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~番外編・幼馴染が追い付く前の出来事-2~

 土の道を走り続ける私は途中、魔物に遭遇した。

 人通りが多めのこの道なので魔物が出るのは珍しい。

 魔物がどのように生まれ増えていくのかはあまり詳しくないというか、様々な方法、それこそ動物のように多種多様に子供を増やすのでよくわからない。


 その魔物でさえもただ単に魔力を持ち魔法で攻撃してくる動物を定義としているだけなので実質、動物と変わらない。

 なのでその子孫を増やす速度と、こういった街道で倒されてしまう量を考えると、人通りが多いこの街道で魔物が出るのはそれほど多くないはずなのだ。

 だって既に攻撃したので倒されたり、こういった人通りの多い街道では魔物駆除隊という国の機関が見回りをして倒しているはずなのだ。


 なので今ここで五匹ほどの野犬の魔物が私の前に立ちふさがっている。

 全く、どうしてこんな時にと私は思わざる負えない。

 私は今あのユウトを怒りに任せて追い掛け回している最中なのである。


 そんな機嫌の悪い私の前に出てきてどうしろというのか。

 しかもこの魔物たち、集団であることで自信をつけているのだろうか。

 赤い血のような瞳出目の前の私を“エサ”だとでも思っているのだろうか?


 弱肉強食というが、私が弱い肉になる存在だとこれらは思っているようだ。

 この魔物たちは毛のない茶色の肌を震わせて、大きな口を開き私に白い牙を見せつけている。

 唸るような声を聞きながら、私は笑った。


「この私を襲おうというのだからそれ相応の覚悟があるってことでいいわね!」


 そう告げて私はその魔物全てを倒し、粗悪品と分類されるだろう魔力の結晶である石を手に入れる。

 粗悪品と言ってもそこそこ使いではある。

 これらは茶色い濁った泥水のような小さなものだが、こんなものでも植木鉢に埋めると育ちが良くなったり花の色が鮮やかになったりする。


 もっともまれに突然変異を起こし、鉢の上で踊っていたり、部屋を走り回ったりすることもあるらしいが。

 そういった突然変異を使う品種改良の方法もあるらしい。

 さて、そのあたりの話はいいとして、


「うーん、いきなりこんなに魔物が出てくるなんてね。せいぜい出てくるのはスライムぐらいだと思っていたのにな」


 ここはそこそこ人通りが多いので魔物が出てくるとは思わなかったのだ。

 出てきてもすぐ倒されてしまうだろうと思ったのだ。

 しかも今の時期は、スライムが何故か少なくなる時期なのだ。


 あのドロドロベチャベチャネチャネチャしたスライム。

 品種によっては春頃に大量発生して、森から出てきたそれが野菜の芽を食い荒らすことがあるので、森で大量発生している所を駆除したりする。

 やはり人間の作る野菜のほうがスライムたちには美味しいらしく、鳥にも気をつけないといけないがこのスライムの食害は侮れないのだ。


 というわけで春頃に発生するスライムを村総出で駆除するのが、私の住んでいるアルバ村の風物詩である。

 ただ、今は春でも早い方なのでまだスライムの大量発生は起こっていない。

 とは言うもののスライムは生命力が強いので倒してもすぐに増えて街道に出てくるような気がする。

 

 現に私の目の前でスライムの大群が……大群が?」


「え? いや、ちょっと待って、え?」


 私はそこで見た。

 普段はそれほどたくさん見ないスライム。

 今回は緑色のものが沢山列をなして蠢いて道をよぎっている。


 その数は数百で足りるのだろうかという量だった。

 まるで何かの石に導かれるように道をよぎっていくスライム。

 この先には確か、ノーラ村があったはず。


 村は大丈夫だろうか?

 そんな気持ちになるもののそこで私は気づく。

 このスライム軍を倒さなければ、この先に勧めないのだと。

 

 これも全て、ユウトの策略か! と全く関係ない自象を繋げつつ怒りのボルテージを上げていき、


「わが前を立ちふさがりしスライム達に、その身の程を教えてくれるわぁあああああ」


 叫んで私は駆け出しスライムを倒していく。

 あとからあとから湧いてくるスライム、

 面倒くさかったなら何処かに蹴り飛ばして星にしてしまえばいいのだが、量が料だけに分散させるのも気が引ける。


 面倒くさいと思いながらそれらスライムを凪ぐように力強く蹴り倒していく私。

 やがて私がそれら目に見えるスライムをほとんど倒した頃。


「あ、ノーラ村が見えてきたわ。あれ?」


 そこで私は気づく。

 ノーラ村の結界が強化されている。

 結界は外から害獣がこないようにするためのものだがそれがまえきた時よりも強くなっているようだ。

 

 これは一体何を意味しているのか?


「もしかしてさっき見たスライムが関係しているのかな?」


 でもこの結界だと村の入口まで行かないといけないやと思ってそちらに向かう。

 その村の入口には一人の男性が立っていた。

 なので休憩も兼ねて私は何かを飲みたかったので、


「すみませーん、何か飲ませてください」

「! え? どうやってこの村に?」

「? スライムを倒してここに来ました」


 正直に私が告げるとそのおじさんは驚いたように目を見開いて、


「スライムは!?」

「だから倒しましたって」

「……もしやアルバ村の住人?」

「そうですけれど」


 そこでその男性は何かを考えるかのように沈黙してから、


「すみません、あのすら見を倒すのをてっつだって貰えませんか? 礼金は幾らかお支払いしますので」

「是非させていただきます!」


 丁度お小遣いが心もとないと思ったのだ。

 このおかげで都市までの馬車代が出るかもと、私はニヤリと笑ってその男性について行ったのだった。










 実はその男性は村長さんだったらしい。

 年齢は、30代前半のようだ。

 このノーラ村の村長をしている家系であるらしい。


 さてそんな彼に私が頼まれたのが、


「スライムを集める“ドロドロ石”?」

「うん、都市の土産物屋で売っていたので面白半分で買って、持って返って来たら大量のスライムに襲われて慌てても森に捨てて結界を強化したんだ」


 困ったようにいう村長さんだがそれを聞いて私は、


「何でそんなものを買ったんですか? スライムなんて集めてもしょうがな無いじゃないですか」

「沢山来るから、珍しいものを捕まえられたらいいなと思ったんだ。そもそも安かったしそこまで効果がないだろうと油断していたのだけれどね……」


 遠い目をする村長さん。

 一体幾らぐらいなのかと重って聞いてみると私の所持金よりも少なかった。

 これは効果がないと思うだろう、普通。


 それで面白半分で買ってみたら効果が抜群で、あの私が遭遇した緑色の濁った夏の池みたになっているのだろう。

 あのスライム集団がこの村の直ぐ側の森に集まっているようだ。

 なので結界を強化しているがそれにも結構お金がかかるし都市に妖精を出したら自分達でなんとかしろと返って来たらしい。


 スライム程度なんとかなるだろうと思われてしまったようだ。

 そんなわけで丁度アルバ村の住人である私が来たのでお願いされたらしい。

 しかもこれから食物と飲物もご馳走してくれるようだ。


 それを聞いて私はいい人だなと思いつつパンなどを食べる。

 それからそのスライムを放り捨てた場所をこの村長さんに聞き、結界の内部からその場所を教えてもらう。

 入口付近だけ結界を弱くしているので、そこから出ないと出入りできないそうなので内側からだ。


 大体の場所はわかった。

 結界に張り付くようなスライムの山が見えたのでその場所だろう。

 村を定義するような木の柵が連なっているので、結界の外に出たらそれを伝って動けば自ずと目的地にたどり着くだろうと私は思った。


 そして礼金とご飯にあっさり釣られた私は、スライム狩り、及び魔道具の破壊を目指して走りだしたのだった。

 

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