酷い話ですね~
そんなわけで、休憩所にすぐに向かった僕達だが、
「な、何よこれ! こんなのやっていな……うぎゅ」
「はいはい」
先ほどから五度目になる魔女エーデルの悲鳴を聞きながら僕は手を引っ張って行く僕。
特別展という事もあり、大量の今までの歴史的出来事が並べられているのだが、そのボードを全部気になってちらちら見ている魔女エーデルは時々そんな風に悲鳴を上げている。
その度にこうやって僕は手をひいていたのだが、
「酷い、酷いわ。途中関係の無い事も全部私のせいにされてる」
「酷い話ですね~」
「しかも私の名前をかたって悪いことした奴らを全部ぶっ潰していたのに、その悪い奴らがやった事も私のせいにされてる!」
「酷い話ですね~」
「……こんな特別展示なんて代物、消し去ってやる」
「どうやって?」
「……脅迫状を送る?」
「燃やしたりしないんですか? 絵とかそういうものを」
「それをやると怪我人が出ちゃうかもしれないし。でも地味な嫌がらせだと、悪臭を振りまいておいたり、やってきた人達に猫耳が生える呪いとかになるのよね。……まずは悪臭でいくか」
魔女エーデルが一人頷いていたのは置いておくとして。
とりあえず飲み物を購入してから席に着く。
彼女の帽子のツバが僕の頭に当たった。
「痛いです」
「し、仕方無いじゃない」
「その帽子暑そうですし脱いだらいかがですか?」
「! 熱くないわよ! 冷房も効くし魔法防御だって出来ておしゃれな時代を越えた一品なんだから!」
「……そうですか」
とりあえず大事らしいので適当に受け流し、その帽子に当たらない場所に移動した僕はそれから、
「ところでどうしてここに? そういえば魔女エーデルは都市にいるわよ、っと女神様は言っていましたが」
「あのバ……そう、お姉ちゃんがそんな事を言っていたの」
バと言いかけて周りを見回してから魔女エーデルはそう言う。
先ほどの様に魔道書が落ちてくるのが嫌なのだろう。
因みに先ほど落ちてきた魔道書はアオイが手に入れた。
コピー本なので良いんじゃないと魔女エーデルに言われたので。
ただコピー本というと何となく、違う物をイメージしそうになるが。
さて、それはいいとして。
「それで私をどうして探していたの?」
「お姫様の呪いを解くためです」
「どうして赤の他人である貴方がそんな事をするのかしら」
「春休みに何かでっかい事がしたいと言ったら女神様にスコップをもろって、そう誘導されました」
「……」
無言で魔女エーデルは僕とスコップを見比べて、
「このなんだかすごい魔力を感じるスコップをくれたの? お姉ちゃんが? 坊やに?」
納得がいかないというかのようにまじまじと僕を見る魔女エーデル。
そんな風に綺麗な女の人に見られると何だか照れるな~と僕が思っているとそこで、
「うーん、普通に見える。良く分からない。誰か特別な人の血をひいているから手を貸したのかしら。……ねえ、貴方、ユウトといったかしら。何処が出身地?」
そこで冷や汗をたらす様に魔女エーデルが僕に聞いてきた。なので、
「アルバ村です」
その一言で魔女エーデルは凍りついた。
一分程度微動だにしなかった彼女だがそこで、
「あのドS共の村じゃない! あんな無茶苦茶な人達の相手なんてしてられるかぁあああ」
魔女エーデルが悲鳴を上げて逃げようとしたので僕は、とりあえずまだ話す事があるので彼女の手を握り逃げられないようにしたのだった。