女神様の知っている“事実”
何処からともなく聞こえた女性の声。
周りを見回しても人影はない。
僕としてはあの教会で聞こえた声、つまりスコップをくれた人と同じ声なので、あまり不思議さは感じなかった。
だが周りの女子達(リン以外)はそれが恐ろしいようだ。
すぐさまメイドのミミカが部屋の出入口となるドアに近づき勢い良く引っ張る。
だが、開かない。
「く、ドアが駄目なら窓を」
焦ったように窓に近づき開こうとするが、外の光景は見えるものの窓が開かず、出ることが出来ない。
「く、このっ、このっ」
ミミカが窓を押したりするるけれど軋む音すら出来ない。
そこでクスクスといった笑い声が聞こえて、
「無駄よ、無駄。現在貴方のいるその部屋を空間的に断絶させているから、外にでることは出来ないわ。この私、女神ティラスの言葉に嘘はなくてよ」
「これはもう、女神様を騙る、魑魅魍魎の仕業!」
ミミカがそう宣言するとともに、何処からともなく本が現れてミミカの頭にあたった。
それが痛かったらしく頭の当たった部分を手で撫ぜる。
一方その本を目撃したアオイががたっと席を立つ。
「それは伝説の魔導書“クッキーマジック”。まさかこんな所で出会えるなんて……貰ってもいいですか?」
「いいわよ、コピー本だから好きにしていいわよ」
「ありがとうございます、女神様!」
幸せそうに本を拾い上げて抱きしめるアオイ。
魔法使いにとってとても貴重なものなのだろう。
けれどミミカは余計納得できなかったらしく、
「こんな事をするのならますます……」
「じゃあ貴方達しか知り得ない情報をバラすわね。実は貴方がメイドとして選ばれたのは筆記試験ではなくて、ヒナタ姫の姿を見てすっごい美少女とつい声に出し、どんな髪の色かも正確に表現できたために即座に採用になったのよね~。ちなみに筆記試験の点数は15点……」
「はわわわわわわ」
ミミカが顔を真赤にして頭を抱えるように座り込む
そのまま沈黙してプルプルしている。
これでどうやらミミカは静かになったようだ。
なので僕としては聞かなければならないことがあったので、
「それで女神様、これからどうしましょうか」
「そうね、お姫様の呪いをとくために魔女に会いに行くのが一番かもね」
「魔女ですか? 今その人は何処にいるんですか?」
「多分あの子、今都市にいると思う。理由はまだ秘密にしておいたほうが面白そうだから、そうしておくわね」
適当な感じに女神様がいう。
このまま観光がてらうろついて探すのでいいのですか? と僕が聞くといいわよと女神様が答える。
なので都市観光が僕の酒の行動になりそうだなと僕が思っているとそこでヒナタ姫が、
「あの、では、私の呪いを解いていただけれのですか?」
「ええ。そろそろ特手伝いをしてもいいかなと思ったから、ちょうどユウトちゃんが春休みにでっかいことがしたいって言うから、その子に話を持っていったのよ~」
「よろしくお願いします、ユウト様」
そういったヒナタ姫が僕に近づいてきて手を握る。
何となく頑張らなくちゃいけない気がした。
と、そこでリンが、
「どうしましょう、私も付いて行ったほうがいいかな?」
「ん? リンは好きにしていいわよ? そういう約束だったし」
「じゃあ、付いて行ったほうが面白そうだったのでついていきます」
そう答えるリンだけれど、僕はリンが女神様と知り合いだなんて知らなかった。
あとで詳しく聞いてみようと僕が決めていると、
「そうそう、最後に付け加えていくけれど、悪いことを考えている人達もいるから、適当にのしちゃってね」
がんばってね~、と言った軽い言葉とともに、女神様の声はそれ以上聞こえなくなったのだった。