出番がない
魔女エーデルが、やる気満々で彼らを追いかけていくのを見送……ろうとした僕達だけれど、
「どうする? 僕達もついていく?」
「もちろんです!」
勢い良く答えたのは、ヒナタ姫だった。
あれっと僕は思っていると、アオイとミナト、ミミカがぎょっとした顔をする。
それは当然だろう。
姫が自分から危険な場所に行こうとしているのだから。
そして真っ先に口を開いたのはミミカだった。
「姫様、おやめください! そんな危険な輩はそこにいる伝説の悪女エーデルにお任せしておけばいいのです!」
今、魔女じゃなくて悪女って言ったでしょ! と怒ったように魔女エーデルが叫んでいるのを無視してミミカはヒナタ姫煮詰めより、
「貴方はこの国の姫なのです。それなのに……」
「だが間近でその不安を持つ者の話を聞くのも必要ではないのか?」
「確かにその心がけは素晴らしいものだと思います。ですが……」
そうミミカは必死になって説得しようとしている。
けれどお姫様らしい答えが延々と繰り返されているだけだ。
だがそんな問答を聞いていた魔女エーデルが嘆息するように、
「あいつらの話なんて、私が聞くわけ無いでしょう?」
「「え?」」
「何で会話してわざわざあいつらに反撃する時間を与えないといけないのよ。こっちが危険にさらされるのに、物語みたいに相手の言い分というか説明なんて、私が聞くわけないじゃない」
「「……」」
「そんなわけで、そういった甘い考えの子達とは一緒に行動できないわ。じゃあね~」
そう手を降って、その場を去っていく魔女エーデルだけれど、それを見ながら僕はポツリ。
「言っていることはまともだけれど、魔女エーデル、何だか無茶しそうな気がする」
「その判断は正しいわよ~、というか多分あの子が本気でノリノリで倒したらここの採掘場、消失するかも。それにここにいるの、貴方達や魔女エーデル、どうでも悪役だけじゃないのよね」
空から降ってきた女神様の声を聞きながら、お互いに顔を見合わせて僕たちは頷き、
「魔女エーデルが無茶しないようについていきます」
「よろしくね~。あ、そうそう。そのスコップで殴ると人を傷つけないで倒せるわよ~」
「すっごい便利ですね。ではおもいっきり使わせてもらいます」
そう僕は答えて魔女エーデルを追いかけるように僕たちは走りだしたのだった。
途中、はぐれたらしい彼らの仲間が現れたのだが、
「よーし、ていや~」
「今度こそ魔法の失敗なんて醜態は晒さないわ」
とのことで、リンとアオイが彼らを倒し、次はミナトに先手を打たれ、その次はヒナタ姫とミミカの二人で倒して……といったように次々と倒されてしまい、僕の出番がない。
ここにいる人達全員、戦闘能力が高いんじゃないかと思いつつ、
「スコップの力を試す機会がない」
「まあまあ、ぶっつけ本番でいいんじゃないのか? それに見つけたらすぐ倒さないと反撃されるし」
ミナトの答えを聞きながら、僕としては不条理なものを感じつつ更に深くに向かう。
灯りは灯ったままなのでそれほど難しくはない。
やがて、開けた場所にやってきて、それと同時に魔女エーデルが先ほど逃げていった人物らしき人達に取り囲まれているのを目撃したのだった。




