進撃は虐殺と共に
少し刺激が強いかも……
敵が慌てているうちに貨幣をアイテムボックスに入れ、ガーデンロイドに乗りこむ。
【カーデンロイド豆戦車】とは、イギリスで開発された一人~二人乗りの豆戦車である。
戦車砲を持たない戦車で、主要装備は重機関銃である。
つまり砲撃ではなく、高威力な連続射撃で攻撃をする戦車なのだ。
装甲はそこまで厚くはないが、機動力は開発当初としては高く、四十キロの走行速度となる。
乗ってみると操縦方法は前方と左右の黒いレバーを動かす旧式のものだ。
前方のレバーがギア、左右がキャタピラにつながっているらしいが、当然動かした事など無い。
ギアのチェンジには相当な技術が必要なようで、素人の操縦でどのように動くのかは不明だ。
「とりあえず、前進するしかないか」
左右のレバーをひくとキャタピラが動き始める。
思ったよりだいぶ乗り心地は悪いが、そんな事を気にしていられない。
この戦車の最高時速は四十キロ、そう時間をかけずに脱出できるだろう。
だが、それは敵がいない場合の話だ。
「なんだあの怪物は! こっちに来るぞ!グホァッ……」
とりあえず前進すると、グチャグチャと音をならしながら人をひいていく。
見ているだけで強い吐き気に襲われるので、出来るだけ前以外見ないようにする。
しかしそれでも見るに耐えない物がある──ペチャ
「ん?」
手に何かが……
そう思い自分の右手を見ると、赤黒く染まった内臓らしき物が、
「──おえぇぇぇっ」
うぅ、思わず吐いてしまった、後で片付けなければ。
「チッ……魔法だ! 魔法を放て!」
魔法か、そういやどれくらいの威力なんだろう……
この戦車の装甲は決して厚くは無い、こればかりは威力が弱い事を期待するしかない。
魔法発動に備えて姿勢を低くする。
「火よ眼前の敵を焼き払え、フォイアー」
男が何かをを叫んだ──刹那、視界上部ががオレンジ色に染まった。
「っ……外傷は?」
前方装甲が大きく燃え上がったようだが、これといった外傷は無い、無事だ。
「魔法が効かないだと!?」
発動の早さに少しびびったが、こいつらの使う魔法の威力は高くないようだ。
さて、こちらも反撃といこうかな。
レバーから手を離し、機関銃に手をかける。
「重機関銃、ファイヤー!」
──ドドドドドドドドッ!
連続した轟音と共に肉片が飛び散る、うへぇ、また吐きそうになってきた。
敵の大将らしき奴が指令をとばしている。
「これより強い魔法を使える者はおらんのか!?」
「い、今ので最高威力です! ひっ! うわぁぁぁぁぁ!」
「水よ回転され眼前の敵を貫け、フルス!」
今度は破裂音がしたが、殆どダメージは無い。
前進しながら重機関銃を連射する。
前進
「ギャァァァ!」グチャ……
前進
「グ、ウワァァァ!」クシャ……
射撃
「ゴハッ……」ズドンッ……
射撃
「も、もうや……ウワァァァァァァァ!」ブチッ……
後は一方的だった、一本道では逃げ出す事もできず、殆どが死亡した。
「ふぅ……」
後ろを振り返ると死体が連なっている。
すると、
「っ!!……」
急激な倦怠感が身体を襲う、何だか正気に戻った気分だ。
「これ……俺がやったのか?」
なぜだか分からないが、確かに俺は罪悪感を全く感じなかった。
俺がおかしくなってしまった……か?
人として大事な物を一つ失ってしまった気分だ。
「まぁ、いっか……」
ま、気にしないでおこう、どちらにしろやるしかなかったし。
人として大事な物とか初めから持ってないしな。
お金がないと餓死することになる。
何はともあれお金は手に入ったし、身体も軽い。
レベルアップでもしたのだろう。
「メニューオープン」
作中の魔法言語は○○○語です。
お分かりの方も多いでしょうね。