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誰かが悲鳴を上げた

 手に入れた“ソゾネ石”は確かに灰色をしていた。

 灰色の石に、所々に透明な石が混ざり込んでいる変わった石。

 鉱物標本として飾っておいてもいい様な気がする。


 そんな綺麗で変わった石をとりあえずは掘りだして土……というか岩の欠片を払いのけて、魔女エーデルに渡す。

 それを微妙そうな顔で受け取った魔女エーデルは、


「本当にそのスコップは“万能”ね。便利な事はいいけれど、こんな風に努力も何もなく手に入れてしまっては達成感が無いわね、お姉ちゃん?」

「い、良いじゃない。可愛い、ユウトちゃんのためだし」

「まあいいけれど。……はあ、私も早く、何処かでいい男を捕まえないとね」


 そう言って魔女エーデルが背伸びをしたのはいいとして、それから僕達は観光も兼ねて穴の奥深くに向かっていく。

 歩いていくといずれはハイキングコースに戻ると魔女エーデルが言っていた。

 途中、暗闇で光るキノコやら花があったので、それを見ながらアオイが、


「こ、これは……」

「アオイ、幾らなんでもこれは止めておけ。まだ若いんだし」

「う、うう、分かっているわよ、ミナト」


 そう言ってアオイはミナトに止められていた。

 でも僕にはよく分からず、


「ミナト、あのキノコとかは何なんだ?」

「あれ? 都市の高校に通うのに、魔法学関係は学んでいないのか? 学んでいないと魔法は使えないはずなんだけれどな」

「う、大抵、ファイヤーって叫べ場手から勝手に炎が出てくるからそれで問題はないから、記憶にない」

「……いやいや、呪文は?」

「そういえば、ミナト達は、呪文を唱えていた気がする」

「……」

「……」


 静かな沈黙が流れてそこで魔女エーデルが嘆息して、


「そこのユウトはあのアルバ村の出身よ。その程度の異常は、普通だわ」

「そうですね、あそこの村出身ですからね」


 それで納得されてしまったが、僕としてはそんなに変なはず無いのになと思っているとそこでユナが、魔女エーデルに、


「うちの村の人が妙に強いというのは認めますけれど、それ以外は普通なんですよ」

「そうね、そうだったわね。ごめんなさいね」

「はい。それでこのキノコって何になるんですか?」

「ああ、惚れ薬よ。それをふりかけられた男も女も目の前の相手に夢中になっちゃうの」


 それを聞いてぴくんと反応したのはユナだった。

 チラチラ僕の方を見ながら、


「……ちょ、ちょっと貰っていこうかな……」

「あら、好きな男がいるの? だったら止めておいた方が良いわ」

「え? で、でも……」

「魔法薬でおかしくなるのと、薬の効果が切れた時と聞いている時のギャップが強すぎて……恋愛小説も真っ青な台詞を口走ったり、行動が恋愛小説の男性キャラみたいになったりするらしいから……大抵そのカップルはその後に付き合っても破局すると言われているの。地道な努力は大切よ?」

「……そうなんですか」


 ユナがしょんぼりしている。

 だがこのユナが一体誰にそんな惚れ薬をしかけるのだろうかと奥は冷静に考えて、


「ああそうか、ユナが使いたいのは同じ村の、ミレッタさんとか? 村一番の美形って言われているし……な、なんでユナは僕を叩くんだ」

「自分の胸に手を当てて考えなさいよ、ユウト」


 怒った様にユナに言われて僕は、やっぱりユナは不条理だと僕は思った。

 そこでミナトに僕は言われる。


「それで、ファイヤーって言うだけで魔法が使えるのか見せてくれ」

「いいですが、ここだと酸欠になりそうなので風の魔法でいいですか?」

「もちろん!」


 そういった話になり、僕はきちんと周りを確認して、人のいない場所に向かって手をかざし、


「風よ!」

「ぐわぁあああああ」


 暗闇の中、僕の風を受けて誰かが悲鳴を上げたのだった。


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