謎の美少女達と遭遇、の巻
女の子の声に僕が振り向くとそこにいたのは、二人の少女。
僕に声をかけてきた方の少女は、緑色の髪を肩まで伸ばした少女で、頭に薄い緑色の帽子をかぶっている。
ニコニコと笑っていて活発そうで人懐こそうな印象の美人というよりは可愛いといった少女だった。
胸は小ぶりだが足が長いようにみえる。
でも幼馴染のユナ寄りは大きいので、ここにユナがいたら“敵”認定していることだろう。
そんなまだ風邪を引いて寝込んでいるであろう幼馴染に関しては置いておくとして、対してもう一人は、不機嫌そうな背の低めの少女だ。
髪の色は水色で、ゆるく三つ編みをしている。
瞳の色は赤く、肌は恐ろしいほどに白い。
そして胸が大きい。
服装は柔らかいフリル付きの黒のケープとロングスカートで、手に本を持っている。
薄紫色の本に金色の模様のついたどちらかというと厚めの本。
あれで殴られると結構痛いかもしれない。
でもどちらも軽装で、武器を持っている様子がない。
しかも若い女の子の二人旅。
変な二人組だなと思っているとそこで、先ほど声をかけてきた少女が、
「でも私、スライムを倒さないで打ち返す人なんて初めて見たよ」
「そうなんですか? 駆除が面倒になると皆やっていましたが」
「……そういえば以前いた村で、何処からともなくスライムが降ってくる事件があったけれど、迷宮入りしちゃったんだよね。……まさか」
僕は沈黙することしか出来なかった。
いや、皆やっていたし。
倒すのが面倒くさかったし。
だがこのままさっきのことを突っ込まれると困る気がする。
なので話を変えて……この奇妙な二人について聞いてみようと思う。
「そ、それよりお二方は、武器を持っている様子が全くないですが、大丈夫なんですか?」
「うん、へーきへーき。だって、私の本体はこの帽子だし」
そういって、彼女は自分自身の帽子のつばの部分をぐっと引っ張ってみせる。
帽子が本体……どこかの悪役っぽい設定だが、そういったお年ごろなのだろうと僕は思う。
まあ、もっとも僕は既にそれは卒業したから、生暖かい目で見守るだけだがな!
そんな僕を見て彼女は、
「あれー、全然信じていない目をしている。ひどいな~、私、本当のことをいっているのに~」
「えっと、僕は確か武器について聞きましたよね?」
とりあえずそちらに話を戻した僕だけれどそこで、
「あ~、私ね、鋼線使いだから、見える場所に武器は持っていないんだ~」
「鋼線ですか? どんな武器なんですか?」
「硬い糸で相手を引き裂いたり、操ったり出来るのよ。……こんな風にね?」
にやっと笑った彼女だけれど、そこで僕の右腕がチクっとした。
でもそれだけだった。
目の前の彼女が笑顔のままで凍りついた。
何でだろうなと思っていると、
「あれ、今右腕を上げるように操ろうとしたはずなんだけれど、自分の意志に反してあげたくならない?」
「いえ、特には。ちくっとしただけで」
「う、え……変な子ね~。でもこれだけ強いなら、都市に行くんでしょう? 一緒に行かない?」
女の子に誘われてしまいました。
これはもう、いっしょに行くしか無いですね、と僕が思っているとそこで、
「私は嫌だわ。だってその子、私達よりも弱そうなんですもの」
「……弱くないです」
「じゃあ私のこの“本”よりも強いのか試させてくれたら考えてあげてもいいわ」
そこでその背の低い少女が双眸を挑発してくる。
それにもう一人の少女が、
「アオイ、ちょっと、いきなり喧嘩を売るのは……」
「いいじゃない。それに新しい魔法プログラムを試したかったし、貴方以外で相手にしてくれる人なんていないし」
「……お願いしてもいいかな?」
僕はそう、すまなそうに言われてしまってどうしようかとおもうけれど、どうやら彼女は僕と戦いたいらしい。
武器と言っても本しか持っていないようだったので、きっとあの本でぽかぽか殴るのだろう。
とりあえずはちょっとくらいなら相手をしてあげてもいいかなと僕は思ったので、
「いいですよ」
その答えに本を持った彼女は、今まで見たこともないような満面の笑みを浮かべたのだった。