何でバレ……
僕が彼女を捕まえながら告げると、彼女はすっと目を細めて、
「貴方、誰?」
「あ、ユウトといいます」
「……聞かれて素直に答えてしまう純朴さは好感が持てるけれど、どうして私の顔を知っているのかしら? 絵にしろ何にしろ気を付けていたはずだけれど」
そんな何処か冷たい声で問う彼女の顔を見つつ、僕は空いている片手で先ほどの写真の場所を指でさしながら、
「あそこにドヤ顔で映っている写真が飾られています」
「……」
その一言で彼女は沈黙した。
恐らくは凍りついたのだろう。
しばらく無表情になって微動だにしなかった彼女は、唐突に勢いよく僕が指さす方を見ながら走りだした。
あまりにも早く走るので引っ張られるように僕もそちらに向かう。
そして彼女は真っ青な顔になってアオイ達を退けるようにしてその写真の前にやってきて、
「な、何でこれがこんな所に……。他の人には見せないって約束で、持ち主が死んだら燃やしてくれって……」
わなわな震えている彼女だが、そこで丁度写真の下にある説明文を読み終えたらしいミナトが、
「えっと……下の方に説明が書いてあります。
“小説家マユタ氏が生前に所蔵していた日記帳に張り付けられた写真を複製したもの。
氏は生前、この日記帳の他にも未公開の小説を複数所持しており、それを友人に預けていて自分が死んだら燃やして欲しいいと言っていた。
だが、氏の死後、こんな素晴らしい物を燃やしてしまうとはもったいないとその親友が思い、氏の家族の了承の元出版された。
その内の一ページに記載された話と写真から、魔女エーデルの本当の姿をうつした貴重な写真といえる”
だそうです」
「な、なんで、こんなのでバレ……」
真っ蒼どころか、砂になって崩れ落ちてしまいそうなくらいに魔女エーデルは凍りついていた。
そこで、はっと魔女エーデルは、そのミナトの顔を見てアオイを見て次にリンを見てぎょっとしながらも、はっとしたように僕を見た。
「貴方、何で私の本当の姿を認識できるの?」
「? さあ」
「……背中になんだかすごい武器っぽい何かを感じるわ。それのせい!?」
「あ、これ伝説の“万能スコップ”なんです。女神様に貰いました」
「お姉ちゃんに!? 何時も何時も何時も余計な事ばかりしやがって、あのババ……」
そこで何処からともなく本が降ってきて魔女エーデルの頭上に落ちた。
「いたいぃいいいい」
悲鳴を上げる魔女エーデル。
涙目だがこうやってみると美人だし可愛い感じでそんな凶悪そうに見えない。
そこでアオイ、ミナト、リンがはっとしたように、
「「「魔女エーデル!」」」
「な、何でいきなりばれて……このっ、えいっ」
魔女エーデルは何かをしたようだけれど、僕にはよく分からない。
けれどアオイが目を瞬かせて、
「あ、あれ? 違う人になっちゃった?」
「やっぱりこの魔法は効いているわね。なんでこの坊やには効かないのかしら」
愚痴る様に魔女エーデルはそう呟いて僕を見る。
けれどそこまで人が多いわけでもないがいつまでもここにいると邪魔なので、
「あの、お話を聞きたいのであちらの休憩の所でお話ししてもかまいませんか?」
「そうね、貴方にも私は興味があるからよくってよ」
そう、魔女エーデルは悪戯っぽく笑ったのだった。