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鬼退治の報酬は・・・?

挿絵(By みてみん)





「瑠璃、まずは私から仕掛けるわ!」


「はぁい」



このボスは非アクティブモンスターの為、プレイヤー側から

攻撃を仕掛けない限りは攻撃してこない設定になっているらしく

瑠璃よりも攻撃力が高い咲耶が渾身の一撃を振舞う。


だがその渾身の一撃を受けても鬼は怯みすらせずに

ギロリと咲耶へと視線を向けた。


『・・・軽い』



咲耶がボスに近づいたおかげでボスの名前が表示され、

ボスモンスター酒呑童子しゅてんどうじがイベントらしきセリフを喋りだす。



「うそ・・・」



酒呑童子が喋った事と与えたダメージの少なさに咲耶が驚き、

動きを鈍らせてしまったところに酒呑童子からの反撃が放たれる。



「ぐっ・・・あぅ・・・」



それをまともに受けた咲耶は軽々と吹き飛ばされ、先ほど夢魔が

潜んでいた影を作り出していた建物へと叩きつけられた。


それを見た瑠璃は表情を変えぬまま酒呑童子へと向かうが

放たれる殺気と怒気は先ほどまでとは比にならない。


PT設定になっている為まだ攻撃を仕掛けていない瑠璃に

対しても酒呑童子が拳を振るうが、瑠璃のスピードは

全プレイヤーの中でもトップクラスを誇る。


酒呑童子の攻撃を軽々と避けて背後へとまわりこんだ瑠璃は

刀の攻撃スキルをその大きな背へと放つ。



「いきますよぉ―雪月花せつげっか!!」



光速で放たれた鋭い斬撃は、その速度と武器の性能によって

咲耶の攻撃力を上回る威力となって酒呑童子へと襲い掛かるが、

甲高い音と共にその斬撃は無残にも弾かれてしまった。



「あらぁ・・・これは倒せるんですかねぇ?」



瑠璃と咲耶の攻撃を受けた酒呑童子は堂々と仁王立ちしているが、

そのHPは先ほどと全くといっていいほど変わってはいない。


ついさっきまでは人数を集めて戦ったのにボス一人も倒せないのかと

周りで倒れているプレイヤーを嘲笑っていた瑠璃だったが、

実際に戦った今ではむしろよくここまでダメージを与えたものだと

思わず感心してしまう・・・それほど酒呑童子は強かった。



「咲耶ぁ動けますかぁ?」



ひとまず酒呑童子の攻撃範囲から離脱した瑠璃は高LVのプレイヤーすら

葬った一撃を受けた咲耶に心配の声色で問いかけるが、咲耶は大丈夫と

返した後に何かをジーっと眺めていた。


その様子を不審に思った瑠璃はすぐに咲耶の傍へと駆け寄り、

手元を覗き込むとそこにはチャットウィンドウに表示された

酒呑童子のセリフが並んでいた。



『人の子よ、童子切どうじぎりを持たずして我に挑むは愚かなり』


『ひ弱な人間如きが我ら鬼を討つなど夢語りに過ぎぬ』



それを見た瑠璃はよく喋るモンスターだと関心するが、

咲耶は何か思うところがあったのか瑠璃へと視線を移す。



「ねぇ瑠璃、貴女って確か刀をコレクションしてたわよね?」



突然の咲耶の問いかけに瑠璃は目を丸くするが、その後

自慢げに小さな胸を張ってそのとおりです!と答える。



「じゃあ今まで使ってた装備もちゃんと取ってあるかしら?」


「ありますよぉだって私のアイテム袋はほとんど刀ですからぁ」



それを聞いた咲耶は笑みを浮かべ、耳を貸してといって

瑠璃を近くに抱き寄せた。



「いいかしら瑠璃、一つ案があるのだけれど」


「ん・・・ふぁ・・・♪」



だが近すぎたせいか咲耶の耳ともで囁くような声に

瑠璃は幸せそうに身をよじらせるだけで、とても話を

聞けるような様子ではないようだ。


一瞬小突いてやろうかと考えた咲耶だが、今回はいきなり

瑠璃を抱き寄せた自分に非があるのでまずは瑠璃を離す。


すると瑠璃は名残惜しいといった風に寂しそうな顔をするが、

咲耶は瑠璃の頭を撫でながら思いついた案を話す。



「確か貴女、私と出会った時に即死効果を持つ刀を使っていたわよね?」



そう言われて瑠璃がその当時の記憶を辿ると、確かに咲耶に

白百合を貰う前は【童子切】という名の『重鎧を纏っていない

相手ならば急所をついて即死させる』刀を使っていた覚えがあった。



「使ってましたねぇ」


「じゃあそれを使ってあのボスを攻撃してみましょうか」


「えぇでもぉあれ白百合より攻撃力は低いんですよぉ?」



流石の瑠璃でさえ即死効果がボス系に通じないと知っている為、

なぜ攻撃力を下げる必要があるのかと咲耶に問いかけるが

咲耶は柔らかい笑みでそれに答えた。



「私の予想が正しければ大丈夫よ」


「うぅわかりましたよぉ」



普段なら咲耶に対して優位に立っている瑠璃だが

惚れた弱みというものだろう、今浮かべた笑みのように

優しく包み込むような咲耶の仕草にとことん弱い瑠璃は

装備ウィンドウを開き、童子切を装備した。



「さて、それじゃさっきと同じでいきましょうか。

 まずは私から仕掛けて、続いて瑠璃が仕掛ける形で」


「無理はしないでくださいよぉ」



無理をしていいのは私だけなんですからねと言う瑠璃に

咲耶は貴女にも無理をして欲しくないわよと返して

お互いに笑みを浮かべ、ボスへと再び駆け出す。


そして咲耶は酒呑童子へと龍牙を振るいながら

瑠璃へと一言、言葉を投げかけた。



「貴女の腕がみなもとの頼光よりみつに劣らないというところを

 私に見せてみなさい、瑠璃!!」











「意外とあっさり倒せちゃいましたねぇ」


「だから言ったでしょう?」



あの後―童子切で酒呑童子を斬りつけると初太刀で

肩からわき腹へと大きく斬り裂き、そのHPを大きく削れる事に

気づいた瑠璃は瞬時に酒呑童子を倒しきることに成功したのだ。



「でもなんで童子切で倒せるって気づいたんですかぁ?」



不思議そうに首をちょこんと傾げる瑠璃に、

咲耶はやっぱり知らないのかとその理由を話し始めた。



「あのボスの名前、酒呑童子って表示されてたでしょう?

 酒呑童子っていうのは昔話に出てくる鬼のことでね、

 源頼光という人に童子切で首を落とされたという伝承が残ってるのよ」


「ほへぇ」



着物を纏い刀を使う瑠璃は和風のデザインを好んでいるが、

どうやらその歴史や伝承に興味はないらしく感心しながらも

酒呑童子が消滅の際に残した宝箱を蹴り開ける。


瑠璃の蹴りを攻撃判定と認識した宝箱はその蓋を開くと

アイテムらしきものを残して消滅した。


咲耶はそれが犬耳じゃない事を期待ながら見ていたが、

瑠璃はきょとんとした顔で手に入れたアイテムを見てたので

気になってその手元を覗く。


そしてそれを見た咲耶もまた瑠璃と同じような顔をする、

アイテムに表示されたのは【プロテクトされています】という

名前だけで説明も何もないウィンドウだったのだ。



「これぇなんですかねぇ?」



瑠璃が手に持っていたアイテムを咲耶に渡してくるが、

プロテクト等で封印されたアイテムがあるなんて話は

咲耶もしらないし聞いたこともない。


恐らくは次のアップデート等で追加される予定の

未実装アイテムを誤ってドロップに設定してしまい、

それを入手してしまったのだろうと推測する。


咲耶はさてどうしたものかとしばらく迷った末、

もしかしたらアップデートの際に更新されて新しく実装される

レアアイテムに化けるかもしれないと瑠璃に告げながらそれを返すと

瑠璃は誕生日にプレゼントを貰った子供のような顔をしていた。


恐らく中身が何なのか楽しみで仕方がないのだろう、

そんな瑠璃の様子に咲耶も穏やかな笑みを浮かべている。



「さて、そろそろ戻りましょうか」


「そうですねぇ、犬耳は手に入りませんでしたけどぉ

 なんか面白いものが手に入ったので満足です」



どんなものに化けるのだろうかと二人は話しながら

瑠璃のホームへと足を運ぶのだった。












この蓬莱町には瑠璃が購入したホームと呼ばれる極小の

プライベートエリアがあり、その内装は和風の家の物で普段は

そこで二人ともだらだらと過ごしているのだ。


更にホームに入れるのは瑠璃とフレンド登録をしている

咲耶だけなので寝落ちや放置をしても安全な場所ともいえる。


ただ咲耶が寝落ちや放置などをすると瑠璃にこのゲームの

仕様上できる限りの手段で身体を弄ばれるので咲耶にとっては

完全に安心とは言いきれないのだが欠点である。



「いやぁ今日はけっこう疲れましたねぇ」



ホームに入るなり、いきなり畳の上に敷かれている

長座布団にごろりと寝転がる瑠璃。


瑠璃の着ている着物はかなり裾が短いので思わずそちらを

見た咲耶の目には純白の下着が見えてしまい慌てて顔を背ける。



「瑠璃、はしたないわよ」



咲耶にそう言われ、仕方なく座りなおそうとした瑠璃だが

その頬がほんのり赤くなっているのを見逃さなかった。


瑠璃はクスクスといやらしい笑みを浮かべて更に足を崩す。



「咲耶、見ましたね?」


「な、なにをかしら・・・っ!?」



瑠璃は何を見たかとは言ってないのだが、咲耶は慌てて

否定しようとして再び瑠璃の方を見てしまった為に

先ほどより開かれた足から太もも、下着までをしっかりと

見てしまい動揺を隠せなくなってしまう。



「別にいいんですよぉ?

 咲耶になら私の全てを見せてあげても・・・」



そう言いながら着物を崩しながら咲耶に擦り寄っていく瑠璃。


それに対して顔を真っ赤に染めながら後ずさる咲耶。


更にその咲耶を見て興奮が高まる瑠璃。


もっとも着物を崩したところでゲームの仕様上では下着姿までしか

脱げないようになっているので慌てる事ではないのだが、初心な

咲耶には十分な刺激だったのだろう、顔から湯気を出して倒れてしまう。



「あらぁちょっとやりすぎちゃいましたぁ?」



咲耶の初心な反応を見るのが大好物な瑠璃は、倒れた咲耶のキャラを

長座布団の上に移動させて寝かせると自分もその隣で横になる。

こうしていれば咲耶が目を覚ました時に再び可愛い反応を

見せてくれるからだ。


だが咲耶が起きる前に瑠璃も横になっているせいで眠くなったのか、

はわわと可愛らしい欠伸をしてそのまま目を閉じる。



「さぁて流石に私も今日は疲れちゃいましたからねぇ、

 少し休ませて貰うことにしちゃいますかぁ」






そして結局二人がその日のうちに目を覚ますことはなく、

実にゲーム廃人らしい生活をおくるのであった。

Q.たまに入る咲耶と瑠璃の謎のいちゃつきは必要なんですか?

A.ちょっと何を言ってるかわかりかねますね。

百合の絡みが嫌いな男の子なんでいないんですよ(´゜A゜` )

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