カップケーキのお礼
そんなこんなで、そこからは彼女達と楽しく移動……とはならなかった。
先ほど掘った時、ガラクタというかただのガラスの置物? しかでてこなかったのが、アオイには許せなかったらしい。
そんな彼女だが、カラスを掘った後は、こんな事を言っていた。
「ふん、女神様から貰った“万能スコップ”といっていたけれど、ガラクタしか掘り起こせないんじゃない」
「そうなんですかね? まあ、スライムは撃ち返せるし、普通に穴も掘れるし、金属だから硬いから棒にもなるし、十分といえば十分かな」
僕は、深く考えずに背負おうとスコップを持ちあげる。
このまま持ち歩くのも大変なので、背中に背負えるようにスコップ袋を持ってきたのだが……。
そこでアオイがむっとしたように、
「女神様に貰った貴重なスコップを否定されて、悔しくないの?」
「ん? 今回は調子が悪かっただけかもしれないし、特には。その能力が無くてもよくよく考えたら、そこまで困らないし」
「……」
アオイが沈黙して、何か言いたそうに僕を見ている。
どうしたんだろうなと僕が思っていると、リンがおかしそうに笑いだした。
「あはははは、本当に最高! ユウトって面白いわね」
「はあ……」
「えっとね、多分、アオイはそのスコップが魔石やら何やら凄い物を掘りあてるのが見たかったのよ」
「そうなのですが? それならっそう言ってくれればいいのに」
「素直じゃないからね。でも魔法使いのはしくれとしては、そんな凄そうな魔法道具があったら、使える所を見たいんでしょう?」
「だったらそう言って下さいよ。十回くらい掘れば、謳い文句通りなら流石に魔石の一つでも掘り上げるでしょうし」
そうアオイの方を嘆息してみると、プイっとそっぽを向かれた。
何だこの子、素直じゃない。
そんな子の言う事をこの僕が聞くと思っているのか、と思いつつアオイに僕は、
「……掘って欲しいんですか?」
「べ、別に興味なんて無いし」
「もう一度聞くので答えて下さい。もし、興味がないようなら、掘りません」
「……掘って欲しいです」
小さな声で、顔を真っ赤にしながら僕に言うアオイ。
何だろう、何となくいけない気分になる気もしたが、それは置いておくとして。
「じゃあ掘ってみましょうか。せーの!」
背中からスコップを取り出して地面を掘る。
再びガツンとスコップの先に何かが当たる。
とりあえずはそれを目指して掘っていくと……。
「綺麗な紅茶の色みたいな石が出てきた。……魔石だな。結構純度が良いみたいだ」
「結構って……それ凄く純度が良いわよ!」
僕が拾い上げて土を払い、陽の光に透かして様子を見ながらそう呟くと、アオイが焦った様に反論した。
その石を、憧れるかのように見ている。
そういえば僕は彼女からカップケーキを貰っていた。
「じゃあこれ、アオイにカップケーキのお礼にあげるよ」
「ちょ! これがどれだけ価値があるのか分かっているの!?」
「うーん、魔法使いなら僕よりももっと上手く扱ってくれるだろうし、あげるよ。必要なら僕の場合はまた掘ればいいし」
「……いいの?」
「いいよ」
「……ありがとう」
嬉しそうにその石を受け取るアオイ。
ここにきて初めて素の彼女の笑顔を見た気がする。
結構可愛い。
素材が良いせいもあるのだろうけれど、
「そんな風に笑ってた方が可愛いじゃん」
「……ぷいっ」
僕がそう言うと機嫌を損ねたらしくそっぽを向かれてしまった。
天の邪鬼だなと僕は思いながら、
「そろそろ行かないと次の馬車に乗れなくなると困るから」
リンの言葉に、僕達は早足で歩き始めたのだった。
そして馬車を乗り継ぎ、二日。
僕達はようやく都市に辿り着き、そこで丁度都市ではあるイベントが始まっていたのだった。