情報はリンと共に
会話回です、いつにもましてつまらないかもしれませんが、みてやってください。
少女が食べ終わり、涙も拭ったようなので話を切り出す。
「ところで、なんで馬車で縛られてたんだ?」
「っ……」
そう聞くと少女は思い出したかのように震えはじめた。
……やっちまったか。
盗賊の馬車で縛られていたのだから何をされたのかは想像に難くない、相当な辛い思いをしたのだろう。
トラウマを抉るとか、我ながら最低だな。
「悪い事を聞いたな、言いたくないなら、無理をして言わなくてもいい」
そう言ってしばらくすると少女の震えが落ち着いてきた。
だがおさまってはいない、相当に辛い思いをしたのだろう。
俺も小学校の頃いじめられたら事があるが、それの比ではないだろう。
情報を聞き出すのは後にしたほうが良さそうだ。
「す、すみません……」
「いや、俺が悪かった、すまない」
そう言うと少女がどこぞの新米サラリーマンのごとく申し訳なさそ~にしているので、雰囲気を変えようと本題をきりだす。
「ところで、俺はお前をどうすればいいんだ?」
「えっ……」
少女の顔色が悪くなる。
別にそう言う意味でいったんじゃないのだが。
「いや……助けたには助けたが、お前は俺にどうしてほしい? これも何かの縁だと思うし、ある程度のことならするぞ」
我ながら偉そうだが……敬語を使うと縁遠い感じがするからな、だからといって素で話すとこれなんだから仕方がない。
はぁ……、俺の友達が少ない理由はこの口の悪さだろう。
「ぼ……冒険者様ではないのですか?」
「冒険者? なんだそれ、詳しく話してくれ」
少しはマシな話し方になっただろうか?
……いや、それはこの際置いとこう。
「ぼ…冒険者様は……依頼をうけて、魔獣退治などを行う仕事なんです」
「へぇ~、さすがファンタジーだな」
これなら冒険者ギルドとかもありそうだ。
すると少女が申し訳なさそうに話かけてきた。
「あ……あの、すみませんが、ふぁんたじーとはなんでしょうか?」
「いや、気にしなくていい、俺の故郷の言葉だからな」
そうだった、この世界ではそんな言葉ないのか。
日本語を使うときは気をつけよう……んっ? 今使ってるのは日本語じゃないのか?
この世界の言語は日本語? だとすればファンタジーが伝わらないのはおかしい。 いや……それとも……
うーん……
「あ……すみません、変な事を聞いてしまって……」
「あ、悪い、考え事をしてただけだ」
礼儀正しい少女だな、どこかの貴族だったりするのだろうか?
「とりあえず、名前を教えてくれるか? いつまでもお前と呼ぶ訳にはいかないし」
「リ、リンと申します」
「呼ぶときはリンでいいか?」
確か小説だと呼び捨てで呼ぶといい感じだったが……
「は、はいっ 分かりました!」
ふぅ……なんか元気を取り戻してきたようだ、笑顔が自然になってきて可愛くみえる。
まぁ、俺の勘違いかもしれないが……
呼び捨てにはこんなにも効果が? やはりわからない事だらけだ。
にしても「リン」か……名字は無いようだし、特別な身分ではないのだろう。
「じゃあリン、本題に戻るがリンはこの後どうしてほしいんだ?」
「いっ、いえっ……助けたもらいましたし、そこまで面倒をみてもらうわけには――」
「じゃあ、この後ひとりでどうするつもりなんだ?」
「あっ……」
少し意地の悪い質問だったか、俺のコミュニケーション能力……
「悪い、意地が悪かったな、とりあえず行きたいとこがあるんならつれてってやる」
「すみません……では、この近くのカファ村までお願いします……」
この近くに村があるのか? 色々と情報も得られそうだし、そこへいくのは俺にも得になるな。
「本当にそこでいいのか?」
「はい、そこから先は人に頼めば大丈夫ですので……」
ってことは、行きたいとこはそこじゃないのか。
俺がいるのに人に頼むって……俺ってそんなに頼りないだろうか? いや頼りないか……
冒険者でもないのに頼れる訳がない。
まぁ確かに遠くまで送ってやる義理も無いんだが……
……そう考えると、なんか寂しい気がするな。