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~番外編・幼馴染が追い付く前の出来事-1~

 その日私、ユナは熱を出していた。


「うーん、うーん」


 やはり一昨日、ユウトを追いかけ回したのがたたったらしい。

 だがあれは全部ユウトが悪いと思うのだ。

 それは一昨日の出来事。


「あれ? 最近ユナ、ちょっと“たる”みたいになった?」


 ユウトが悪びれもなく私にいってきたのである。

 何でも寒がりな私が服でもこもこになっていたのを見て、この村特産、“ロールブトウのワイン”樽という他よりも細長い形をした樽の形にユウトは見えたらしい。

 だが、それを言われた瞬間私は、デリカシーなく、“太った”? と聞かれた様に感じたのだ。


 女の子に、そう素で聞くというアホさ。

 はっきり言って私はユウトが“好き”である。

 幼馴染としてこの村でずっと一緒に育っていったのだが、いつの間にか恋心を抱いてしまったのだ。


 だが素直になりきれず、そうはいえない私は気付けばユウトにとって女性としてではなく何か違う男の遊び友達の様なものになっている気がする。

 焦りはするが素直に何てなれないし、一応は、髪を結ったり化粧をしたり、アクセサリーを付けたり服装を気を付けたり、おしゃれにも気を使っているのだが……ユウトは全く気付かなかった。

 全く気付かなかったのだ!


 ちらっとその事を言うと、ユウトは真剣に何かを考えてから、


「そういえばちょっと違うような気が……あ、石鹸変えた?」


 と私の化粧をした顔を見て言いやがったのである。

 確かに化粧をしたが、ナチュラルメイクにしていたので分かりにくかったかもしれないが、明らかに違う答えに辿り着くのはどういう事なの!

 そこまで考えて私は熱が更に上がってきた気がしてぐったりした。


 先ほどは派が薬を持ってきてくれたのでそれを飲み、大人しく眠っている。

 体中の痛みは少し減った物のだるくて動けない。

 頭の上には濡れたタオルが乗せられているがすでにぬるくなっている気がする。


 体調が悪い。

 やっぱり一昨日、ユウトを追いかけ回したのがいけなかったのだろうか?

 最近は私が怒ってもすぐに逃げてしまうので報復が出来ない。

 

 雪の降る森の中を走り回ったのがいけなかった。

 だが最終的にユウトを森の一角に追い詰めて捕まえて、よくも“たる”といったわねと締め上げた所、その様な意味だと分かったのだが。

 だがもう少しユウトは、私に対してこう……こう……。


「なんだだか頭が熱くなってきた。寝て早く風邪を治そう。うん」


 私はそう小さく呟いて、瞳を閉じたのだった。










 かたんと窓が開くのを感じたが眠くて目が開けてられない。

 同時に頭に重みを感じたがよく分からない。

 私はまだまだ眠くてそのまま意識を失う。


 そしてどれくらい時間がたったのだろう。

 私はふと頭の重みに目を覚ました。

 頭の上にタオル以外の感触と重みがある。


 一体何だろうと額に手を触れると、何か丸い物が乗っていた。

 冷たくてつるつるしたそれを掴み、ボールかなとぼんやりした頭でそれを手に取る。

 それを目に見える範囲に持ってきてそれは赤い色をしているのだと気付いた。


 赤くてつやつやして白く鈍い輝きがある。

 新鮮な証拠だと言えるかのような赤くはりのあるそれ。

 この村の特産品の一つである“雪トマト”だ。


 試しに裏返して見たりしても、“雪トマト”である。

 ここの村の風習で風邪をひいたときは、この“雪トマト”を額に乗せておくことが聞くと言われているのだ。

 だが額に“雪トマト”をのセルという間抜けな構図になるのは私だってやるのは嫌だ。



 そもそもそんなで早く風邪が治るわけがないじゃないかと私は思う。

 なので母さん何でこんな恥ずかしい事をするんだと思いつつ、喉も渇いていたのでその“雪トマト”をかじる。

 みずみずしくて甘くてとても美味しい。美味しいのだが……。


「なんでユウトの家の“雪トマト”なのだろう?」


 味が少し違うのだ。

 はっきり言ってユウトのうちの作る“雪トマト”はとても美味しい。

 だから食べてみればすぐわかるのだ。


 美味しいなと思っていると母が来たので私は、


「頭に“雪トマト”を置かないでよ。恥ずかしい」

「あら、おいていったのはユウトちゃんよ」


 それを聞いた私は、一瞬何を言われたのか分からなかった。

 次に私の中で湧いてきた物は、たとえようもない怒りだった。

 熱が更に上がっていく様な頭が沸騰するような感覚を覚えながら、


「ユウトぉおおおお、ユウトぉおおおおおお」


 しばらく呪詛の様に繰り返し繰り返しつぶやいて体を震わせて、けrどそれをやっていたら頭に熱が上がっていてそのまま私は再び眠りについたのだった。










 その怒りによってか、私の風邪は回復傾向に向かう。

 その夜には風邪はほぼ治り、普通の食事をとる。

 肉を食べて元気を付けようという事でお肉料理が並び夜は豪勢な食事をしていた。


 それから薬を飲んで私は再びぐっすりと眠る。

 大事をとってその次の日もゆっくりとして眠る。

 ただその間に私が思ったことといえば、


「ユウトがお見舞いに来ない」


 何時もなら来てくれるのに薄情だなと思う。

 いや、一度だけ来ていた。

 額に“雪トマト”を置きに。

 

 それを思い出すと私の中でふつふつと怒りが再燃していく。

 やはり次に会った時には、“雪トマト”の件に関して問いただしてやろうと思う。

 大体お見まいと言ったら、花を贈るだの他にも色々あるだろう。


 特に今のこの時期には、雪を養分にして育つ“硝子の花”が見頃なのだ。

 それを持ってきても良かったはずなのだ。

 なのに“雪トマト”。

 

 そう、“雪トマト”

 それも私の額の上に。


「絶対に許さない。後で絶対に捕まえてやる」


 私は総呟きながら再び眠り、次の日……驚愕の事実を知ったのだった。







 風邪がだいぶ良くなってほぼ治ったので私は外を散歩することにした。

 久しぶりにユウトの家にいってユウトにお仕置きしてやると私が決めているとそこで母に、


「ユナちゃん、どこに行くの?」

「ユウトの家に行くの! ユウトのやつ一度しかお見舞に来なかったし」

「あら、それは無理よ」


 のほほんと母が言った。

 何でだろうと私が思ったけれどそこで、


「なんでもユウト君、春休みにでっかいことがしたいと言い出して、女神様から伝説のシャベル? だかなんだかを持って都市に行っちゃったわよ?」

「でっかいこと? というか私に高校行く話は……」

「それまでに一回戻ってくるんじゃない?」


 母親がほのぼのとしたようにそう告げてくるのを聞きながら私は、怒りに任せて少ない小遣いを持って、


「ユウトの所に行ってくる」

「あらあら、ユウトちゃんと一緒に帰ってくるの?」

「その予定、それじゃあ行ってきます」


 そう言って私が走って行くと途中でこの村に住む、メイサさんに会った。

 その昔魔女エーデルといろいろやりあったらしい彼だが未だに二十代前半と言える要望だなと私は思いながら、


「ユウトはどのルートで言った感じですか!?」

「あれ、ユナちゃんはもう風邪はいいのかな?」

「大丈夫です完治しました。というわけでユウトを追いかけていくことにしたのですがどっちの道ですか?」


 都市に行くには二つの道がこの村にはある。

 なのでその二つについて見ると、メイサが、


「そうだね、もし魔法を使って走って行くなら、ノーラ村の方のルートがいいんじゃないかな。どうせもうユウトは都市についているだろうし」

「そうですね、分かりました。馬車台も節約も兼ねてそっちから行きます」

「いってらっしゃーい」


 そう言われて見送られつつ私は魔法を使って走りだす。

 足に風系の魔法を使い、体を軽くして少しでも早く進むのだ。

 普通に走るよりもずっと早くこの状態では走れる。


「待っていなさいよ、ユウト。絶対にそんなアホな理由でアホのことなんてしているようだったら村に連れ戻してやるんだからぁアアアア」


 そう私は叫び走っていったのだった。


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