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取り逃がした

 襲いかかっている彼らを、スコップで殴っていく。

 その度に、すこんっ、とこ気味の良い音を立てて倒れていく。

 そしてすぐ傍では風の魔法やら鋼線やら鍋やら、そしてお姫様は剣を使って応戦している。


 そういえばアオイはこういった戦闘の時は失敗しない。

 やはりいつもはオリジナルの何とかをやろうとして失敗になったのだろうか。

 失敗した時のカップケーキは美味しかったと思う。


 そして姫の剣さばきにメイドのミミカが鍋で応戦したり、ミナトは魔法で結構威力があったり、リンは鋼線で次々と武器を切り裂いている。

 ユナはいつものように蹴りを入れて一発で倒して、魔女エーデルは魔法で……。

 早くいかないと僕の出番が倒れた敵をスコップで軽く叩くだけの地味なお仕事だけになってしまう。


 そんな焦りから、僕はとりあえずこぼれてきた一人を叩きのめす。

 殴ると一発で終わった。

 そしてそれが最後の一人であったらしいというか、


「あの威勢が良かったボスが真っ先に逃げたわね」


 魔女エーデルがそう嘆息する。

 珍しく今回は何名か取り逃がしてしまったらしい。

 けれどとりあえずはここにいた全員を、スコップで軽く叩いていく。


 これでこれからはキラキラとした瞳で慈善事業をする事になるだろうと僕は、深く考えずに思った。

 一通りやって終わった所で魔女エーデルが、


「逃げた彼らが待ち伏せしているかもしれないから気をつけなさい」


 そう言われたので警戒しながら僕達は道を進んで行くと、気付けばハイキングコース……しかも人通りの多い場所に出てしまったのだった。








 土産物屋経由で連絡をとり、彼らを回収してもらう事にした。

 そして今回で全ての材料がそろった事になるけれど、


「これで普通のお姫様になれるわけですね」


 嬉しそうに、ヒナタ姫が呟く。

 やはり彼女も女の子だなと思っていると、そんなヒナタ姫が、


「でも女性とは以前の様に仲良く出来ないのは残念です」

「え、あ、はい……」


 僕の言葉にそんな返答を返してくる彼女。

 その答えに魔女エーデルは眉を寄せて、


「何? そのままにして欲しいの?」

「い、いえ、そのままには……」

「……まあ、男性向け副作用の分だけ取り除けるようにはなっているんだけれど」

「本当ですか!?」

「ええ、あれから何年もたっているから、その程度の調整は出来るわ。……明日までに考えておいて。作る場所に移動するのは明日にする予定だから」

「作れる場所が決まっているのですか?」

「複雑な条件が必要だからね」


 そう肩をすくめる魔女エーデルに僕は、


「あの残党がそこで待ち伏せしていませんよね?」

「……複数個所あるし、そこには警備の人もいるから大丈夫じゃない?」

「あの、僕達は? 警備の人達がいるのに入れるのですか?」

「入り込んでもいいけれど、そこにお姫様がいるから大丈夫じゃない?」


 魔女エーデルがそう言ってヒナタ姫を指さす。

 言われてみればそうだよなと思いながら、僕達は都市に馬車で戻ったのだった。



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