王都到着は門番と共に
「わぁ……」
リンが感嘆したような声をあげる。
「へぇ……立派な門だな」
凱旋門みたいだ……まぁ見たことないけど。
村を出て一週間程、ようやく王都にたどり着いた。
そこそこ広い街道だったのに、途中ですれ違ったのはたった一人。それも黒いマントを羽織った怪しい人だけだ。
「やっとつきましたね!」
「ああ、思ったより時間がかかったな」
この地図、方角以外がかなり曖昧だな。あまり信用しないほうがよさそうだ。
王都ならば良い地図もあるかもしれないし、探してみるか。
とりあえず門番らしき人に声をかける。
ちなみに、リンは帽子で髪を隠している。青い目の人は沢山いたし、差別される理由にはならないだろう。
「すみません。ここを通ってもよろしいでしょうか?」
「おお、良いぜ」
あれ、案外すんなりだな。
「通行料とか、身分証はいらないんですか?」
疑問におもって問いかける。
情報はあればあるほど得だ……メモ帳とか無いのか。覚えられるか不安だ。
「身分証? んなもんどっかの貴族様か、それが必要な職業の人しか持ってないだろ。通行料は金のある所じゃとらねぇよ」
身分証が必要ない……か。そういえば村でも何も言われてないな。頭に血が上って気づかなかった。
「そうなんですか? ありがとうございます」
丁寧にお礼を言っておく。いい情報を貰った。
「おいおい、お前どこからきたんだ? なんか不安だな……困った事があったら俺の所に来い。助けになれるかはわからねぇが、知ってる事があったら教えてやる」
おお、かなりいい人だな。見かけは山賊みたいだけど。
「ありがとうございます。頼りにさせていただきます」
「おう! 彼女連れは珍しいからな、サービスだ!」
「はぅ!? か、彼女だなんて、そんな……」
リンがモジモジしているが、その誤解は解いておくべきだろう。
「違います。俺は断じてにロリコ「はい?」い、いや、彼女は旅の仲間です……はい」
怖いよ……リン、小さい事にコンプレックスでもあるのか?
それと、やはりリンには、般若を具現化する能力があるらしい。
「ククッ……ああ、ちなみに俺はグランだ、よろしくな! それとあんまり堅くなんなくていいぜ」
「ああ、分かった。俺は龍……いや、リューナだ。よろしく」
「わ、私はリンです! よろしくお願いします」
「リューナとリンだな、分かった……ところでお前ら、旅って言っていたが、泊まる宛あるのか?」
「ああ、特には無いな」
「だったら俺の知り合いを紹介してやる、地図なら書くぞ」
うわぁ……凄い良い人だな。
「頼む。ありがとな」
「ま、いいってことよ!」
良い友人を得て、俺は【ボニアード王国王都・アルセイユ】へと足を踏み入れた。