仲間!
とりあえずドS村の住人に数えられてしまった僕は、その誤解を払拭すべく、
「いえいえ、僕達は素朴な村人です」
「……いえ、そう言っておいて、油断をしたら酷い目にあうって知ってるし。どうせ今だって、スライムなんて低級の魔物は倒すの面倒臭いからってどこかに打って遊んでいるんでしょう! そのせいで何度も何度も何個も何個も私の家の屋根に穴が開いて、しかも眠っている所を這われて……」
わなわなと震える顔を赤くした魔女エーデルに、僕は言い訳できなかった。
だってこの前もなんっか打ち返したし。
で、でもたまたま偶然そういう時があったのだろうと僕は思いながら、
「きっと偶然ですよ。大体、さっきお姉ちゃんて言っていたから、女神ティラスの妹様なのですか?」
「……そうよ。ま、私は不出来で落ちこぼれの妹だけれどね。よく魔法も失敗するし」
どうやら彼女も魔法をよく失敗するようだ。
そういえば魔法の失敗といえばと思っていると、そこでミナトがアオイに、
「おい、魔女エーデルはよく魔法を失敗するらしいぞ? アオイ」
「何で私に言うのよ」
「だってよく失敗していたじゃないか」
「あ、あれは……い、いざという時失敗しないからいいのよ!」
アオイは自分で失敗しやすいことを認めてしまったが、そこで魔女エーデルがくるりとアオイを見て、
「仲間!」
「違います!」
「ナカーマ」
「わ、私はいざというときは成功するもの。貴方と一緒にしないでください!」
「仲間……」
「……ま、まあきっと努力をすればそのうち上手くいくようになるでしょう」
「そうよね、努力すればどうにかなるわよね!」
と嬉しそうに自身を取り戻した魔女エーデルだが、そういえばこの人何歳なんだろうなと僕は思ってそれに関してはそれ以上考えるのをやめた。
代わりに聞きたいことがあって、
「あの、魔女エーデル。何でヒナタ姫にあのような呪いを?」
「……ふられた腹いせもあったけれど、一応祝福のつもりだったのよ」
「祝福?」
「そう、女の子同士って色々大変だから。でもその副作用が強すぎてああなって……」
「……」
「だ、だから私悪くないし、その場から逃げてしばらく逃げ回っていただけで」
必死で言い訳をする魔女エーデルだが、僕は思うところがある。
「あんなに美人なのに可哀想ですよ」
「……何であの子の本当の姿が見えているの? やっぱりアルバ村出身の人間だわ」
「でも男の子から逃げられるのってどうなんでしょう」
「……で、でも女の子一杯周りに集まって、百合ハーレム状態だし」
「でもお姫様鬼ごっこをしていた時、凄く悲しそうでしたよ? 僕が見えるとわかった時、嬉しそうに抱きついてきましたし。……その祝福、解いてあげられませんか?」
そう告げると魔女エーデルは、ふっと視線を僕から逸らした。
幼馴染のユナがなにか隠し事をしている時の表情だ。
なのでとりあえず、責めるようにジーっと無言で見ていると、
「わ、わかったわよ、言うわよ。……その呪いを解くアイテムを無くしちゃって、原料を集めるために今、私はこの都市にやってきたの!」
魔女エーデルは小さく呻いてそう告げたのだった。




