とあるお店にやってきた
そんなこんなで馬車に乗り宿に戻る。
それから本日の夕食はどうしようかと思って外に出て歩いていると、本日はサービスdayと書かれた看板を見つける。
ステーキのお店だった。
厚切りのお肉が美味しそうなお店と、お肉を焼く香ばしい匂いに引かれてふらふらと中に入ると、
「あら、ユウトじゃない。何でここにいるの?」
「いえ、お肉が安い日だったので」
入口近くに陣取っていた魔女エーデルと遭遇。
一緒に食べていいですかと聞くと、良いわよと魔女エーデルは言う。
現在注文したばかりらしく、まだ彼女の前には何も来ていない。
とりあえずはメニューの紙を見ながら即座に決めた僕は、店員さんを呼び、
「“ハブモブ牛”のこのステーキで」
「はい。お飲物は何になさいますか?」
「“もちさくらんぼの炭酸”で」
「“もちさくらんぼの炭酸”ですね。デザートは何になさいますか?」
「そうですね、チーズケーキのスターブルーベーリーソースがけで」
「かしこまりました、チーズケーキですね」
といった会話をして注文しておく。
それが終わってから僕は魔女エーデルの変な視線に気づいた。
「どうかしましたか?」
「男の子なのに、そんな薄い肉でいいの?」
「そこそこ厚かったと思いますが……もしやエーデルさんはもっと分厚い肉を?」
「当然でしょう? 安く食べられるんだから一杯食べないと」
「ダイエットは……」
「聞こえないわ」
即答する魔女エーデル。
肉を焼く時間の差があるのだろう、肉が運ばれてきたのは同時だった。
それに“三又山葵のショウユーソース”と“果実ソース”の二種類のしょっぱいソースを選んでかけて食べていた。
添えられていたマッシュポテトも美味しい。
肉汁がしみしみしていてそれもまた……そう僕が思っているとそこで魔女エーデルが、僕の三倍の厚さはある肉の塊にフォークをつきたてながら、
「でも、アルバ村出身てことは私の事は知っていたはずよね。その割に、何というかこう……」
「? 何がですか?」
「敵対的じゃないというか」
そう魔女エーデルが言うので僕は首をかしげて、
「なんでですか?」
「貴方、魔女エーデルが世間でどう言われているか知らないの?」
「ドジっ娘な伝説の美女、あとエロ要員」
「……」
魔女エーデルが沈黙して、それからふうと大きく息を吐き、
「普段から貴方達、アルバ村の住人が私の事をそう見ていたか、よく分かったわ」
「でもよく、失敗してエロい事になっていたんですよね?」
「! 違うわよ! 何かあそこの村の男と関わると、服が破けるような目に毎回あっていただけ……しかも調子に乗ってなんかいたずらしていたら、何処からともなくあいつらが来るし。特に、メイサの奴って……」
「その人は何かしたんですか?」
「毎回毎回私が何かしようとすると邪魔したり……まあ、時々助けてくれたりはしていたけれどね」
「それは魔女エーデルが好きだったから、当然ですよね」
そこまで話すと、魔女エーデルは変な顔をして、
「誰が、誰を?」
「メイサさんが、魔女エーデルを」
「きっと気のせいね。はい、この話は終わり」
そう言いながら、魔女エーデルはやけ食いでもするかのようにお肉を食べていたのだった。