そうなんですか?」
地球感覚でやったのがまずかったか……。
「はい……皆さんこれだけ埋めてくださると、ギルドとしても助かるのですが……あっ、すみません。すぐにギルドカードを発行しますね!」
まぁ、別に悪いわけではないようだ。
少なくともカードの発行ができるって事は、印刷技術が進んで……いや、魔法があるのか?
うーん……これから魔法を使える敵と戦わないとも限らないし、魔法についても調べないとな。
暫くすると、二枚のカードを持って女性スタッフが現れる。
発行が終わったのだろう。
「お待たせしました。こちらギルドカードになります」
ギルドカードは赤色で、名前と年齢、魔物の討伐記録などが書かれている。
サイズはポイントカードサイズだから持ち運びに便利……ってアイテムボックスがあるか。
「それでは、ギルド、ギルドカードについて説明致しますね」
「はい、お願いします」
しっかり聞いておかないとな。いざという時に役にたつかもしれない。
……全部記憶できるかは分からないが。
いつもより一話が長い……




