表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

手紙でつながる人々

拝啓 北海道のお姉さんへ

作者: 白波



 夏が近づいて、たくさん来る海水浴客のために準備が始まって騒がしくなってきた砂浜の近くの町に住んでいるみくちゃんは、北海道に引っ越してしまったお姉さんに手紙を書いていました。




 *




 北海道のお姉ちゃんへ


 こんにちは。元気にしていますか?


 私は元気です。


 北海道は寒いですか?


 カニは食べたの? それとも、畑で採れたじゃがいもを食べてるの?


 北海道の食べ物はおいしいとお母さんが言っていました。


 もし、よかったら教えてください。


 よかったら手紙をください。待っています。


 みくより




 *




「よし!」


 手紙を書き終えたみくちゃんは、その手紙を封筒に入れて家を出ました。

 家の近くだとどこにポストがあるのか考えながら、みくちゃんは踏切を渡り、海沿いを歩いていました。

 これまでは、ずっと手紙をお姉さんに渡していたというだけだったので、みくちゃんはポストの位置を覚えていなかったのです。


「どこだろう?」


 近所の神社に夏しかやっていない海の家、大きな灯台や小学校にもいったけど、赤いポストは見つかりません。


「おかしいな。どこにあるんだろう?」


 みくちゃんは一生懸命考えます。

 ですが、ポストの場所は思い出せません。


「そうだ。おまわりさんに聞こう!」


 みくちゃんは商店街の近くにある交番の方へ歩き出しました。




 *




 みくちゃんが交番のほうに歩いていくとネギやキャベツが入っている袋を持った隣のおばちゃんがやってきました。


「あら、みくちゃんどうしたの?」


 隣のおばさんは、みくちゃんと目が合うようにしゃがんで話しかけました。

 みくちゃんは、ポケットから手紙を出しました。


「お手紙を出したいのにポストがどこかに行っちゃったの」

「あら、困ったねぇ」


 隣のおばさんは、みくちゃんと一緒にポストの場所を考えました。

 少し経つとおばちゃんは、ポンと手をたたいて言いました。


「そういえば、商店街の向こうにある公園の前でポストを見たよ」

「そうなんだ。ありがとう!」


 みくちゃんは、頭を下げてから商店街の方へと歩き出します。


「がんばってね!」


 応援してくれたおばあさんに手を振りながらみくちゃんは、商店街の向こうにある公園を目指します。


 お母さんとよくお買い物で来る商店街では、いろんなお店の人に声をかけられます。


「おや、みくちゃん。今日はどうしたの?」

「お手紙を出しに行くの」

「そうかい。もう少しだよ。がんばってね」

「うん!」


 八百屋のおじさんとお話しした後に魚屋の前を通ると魚屋の奥さんが話しかけます。


「八百屋から聞いたよ。お手紙出しに行くんだって?」

「うん。ポストに入れて郵便屋さんに北海道まで届けてもらうの」

「北海道まで? それじゃぁ、郵便屋さんに頑張ってもらわないとね」

「うん!」


 魚屋の奥さんとバイバイしたみくちゃんは、公園に向かっててくてくと歩いていきます。


「やぁみくちゃん!」


 次に話しかけてきたのは、お姉さんと同じ学校に通っていたお兄さんでした。


「こんにちわ!」


 みくちゃんはあいさつをして頭を下げます。


「こんにちわ。今日はどうしたの?」

「えっとね、お手紙を出しに行くの」


 みくちゃんが答えるとお兄さんはへーそうなんだ。と言いながら、にんまりしていました。


「誰に出すの?」

「えっと、北海道に出すの!」


 お兄さんは、少し考えた後にこういいました。


「なるほど、中町なかまちに出すのか……俺もあいつに手紙を出しに行くところだから、一緒に行くか?」

「うん!」

「それじゃ、行こうか」


 お兄さんは、みくちゃんの手を引いて歩き出します。


「お兄ちゃんはポストの場所わかるの?」

「もちろんさ。だって、佐々木以外にも手紙を出すからな」


 お兄さんは、得意げにポケットから手紙を出しました。

 封筒には、丁寧な字で“中町さんへ”と書かれていて、北海道から始まる住所が書かれていました。


「それじゃ、一緒に行こう!」

「そうだな……せっかくだから、一緒に入れておくか?」


 みくちゃんの前に封筒を開けた手紙が出されて、みくちゃんはそこに手紙を入れました。


「ありがとう」

「いいよ。これで、確実に手紙が届くわけだからな」


 実は、みくちゃんのお手紙には住所は書いていなくて、“北海道に住んでいる中町のお姉ちゃんへ”とだけしか書かれていなかったのです。

 だから、このままでは届かないと心配したお兄ちゃんがちゃんと住所の書いてあるお兄ちゃんの手紙と同じ封筒に入れてくれたのです。


「さてと、さっそくポストに向かおうか」

「うん!」


 お兄さんとみくちゃんは、手をつないでポストへ向かいます。


「ほら、ポストが見えてきたよ」

「本当だ!」


 お兄さんが指差す先には、真っ赤なポストがありました。




 *




 お手紙を出してから何日かたった時、家のポストに“みくちゃんへ”と書かれた可愛い封筒が入っていました。

 裏を見ると、“北海道のお姉さんより”と書かれていていました。


「お母さん! お返事来たよ!」


 みくちゃんは、元気いっぱいにそういいながら家に入っていきました。




 *




 みくちゃんへ


 こんにちわ。この時期になっても北海道はとても寒いですが、私はとても元気です。


 カニはまだ、食べていませんが、おばあちゃんの家の畑で採れたじゃがいもで作ったじゃがバターを食べました。とてもおいしかったよ。


 みくちゃんは、どうしているの?


 よかったらまた、手紙をください。


 北海道のお姉さんより



 久しぶりの手紙シリーズです。


 なんだか、みくちゃんが当初の設定より幼くなってきている気が……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ