女の子の手料理
ユナが作ってきたのは、やはり“雪トマトのカプレーゼ”だった。
他にも、“バナナ芋のグラタン”やら、“爽やか風レタス”のサラダ、りんごジュースなどが食卓に並ぶ。
そんな見慣れた物の中に、変な物が一つ。
黒い三角形の物体。
三角形の白い“森コメ”に、ヘルシーな海藻で作った板状の“黒のり”を巻いたものであるらしい。
見た事のない食べ物を見て僕は、なんだろうと思っているとそこでアオイが、
「リンの故郷の食べ物なんだって。携帯して持っていくのに便利だとか」
「へ~、そうなんだ」
その地域の郷土食なのだろう。
何て名前なのかを聞くと、“おにぎり”だそうだ。
表面にほんの少し塩を付けて握った物や中に具が入った物もあるらしい。
因みにそれらが今日はごちゃまぜなので何に当たるかは分からないらしい。
といった話を聞きながら机の上に並べるお手伝いをして、僕達は夕食にありついた。
どれも美味しい食事で、あの謎の“おにぎり”という物体も、中には焼いた肉が入っていてそれはそれで美味しい。
ユナが何時も作っている“雪トマトのカプレーゼ”も、美味しいし、グラタンもチーズがとろりと溶けていて、熱々で、口に含むとミルクとベーコンの旨みが口いっぱいに広がる。
美味しい物を食べながら僕達は話しをして、女の子達は実は料理が皆得意だったんだという事実に気付くとともに、魔女エーデルさんはなんで料理を作らないんだろう、爆発でもするのかなとふと思ったが、それ以上僕は突っ込まなかったのだった。
食事を終えて別れて、僕は宿に戻る。
またしても賞金をもって来てくれたのだが、
「多分、もう一か所にも遭遇すると思いますので、よろしくお願いします」
「あの、一つお聞きしてよろしいでしょうか」
その賞金を持ってきた人に聞くと、その人は沈黙してから、
「答えられる範囲でですが」
「今一緒にいるのは魔女エーデルで、ヒナタ姫の呪いを解くために僕が行動しているとご存知ですよね?」
「……いまのは、カマをかけただけでしょう。答えられません」
「そうですか、では、“悠久の立方体”を彼らも必要としているのですか?」
試しに聞いてみると、彼は黙って頷いた。
それを見ながら僕は、
「次に行く場所にも彼らが現れるわけですね。それと、お姫様が一緒でも構わないのですか?」
「貴方方が強すぎるので問題ありません」
といった答えが返ってきた。
何となく魔女エーデルの行動がすでに追跡されていたり、あの悪い奴らの行動も含めて全部追跡されたりしている気がしたけれど……理由が分からないので、とりあえず放っておいたのだった。
次の日は皆で再び集まった。
ユナは、アオイとリンと一緒にまくら投げを楽しんだらしい。
羨ましい話である。
そして僕達は最後の材料をとりにある場所に向かっていた。
「“モケケ渓谷”の一角にあるらしい、“ソゾネ石”を探さないといけないの」
「どんな物ですか?」
魔女エーデルに聞くと灰色の石であるらしい。
いざとなったらスコップを使う、そんな話をしながら僕達はその場所に向かったのだった。