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番外編~春休みに準備中-1~

 さて、色々あってお姫様の呪いを解きつつ僕、ユウトは、都市の危機も救って村にユナと一緒に帰ってきた。

 久しぶりの村は、最後の“雪トマト”の収穫に追われていた。

 これからこのトマトを使って、トマトケチャップやソース、瓶詰め、乾燥トマト等を作る。


 ある意味で忙しい時期で僕達も家の手伝いをすることになる。

 けれどそれも大抵は数日で終わるのを僕達は知っている。

 というわけで僕達は最後の収穫となる“雪トマト”の回収を開始した。


「いくぞ、てぃやぁああああ」


 僕はスコップ(普通。女神様にもらったものではない)を縦に振り下ろし、風を巻き起こす。

 その強い風に吹かれて、“雪トマト”が揺れてぽとぽとと落ちていく。

 その下には使い古した布が敷かれており、その上に転がっていく。


 まだ雪が残っていてクッショになるのでトマトが落ちても潰れないので、こうやって敷いている。

 そのまま一つづつ手でもいでいってもいいのだが、やはりこう大量になると悩んでしまう。

 それだと大変だし。


 なので僕達はいつからかこうやってトマトを収穫するようになった。

 その風の威力を調節することで、熟したトマトだけを落とすことが出来るのだ。

 そして布に落ちたトマトを集めて、物によっては都市に売りに行くが、後は加工である。


「まずは乾燥トマト~」


 そう言いながら、僕はトマトをざるの上に並べて、


「温風乾燥~」


 そこそこ暖かい風に晒す。

 昔からこうやって魔法を使っていたので、これが僕達の当たり前であったりする。

 まさか呪文が必要とは思わなかった。


 その辺りも都市の高校に行けば教えてもらえるのだろうかと僕は楽しみにしていた。

 そうやって乾燥トマトをさくさく作っていく。

 これも一部は都市に売りに行く時に持っていく。


 雪トマトは乾燥させるとまた違った旨味が出るので、料理の用途として生のものと異なる部分があるのだ。

 保存性もいいというのも有るが。

 本当は陽の光で乾燥させるのがいいらしいのだけれど、これだけあると魔法で処理したほうが楽なのもありそうしている。


 そう僕が思いながら乾燥させていると、家の中からトマトとハーブの匂いがしてくる。

 トマトケチャップだろうか?

 母さんが大鍋てことこと煮込んでいるだろう。


 今の時期に都市に売りに行くと、このトマトケチャップやソースを求めて買いに来るリピート客がいるのだ。

 前に買ってきて美味しかったから、また来たよって言ってもらえた時は僕も子供ながら嬉しかった記憶がある。

 そんなことを思い出しながら一通り乾燥トマトを作り上げた僕はそれらを籠に入れて、


「さてと、今年の売り物にする分は紙袋に入れて小分けして……」


 そう僕は呟きながらかごを持ち、家の中に向かったのだった。











 都市に雪トマトを売りに行くついでに、僕の高校の寮に持っていくものを幾つか集めることにした。

 高校の寮は一週間前から開いているので、その間に荷物を入れることが出来た。

 事前に郵送で荷物の幾つかは送れるのだが、両親が雪トマトの販売に都市に向かうので一緒に持っていくことにしたのだ。


 なので、荷物をまとめているとそこで、


「ユウト、準備どれくらい進んでいる?」


 僕の部屋の窓からユナが現れて僕に聞いてくる。

 空気の入れ替えも兼ねて、窓を開けていた

 そんなユナが現れた。


 彼女も今、準備中のはずだ。

 今度行く高校も同じだし。

 もしやもう準備が終わってしまったのだろうか。

 そう思っているとそこでユナが、


「何だまだ終わってないじゃない。手伝ってあげようか?」

「い、いいです!」


 僕は慌ててそれを遠慮した。

 だってそこには、知られて困るようなものが幾つか……。

 僕にだってプライバシーがあるのだということで、必死になって遠慮しました。

 

 そこでユナが、


「そういえば、メイサさんが、魔女エーデルについての話を詳しく聞きたいんだって」

「メイサさんが?」


 このアルバ村の住人で、その昔魔女エーデルとやりあった人物らしい。

 おかげで僕達アルバ村の住人は、エーデルに“鬼畜”認定されている。

 もっとも僕はそれを知らなかったので、メイサさんは魔女エーデルを好きなんだなとしか思わなかったのだが。


 そこでひょっこり、メイサさんがユナと一緒に窓から顔を出した。

 

「やあ、ユウト君。実は魔女エーデルについて教えてほしいことがあってね。また何かやったのかな?」

「えーと、実は、現在の王様を、現在のお妃様と取り合いをして負けて、お姫様の呪いを魔女エーデルさんはかけちゃったらしいんですよ」

「そういえばお姫様に呪いがと聞いていたけれど、それが魔女エーデルだったのか」

「そうらしいですね。でもその呪いも大人気がなかったとの事で、元に戻そうとしたけれど、その道具が……うっかり女神様のスコップで僕が掘り出してしまったらしくて、ナイナイと涙目に」

「ぷっ」

「そんな感じで魔女エーデルとあった僕たちは、材料を集めつつ都市にテロを起こそうとした輩を倒しました。しかもお姫様の呪いもときました。まる。

「そんな大冒険があったのか。なるほど。でも男の取り合いか……また延々と振られているのか、あいつは」


 メイサさんがそうポツリと呟く。

 そういえば、メイサさんは魔女エーデルが好きだったなと思い出しながら、見た目もこうやって見ると格好いいので、何で嫌なのだろうなと僕は思った。

 そこでああ、と気づく。


「そうか、メイサさん、僕と同じこの村出身だから女神様の末裔なので、近親相姦になるから嫌がられていると?」

「? ああ、僕は連れ子だからこの村出身とは厳密に言えないよ」

「そうなのですか? 何だか凄く強いので村の人だと思っていたのですが違うのですか」

「うん。でも魔女エーデル……そうか、未だに恋人がゼロか。まだ都市にいるかな?」

「さあ。お姫様の呪いも解けてしまいましたしね」

「でも久しぶりに都市に来たから都市観光~とでも言ってそうだな。アイツの事だから。よーし、喪女なのをからかいにでも行くか」


 楽しそうにメイサが笑う。

 それを見ながら僕は、


「あれ、エーデルさんが未だにフリーなので告白しに行かないのですか?」

「……」

「……?」


 沈黙してしまうメイサに、僕が首を傾げる。

 それにユナが、僕の頭を軽く叩いてから、


「ほら、それ以上はいいでしょう? 出発するのは明日だし、急がないと私がユウトのお手伝いしちゃうわよ」


 それは困る。

 僕だって知られたくないものが、結構たくさんあるのに!

 そんなこんなで焦った僕が荷物をまとめていく。


 こうして僕の話はその日の内に終わったのだった。









 結局メイサさんも都市に雪トマトを売りに来るとのことで、一緒に向かうことになった。

 事前にアオイ達にも向かうのを伝えある。

 僕の村特産の雪トマトに興味があるので買いに来ると言っていた。

 

 そして都市につき、いつものスペースで僕たちは雪トマト及び、雪トマトの加工品を売っていく。

 休みのせいか人が多くて、どんどん売れていく。と、


「やっほー、買いに来たよ」


 明るく帽子が本体なリンが僕達に手を振る。

 アオイも一緒にいる。

 それに気づいたユナがやってきて、アオイ達と楽しそうに話している。

 そういえば我が男の友人であるミナトはどうしたのかと思うと、アオイが嘆息して、


「昨日夜遅くまで新発売のライトノベルを読んでいたから起きれない、だそうよ。後で合流するらしいわ」

「そうなんだ」

「後はエーデルさん、まだ都市で観光しているのよね。結構行く場所行く場所であうから驚いたわ」

「あ、そうなんだ。メイサさんに後で伝えておこう」


 僕の答えにアオイが目を瞬かせて、


「メイサさん? あの魔女エーデルの天敵みたいな人がいるの?」

「うん……あ、きたきた。メイサさん」


 やってきたメイサに、アオイうわっ、美形と小さくつぶやいていたのはいいとして。

 とりあえず紹介をする僕。

 メイサさん、女の子に優しいんだな~と思いながら僕は見ているとそこで、


「へ~、アルバ村の“雪トマト”祭りか。……あの子達がいるかもしれないし、見に行ってみるか。あのトマト美味しいのよね……ってこんな近くにいるじゃない」


 現れたのは金髪の胸の大きい美女、魔女エーデルだ。

 久しぶりというかのように手を振るとこちらに近づいてくる。

 ちょうどメイサさんと背になる位置だったからかもしれない。


 無防備に近づいている魔女エーデル。

 そこで、アオイがメイサさんを見てぎょっとしたような顔をした。

 そこでくるりとメイサが振り返り、


「やあ、久し振りだね。エーデル」

「……」


 メイサさんがそう声をかけると、魔女エーデルが微動だにしなくなり沈黙した。

 静かな時が二人の間に流れていると思っているとそこで魔女エーデルが、


「メ、メイサ?」

「うん、久しぶり」

「……ぎ、ぎゃあああああああ」


 手を振るメイサさんとは対照的に魔女エーデルは脱兎のごとく逃げ出した。

 それを見てメイサさんが追いかけ始めて、


「僕達も追い駆けたいな」


 なので側にいた両親に頼んで、僕達は魔女エーデルを追いかけ始めたのだった。




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