そのスコップの真価とは、いかに!
謎の女性、本人曰く、女神様らしい彼女の声と共に、目の前には光り輝く伝説の“万能スコップ”が!
……“万能スコップ”が。
その白い光りに包まれながら現れたその“万能スコップ”(三回ほど心の中で呟いた)を見ながら僕は、
「あの、伝説の……とついたら剣とかもっとカッコイイ武器なんじゃないですか?」
「あら、スコップもちょっと見ない武器でいいと思うけれど」
「でもこの新品みたいなスコップ、一昨日買ってきたスコップとおんなじ形ですよ? ただのスコップにしか見えませんよ。柄の部分だって真っ赤だし」
「それはそうよ。貴方の買ったスコップを参考にして私が作り上げたわけだし」
どうやら僕のかったスコップを見ていたらしい。
意外に気さくな女神様のようだ。だが、
「スコップ……これ、昨日こういったスコップで穴をほって種をまいたところなんです。もう少し現実味がない感じがいいのに」
「スコップでユウトちゃんは魔物を退治したり害獣と戦ったりしているから、使いやすい武器だと女神様は思うの」
「でも皆やっているじゃないですか。もう少しこう、伝説の“剣”、みたいなモノのほうが僕はいいです」
僕はわがままを言った。
だってこのままだと本当に伝説の“万能スコップ”を手に旅立たされてしまいそうだからだ。だが、
「あら、スコップはいいわよ? 手榴弾だって跳ね返せるし、塹壕だって掘れるし」
「え?」
「……ではなくて、伝説とつくだけのものすっごい効果がいっっっぱいついているの。むしろ剣よりも使い勝手がいいからおすすめよ?」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
やけにこのスコップを薦める自称・女神様。
そんなにこのスコップは素晴らしい物なのかと僕は思う。
そもそも効果ってなんだろうと思ったので、
「そのスコップの効果をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「いっぱいつけたから、幾つか忘れちゃったけれど……」
「えっと、やっぱり……」
「地面を掘れば、この世界で見つかっていない宝物が1%の確率で掘れて、9%で欲しい物が掘れて、50%の確率で確実に一個、大地の魔石が手にはいります!」
「ぜひこのスコップを使わせてください!」
僕は現金にもそう答えた。
何しろ、大地の魔石である。
そのまま魔法を使うのに使ってもよし、ちょっとした魔道具に使ってもよし、売ってもよしの、大地の魔力の結晶だ。
ちなみに植木鉢にその石を埋めて植物を育てると成長がよく、花なら綺麗になったり、植物だと収穫量が増えたりするのである。
そんな素敵アイテムがいくらでも手に入るなら、と僕は思ってそこで、
「あの、それでその土地の、植物が成長する力が減ったりしませんか?」
「大丈夫よ。余分なところから大地を通して転送してくるだけだし」
「そうなんですか。じゃあこの“万能スコップ”で旅に出ます」
「あら、引き受けてくれる?」
「でっかい事ができるんですよね?」
「お姫様の呪いを解くのは、でっかいことになるかしら?」
「もちろんです! お姫様か……」
お姫様というとすっごい美人できれいなドレスをきた女の子らしいとしか聞いたことがない。
そんなお姫様の呪いを解く、春休みにやるでっかいこととしては最高だ。
なので目の前に浮いている“万能スコップ”を掴んで、
「では、僕はこれを持ってどうすればいいのですか!」
「そうね、まずは、王都メルヴィアに向かいなさい。そこで“面白い”イベントがやっているからそれに出るように。いいわね?」
「その後はどうするんですか?」
「必要ならその都度助言をするからそのとおりにしてね。それ以外は……観光でもしてきたら? 高校はその王都にあるんだし」
「そうですね。……女神様はよくご存知ですね?」
「女神様だもの、当然よ!」
そうなのか~、と僕は思いながら、家に書き置きをして旅立つことにしたのだった。