旅路は割愛と共に
旅路適当すぎるだろ!のツッコミは甘んじて受けます。
すみません。
「わ、私が案内しますので……」
「あぁ、わかった」
地理に詳しいのか……いや、俺が知らなすぎるだけだろう。
すると少女が指で俺の手をツンツンとつついている。
仕草が可愛い……あ、違う違うそこじゃない。
「どうかしたか?」
「あ、あの、すみませんが、どうお呼びすればよろしいでしょうか?」
別に何でも……あっ、名前教えてなかったか、普通に失礼だな。
言いやすいように名前を言い換えるか。
「あっ……すまん、俺の名はリューナ、リューナシキシマだ」
「き、貴族様だったのですか!?」
やはり名字は貴族だけが持っているようだ。
「いや、そんな大層な者じゃない」
「す、すみません! 私としたことがとんだ早とちりを……」
そんな事でいちいち謝られてもな……
「そうかしこまらなくていいぞ? しばらくは旅の仲間だ、敬語はいらない」
「仲間……ですか?」
リンはキョトンとしている、そんなにおかしいことだろうか?
「あぁ、仲間だ」
そう言うとリンは──
「は、はい! 仲間です!」
俺が今まででみた中で、最も眩しい笑みを浮かべた。
よし、出発……するか。
気を取り直して、
「よろしくな、リン」
「よ、よろしくお願いしますリューナ様!」
ズコッ……
はぁ……敬語はいらないと言ったんだが。
まぁ、いいか。
「さぁ出発するか、」
「はい!」
街道を歩く。
リンはアイテムボックスに驚いていたが、深く聞いては来なかった。
もう一時間は歩いている、ちなみにリンは体力が回復していないので、俺におんぶされている。
それでもしきりに話しかけてきて、結構楽しい。
元気になったもんだ、パン一個しか食ってないのに……
──ぐぅぅぅぅぅ
「ひぅぅ、すみません……」
やはりお腹は減っているようだ。
「いやいいよ、じゃあ昼飯にするかっ」
「はいっ!」
街道の横に腰を下ろし、テントを出してその中に入る。
リンにパンをあげると、とても美味しそうに頬張る。
次々におかわりをせがんでくるあたり、やはりご飯を食べるのは久しぶりのようだ。
ガツガツ食べているのを見られるのが恥ずかしいのか、時折こちらを見て顔を赤らめているところが可愛い。
──ってそんな事は置いといて、俺も食うかっ。
「よし、十分食べたか」
「はいっ! 美味しかったです!」
リンは満足そうだが、俺はお世辞にもコレが旨いとは思わない。
俺が贅沢なのだろうか? いや、この世界の食べ物がまずいだけだ。
んっ? そうすると結局贅沢いってるだけか……
ま、さっさと行くとするか。
リンを担いで二日ばかり進み、そろそろ食料がヤバくなってきて、水もスッカラカンになってきたころ、ようやく、村らしき影が見えてきた。
この平原では遠目にしか獣は確認できないため、獣を狩るのも大変だ。
「お、村が見えてきたな」
「っ……そう、ですね……」
ん? 元気が無いな。
「どうした? なんかあったか」
「いえっ……ただ、少し寂しいだけで……」
そっか、そういえば村まで送る約束だったか。
「そう、だな……だが村にも少し滞在するつもりだし、すぐお別れって訳じゃない」
「そう……ですよねっ、まだいっぱいお話できますよね!」
……俺はいつそんなに好かれる事したんだ?
「あ、ああ」
戸惑いながら返事を返すと、リンを背中に背負ったまま村へ向かう。
そして、村に入ろうとしたとき、俺は門番にこう言われた。
──「おい坊主、背中の奴隷は村に捨てていくなよ」