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招かれざる客達

 事前にとっておいた宿は既に満杯だった。

 魔法学美術館に行く前にこの宿を予約しておいたのは、正解だったようだ。

 そう思いながら宿の主人に鍵をもらい、部屋に向かう。


 事前に重い荷物はスコップ以外すべてここに置いて移動したのである。

 もちろん貴重品は持ち歩いていた。

 そして現在、僕は近くのスーパーでスープとパン、鶏肉の唐揚げを購入して部屋で食事をとっていたりする。


 この辺りのお店は外に出ている看板を見る限りとても値段が高い。

 なので旅行者は自分で料理をしたり惣菜などを購入して済まして節約する場合が多いそうだ。

 というわけで僕もそれを買ってきた。


 机の上に並べられた、野菜スープは今買ってきたばかりなので暖かく湯気が出ている。

 パンはサクサクでバターをたっぷり使ったものが丁度焼きたてて出てきたので、迷わず購入したものだ。

 しかも唐揚げも丁度揚げたてを購入できた。


 つまり全てできたて熱々。

 なのでそのサクッとした食感を楽しみたいと肉にフォークを伸ばす。

 いい音がすると思って口の中に放りこむと、旨味と程よいスパイスの効いた肉汁が舌の上で踊った。


「上手い、もう一個!」


 もぐもぐぱくぱくごくごく。

 味付けも程よい塩加減でとても美味しい。

 そう思いながら僕は食事をする。


 一人で。

 ……。


「何だか寂しい気がする」

「そうなの?」

「そうなんです」


 ぼやいたら返事が帰ってきた。

 女神様の声だったので僕は食事をやめて、


「明日から魔女エーデルと一緒に材料を探しに行きます」

「そうね。その材料も都市の近郊で採れるものばかりだからよかったわね。ただ……」

「ただ?」

「邪魔する人達もいるかもだけれど、ユウトちゃんなら大丈夫よね。いざというときは盾代わりにもなるから、その“万能スコップ”」

「そうですね、そうやって使えばいいのか……ありがとうございます」


 そうお礼を言った僕。

 女神様がどういたしましてと言ってそれ以上聞こえなくなったので、仕方がなく僕は、むっしゃむっしゃと食事をしていたのだがそこで、こんこんと部屋の扉を叩く音がする。

 現在食事中だったので、


「ただ今出ることが出来ない状況になっております。しばらくお待ちください」


 と答えてみた。

 とりあえずこの熱々の食事だけでもしたかったのである。

 だがそこで僕の部屋の扉が蹴破られた。


「姫様をお待たせしようとする不届き者の意見など聞いていません」

「扉の修理費は払ってください」


 今金具がぽぽーんと飛んだのを僕は目撃したのだ。

 なのでそう告げると、以前あった日当姫のメイドのミミカは、


「その程度のはした金、いくらでも払えますわ」

「そうなんですか。それで、今日は入口の扉のないまま僕に眠れということでしょうか」

「……この程度の大工仕事、私だって出来るわ」


 そう言って扉の方に向かい、入れ違いに顔を布で隠した人物が一人。


「お食事中、失礼いたしました」

「ヒナタ姫?」


 声からすぐに分かったが、こんな外が暗くなってやってきたのは、昼間に話をしたヒナタ姫だったのだった。


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