表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/66

“もののけ渓谷”

 “モケケ渓谷”。

 都市から少し離れているので、日帰りの場合は馬車移動が必須である。

 以前貰った賞金でその馬車にのり、その場所に向かう。


 途中森を抜けていく時に兎の様な魔物に遭遇したが、


「よし、最高級の肉を手に入れたぞ!」


 と大喜びで御者のおじさんが倒していた。

 僕のいた地域にはいない魔物だったので、こんな魔物は食べられるんだと僕は学習した。

 更に味が気になったので、料理をする都市出身のアオイに聞いてみると、


「“マレッタ兎の肉”ね。最高級のお肉よ。しかもめったに市場に出回らないの」

「へぇ、そんなに美味しいのか」

「美味しいには美味しいらしけれど……珍味であるらしいわ」


 珍味という辺りで、本当に美味しいのだろうか? どうなんだろうと僕が思っているとそこで覆面をした姫様が、


「味は“ノラーナ牛”等の方が美味しいですよ?」

「そうなんですか。……貴重なだけという感じですか?」

「はい」


 即答された僕は、また一つ食材への夢を打ち砕かれたのだった。







 “モケケ渓谷”につきました。

 都市からほんの少し離れたその場所は、ひんやりとして涼しい。

 この前の湖よりも涼しいというか寒いくらいだ。


 それはそれで構わないのだが、この周辺は夏場は涼しい以外の理由で人がやってくる観光スポットらしい。

 つまり、何処か不気味なのがこの場所の特色なのだ。

 崖沿いの岩の反響から、川の流れが音を変えて響き渡り唸り声に聞こえる。


 まるで地底のそこから亡者が雄たけびを上げる様に……。

 しかも周りに樹木は獣肌が黒く、所々に穴が空いていて、それが顔の様に見えるらしい。

 しかもこの樹木、夏場には血の様に赤い果実を実らせて、それが何を養分にしているのか等といった怪談があったりする。


 因みにこの果実は芳醇な味わいでとても美味しいらしいが、この地域の特殊な風土でしか栽培できないらしく、持ち帰って種をまいてもすぐに枯れてしまうらしい。

 そのためか、この付近の土産物屋ではドライフルーツとして一年中販売されていたり、アイスクリームにされたりと……その辺りの話をすると長くなるのでここで止めておく。

 そこで僕は周りを見回した。


 観光客相手の土産物屋はそこそこ繁盛しているらしかった。

 だが、あまり食欲をお覚える場所でないのにそれが不思議である。

 何故かというと、そこら中に白い霧の様な物がたなびいているからだ。


 これが反響音と重なって呻く怨霊のような幽霊に見えるらしい。

 それもあってかここは別名、“もののけ渓谷”とも呼ばれているらしい。


 一応観光スポットなので、道は整備されているそうだけれど、今回は探し物の関係上、ちょっと奥の方に行かないといけないらしい。

 道の周辺はほとんどが採り尽くされているそうだ。


「崖の所に穴が幾つか空いているからその内の一つに入りこむわよ。霧で他の人達には、私達の動きは気づかれないだろうし」


 と魔女エーデルが言うので、久しぶりの崖登りかと僕が体を解していると、貴方達みたいなアルバ村の人間がこの世界の基準だと思えわない事よと魔女エーデルに言われてしまった。

 だったらどうするのだろうと思っていると魔女エーデルが、


「私の魔法でそこまで送ってあげるわ」


 そう答えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ