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魔女と遭遇

 “歴史の動乱に、彼女の姿あり! 伝説の災厄! 魔女と呼ばれた彼女の奇跡を描く特別展示”。

 白い看板に大きく文字が描かれている。

 しかも飾りまで付けられている特別な感じである。が、


「入館料、5コールド」


 料金の書かれたそれを見ながら僕は呻いた。

 この料金であれば先ほどのジュースが、2つ飲める。

 どうしようかと僕が迷っていると、


「別の料金設定がされているのよね。どうする? 行く? 行かないなら、ユウトに私から説明をさせてもらうけれど。そして後で展示物は見るの」

「せひ見に行きましょう!」

「……」


 アオイが冷たい目で僕を見ているが、あの苦痛……ではなかった、大変な感じな目に遭うよりはずっとましである。

 リンとミナトはプッと噴き出している。

 だったら少しでも止めてくださいと思いながら、お金を支払い特別展の中へ。


 中はオレンジ色の光りに包まれた薄暗い場所。

 古い本や手紙のようなもの、説明のボード、魔道具などが展示されている。

 少し中に入ると大きく紙がはられていて、そこには、“あの魔女の悪役っぷりを描く! そう、それはあの夏に始まった……”と大きな文字が入っていて、その後に年表が書かれているらしい。


 だがそれよりも気になるのは、その前でプルプルしている人がいることである。

 以前すれ違いざまに見たあの妙な格好をした女性だ。

 黒いとんがり帽子に、長い金髪。


 震えているためか前髪が揺れて、青い瞳が見える。

 この人はどうしたんだろうなと思っているとそこで、


「ほら、ユウト、早くこっちにこいよ」


 何故か目を輝かせてミナトが僕を呼ぶ。

 彼の目の前には一枚の絵が飾られている。

 横から見るとよく見えないが、近づいて正面から見ると、


「すごい美人」

「だろう! 伝説の魔女ならぬ美女! それは正しそうだ!」


 といったように僕が喜んでミナトと見ていると、そこで冷たい声でアオイが、


「その絵は偽物よ」

「……え?」


 無抜けな声を上げたのは、僕とミナトだった。

 そして、そんな僕達にアオイは、


「その魔女は自分が美しく書かれないと許せなかったらしいの。だから相当美化されていると言われているわ」

「……でも今回の展示では、魔女を写した貴重な写真の複製もあるんだろう? それに合わせた絵を持ってきたってパンフに書いてあったぞ?」

「……ふ、じゃあその写真を見てみましょう」


 何やらミナトとアオイの間で戦いが始まったようだ。

 そしてそんな二人に黙っていついていくとそこには黒白写真がある。

 黒いとんがり帽子をかぶった女性が、ドヤ顔でこちらを見ている。


 とても美人ではあるのだが、


「な、やっぱり美人じゃないか」

「う、うぐっ」

「自分の持つ知識に溺れたな、アオイ」

「うぎゅっ」


 といった会話をしているのを聞いた僕はその二人は放っておいて振り返り、代わりに元きた道を歩いて戻る。

 まだ彼女はそこにいた。

 なのでとりあえず腕を掴んで逃げられないようにして、


「きゃあ、な、何するのよ」

「えっと、魔女エーデルさんですよね? 写真と同じ姿だし。ちょっとお話を聞いていいですか?」


 その言葉に彼女は、さっと顔を青ざめさせたのだった。 


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