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これはもう、“敵”だわ

 ぼこぼこにされたミナトは、何故か幸せそうな顔で気絶していた。

 その様子を傍観していたユナ。

 彼女はふうと息を吐き、自慢のツインテールを辛く片手で引っ張る。


 黒髪で青い瞳の彼女は、その髪をよく自慢していた気がする。

 それはもしかしたら貧乳というコンプレックスの裏返しなのかもしれないと思ったが、僕は賢いので絶対に口に出さなかった。

 さて、そこでようやく彼女はくるりと僕の方を向き、


「まあいいわ。それでこれから何しに行くの?」

「お姫様の呪いを解く物体を作る為の材料集めです」

「? 呪いを解くアイテムって、あれでしょう? 伝説の美女、魔女エーデルがかけた呪いなんでしょう?」

「ごふっ」


 最後のごふっ、は魔女エーデルの物だ。

 何なのよあの村、本当にそんな話になっているの……とぶつぶつ呟きながら顔を青ざめさせていたのはいいとして。

 そんなユナに、


「大丈夫だよ。本人に聞いて集めているから」

「本人? まさかこの中に?」


 そう言ってユナは全員を見回してから、覆面をかぶっているヒナタ姫に顔を向けたので、


「ユナ、違う。その人は呪いをかけられたお姫様の方だ」

「何でそんなお姫様が呪った魔女エーデルと一緒に材料を集めているのよ」

「成り行きでそうなりました」

「短い文でまとめられると分からないけれど……そういえばお姫様の呪いって、女性には超絶イケメンに見えるんだったっけ」

「ユナはよく知っているな」

「……これだからユウトは。そんな風に周りにそこまで関心がないから、風邪だからって寝ている私の額に“雪トマト”を乗せたりするのよ」

「で、でも村では一般的じゃないか!」

「もうちょっと可愛い、そう、“ミレアの花”だっていいでしょう!?」

「い、今の時期の花じゃないし!」

「ああもう、ユウトは乙女心が分かっていない!」

「乙女?」

「……前々から言いたい事が」


 そこでユナが言葉を失った。

 そんな彼女の視線の先には、姫が覆面をとっていて、


「イケメン! ……は!」


 うれしそうなユナを冷たい視線で見た僕にユナは慌てているがその間に姫様は覆面を元に戻して、


「このような呪いが掛かっておりまして、ですが元に戻れると聞き私もお手伝いできればと思って同行させて頂いております」

「そうなんですか……」


 ユナが大人しい。

 これが、但しイケメンに限るというものだろうか。

 不条理だと僕は思いながら、僕の目にはどっちも女の子に見えるので、女の子相手に幼馴染のユナが頬を染めているように……。


 新たな世界が僕の中で開きかけた所で僕は、魔女エーデルに声をかけられた。

 

「そろそろ出発したいのだけれど良いかしら」

「あ、はい。エーデルさん」


 そう答えるとユナがくるりと振り返り、魔女エーデルの前にまでやってきてまじまじ顔やら何を見たりして、


「ふむ、伝説の美女の名前は伊達ではありませんね」

「……それ、伝説の悪女の間違いだから」

「ええ! そんなに何人もの男を手玉に! ……た、確かにこれだけ美人なら」

「ちょ、私が美しいのは認めるけれど、それは……」

「こんな男の欲望を具現化したような美人、そうそういません。なるほど」

「なるほどって、きゃああっ」


 そこで魔女エーデルが、ユナに胸を揉まれた。

 ユナは真剣にそれを揉んで、


「あっ、やっ、やぁああっ、めっ」

「やはりこれは本物ですね。く、これはもう、“敵”だわ」


 手を放しながらユナが嘆き、魔女エーデルは涙目になっていたのだった。


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