倒すのが面倒な敵に遭遇した場合の対処法
家に書き置きをして僕は旅だった。
「お小遣いをためておいたのが良かったな」
袋に入れたお小遣い。
時々お手伝いをしたりしてもらったお金も全部ここに貯めていたのだ。
全部で、155863コールド。
多分これくらいあれば足りるかなと思って、全財産を持って僕は旅だった。
もちろん家にはこんな風に書き置きしてだ!
『教会に行って、春休みにでっかいことがしたいって言ったら、女神様が伝説の“万能スコップ”をくれて、冒険に連れて行ってくれるらしいので、ちょっと行ってきます。あ、高校行く準備のために一回帰ってくるので安心してね』
これで家族も心配することはないだろうと僕は思って歩き出す。
途中野犬ぽい魔物や、盗賊っぽい人達も出会ったけれど、この万能スコップでイチコロだった。
盗賊は捕まえて、街道に沿った近くの村で引き渡して報奨金を得た。
こんな子供一人で、本当に倒せたのかと驚かれたが、僕の出身の村の名前を言うと納得されてしまった。
やっぱり五人を一人で倒したのは、凄く強いってことなのかなと僕は思ったが、それを言うと僕の父や母だってその程度片手一つでできるし、幼馴染のユナなって蹴り一発で終わらせると思う。
あそこの村の人が特に弱かったのかな? と失礼なことを考えていると、そこで今度は変な魔物に遭遇する。
溶けかけた透明なセリー状の物体の魔物、スライムだ。
それほど強くない魔物なのだが、間違って踏むと服が溶けたり、肌から魔力を吸われたり、たまに変な毒のようなものを持っているのがいたり魔法を使うものがいたり……それくらい多様な種類がいて、スライム図鑑なるものが作成されるくらい種類がいる。
まれな希少種は高く取引されてペットにされる場合もあったりするらしいのだが、大体は弱い魔物である。
なので倒してしまってもいいのだが、あまりにもポコポコ出てくるので、それすらも面倒くさいのである。
なので目の前にいる水色のぶよぶよして、マルイ核のようなものが中にある単細胞生物のようなそれに向かい僕は右足を一歩前に出し、スコップを斜め横に構える。
それとほぼ同時に現れたそのスライムが二匹ほど、ぴょんと僕の身長よりも高いくらいに飛び上がって僕に襲い掛かってくる。
そして僕の目の前に来た所で、僕はそのスコップを横に凪いだ。
カキーンッ
「ホームラン!だな。今のはよく飛んだな」
打ち方が上手くいったのか、小気味の良い音を立てて青空高く飛んでいき……スライムは星になった。
こうやって面倒だから飛ばしてしまうのである。
なにせ次から次へと出てくるのだ。
いちいち倒していては僕が疲れてしまう。だって、
「ただでさえ交通費節約のために歩いているんだし」
この次の村のあたりまでなら歩いたほうが早いしお金もかからないのだ。
そこから王都まででている馬車にはさすがに距離があるので乗りはするが。
いくらお金があるとはいえ、節約は大事なのである。
そう僕が思っているとそこで、近くで手を叩く音がした。
「わーお、スライムを打ち返しちゃうんだ、おもしろーい」
そんな気楽そうな楽しそうな声に振り返ると、そこには同い年くらいの少女の二人組がそこにいたのだった。