次の日の約束
魔女エーデルは嫌々と言ったように、話しだした。
「いい加減私も大人気なかったなと思ったのよ。いつまでも私が悪く無いってわけにもいかないなって。それでいざという時のために、前にその“祝福”を解除する道具を庭の端っこに埋めておいたんだけれど……」
「けれど?」
「箱の中が空になっていて」
「……」
「本当だってば! 確かにあの箱のはずなのに中身がなくなっていたの! 私のお家は結界が張ってあって誰も入れないようになっていたし侵入者も許したことがなかったのに」
嘆くように言うエーデルだが僕は思うに、
「あの、スライムが飛んできたんですよね?」
「……そうよ、結界張ってあったのにそれを突き破って私の寝室に……これだからアルバ村人間は嫌なのよ。あいつら絶対おかしいわ……まてよ?」
そこで魔女エーデルは僕をじっと見て、
「そう、犯人はアルバ村の住人、つまり貴方よ!」
「僕ですか?」
ビシッと指差し僕に宣言した魔女エーデル。
そんなことを言われてもと僕が思ったけれど、そこで魔女エーデルが深々と嘆息し、
「まあそれは冗談として、私の屋敷に埋めたものがなくなるなんて、アルバ村の住人か、お姉ちゃんが何かをやらかしたくらいしかなくなる理由が思い当たらないの。でもだからってそれを探すのもきついから、材料を探すことにしたのよ」
「そうなのですか」
「そうそう。それにお姉ちゃんは全部知っているんじゃない? 知っていて私が酷い目にあっているのを見て、ニヤニヤ笑っているのよ。性格が悪い……ではなくて、全部見えているから」
そう嘆息した魔女エーデルだが、そもそも女神の妹なら、何でこの世界にいるのだろうと僕は思う。
そしてその女神様と同じような場所ならば色々見えるらしい? ので、そうなってくると、
「女神様のいる場所に一度エーデルさんも行って、何処にあるか探せばいいのでは?」
「無理よ。この世界創るのも維持をするのも含めて面倒くさいから全部お姉ちゃんにお任せして、人間たちが作って面白いもの見て遊んで、食べて、だらだらしていたら、少しは手伝いなさいってここの世界に放り出されて以来、戻れないのよね」
「……ちなみに戻ったらどうするんですか?」
「もちろん以前のような気楽な生活をして、後自分好みの男を手に入れてやるわ! 逆ハーレムよ!」
あっさり答える魔女エーデルを見て僕は、多分この人はまだしばらくこの世界にいることになるだろうという確信じみた予感を覚えながら、
「でも呪いを解くにはいくつか必要な材料があるんですよね?」
「ええ、都市で購入できるものは一通り集めたから、明日からその材料を集めに行くのよ」
「じゃあお姫様の呪いを解くので僕もついていきますね。お手伝いします」
「……」
「どうかしましたか?」
「いえ、誰かと一緒に何かをするのって久しぶりで」
僕はそれ以上何も言うことが出来ず、とりあえず僕は魔女エーデルと約束をするとそこでリンが、
「あ、私も付いて行っていい?」
「いいけれど、貴方、何だか“変”じゃない?」
「ああ、私ね、女神様の暇つぶしで、魔女エーデルを見つけるゲームをしていたの。でも見つけたからそのゲームは終了で後は好きにしていいらしいから、面白そうだからついていこうと思って」
「そうなの? お姉ちゃんで遊んでいるくせに、む~。……いいわよ」
リンに答えるとすぐにアオイとミナトも一緒に来るという。
春休みで暇だし面白そうだからという理由らしい。
そんなこんなで僕達は明日の約束をして、その日は別れ、僕はアオイの魔法学説明から逃げ切れたのだった。




