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モンスター襲撃イベント、そして瑠璃との出会い(前編)

挿絵(By みてみん)

和の街『蓬莱町ほうらいちょう

その賑やかな商店通りを歩く黒い女性と白い少女。


黒い女性―咲耶は女性の身でありながら170cmと高めの身長に

セミロングの黒髪、前髪は揃えられており服装も

黒をメインの軽装と長巻を身につけている。


白い少女―瑠璃は身長140cm程度でやや低めでありながら

腰より下まで伸びる長い白髪をなびかせており、

丈がミニスカートのように膝上までしかない

白い着物と刀を身につけていた。



「痛いじゃないですかぁ~私のHP赤く点滅してますよぉ」


「自業自得よ、あまり調子に乗るものじゃないわ」



瑠璃の黄色の瞳が恨めしそうに咲耶を睨みつけると、

咲耶の紫色の瞳がそれを更に睨み返す。


あの後、胸をひたすら揉み続けていた瑠璃の頭に咲耶が

平手打ちを1発くれてやると彼女は軽く仰け反り倒れたのだ。


それもそのはず、このゲームは最高レベルが99に設定されている中、

瑠璃のレベルが25なのに対して咲耶のレベルは倍以上の60なのだから。



「しかしこのゲームの仕様も相変わらずよね」



咲耶が自分の手を握ったり閉じたりを繰り返すと

それを見て瑠璃が口を開く。



「あぁ、フィードバックシステム・・・。

 私は便利だと思いますけど咲耶は嫌いなんですかぁ?」


「嫌いというか・・・このゲームのプレイヤーの質を下げる

 原因の一つがこのシステムなわけじゃない?」


「そうなんですかぁ?」



一般プレイヤーの間では周知の事実である事も、

自分が興味がない事は覚えてない瑠璃の記憶には

残っていないらしく咲耶はため息をつく。



「そりゃそうよ、さっき貴女が私にしてたような事が

 ゲーム内のいたるところで起きてみなさいよ」


「・・・天国ですねぇ」


「あのね、皆が皆女の子同士ならそりゃ貴女みたいな

 変態娘は喜ぶでしょうけど男だったらどうなると思うかしら?」



私の話を聞いた瞬間瑠璃はシャランと金属の擦れる音と共に

腰から愛刀えものである白百合しらゆりを抜いてケラケラと笑う。



「当然、速攻でPKプレイヤーキルするに決まってるじゃないですかぁ」


「つまり、今の貴女の状態が質の下がったプレイヤーな訳よ」



咲耶がそう言うと瑠璃はポンと手を叩いて納得する。



「なるほどぉ」



ちなみにこの世界では瑠璃は自分が質の低いプレイヤーだと

自覚しているし、咲耶もまたそんな瑠璃の連れとして

周りからあまりよくない目で見られているのも知っている。


だからこそ余計このゲームに使われているフィードバックシステムが

性質の悪いものだという事も理解できるのだ。


『フィードバックシステム』


利き腕でパソコンのマウスを持つように、包み込む形でそれを

持つ事で現実のように細かく自分のキャラクターを操ることが

できる便利すぎるシステム。


これを使うことにより先ほど咲耶が言ったように

ゲームの中だという事を利用してセクハラ行為を行う

男性プレイヤーが現れ、瑠璃のようにそれを嫌う

プレイヤーがそれをPKし続けることにより全体低に

プレイヤーの質が落ちてきているのが現状だった。



「まぁ気にしたら負けですよぉ、

 だってこの世界はもう悪夢なんですからぁ」


「そうね・・・あら?」



会話が一段落したところで咲耶が違和感を感じて立ち止まり、

それに気づいた瑠璃もまた足を止めた咲耶に振り返る。



「どうしたんですかぁ?」


「・・・そういえば今日はイベントの日だったわ・・・ねっ!!



瑠璃の問いかけに答える間もなく咲耶は手にした

長巻―龍牙リュウガを振るい瑠璃とは対隣を薙ぎ払う。



「ギッ!?」



すると咲耶に向かって飛びかかってきた狼のような姿の

下級モンスターが驚きの声をあげて両断され、

瑠璃は少し驚いた表情でそのモンスターの遺体を

ツンツンと白百合で突きながら言う。



「あら、今日ってモンスター襲撃の日でしたっけぇ?」


「私達こういう情報には疎いから気づかなかったわね」


「ですねぇ」



『モンスター襲撃イベント』

それは本来街の外やダンジョンにしか現れないはずの

モンスターが安全地帯であるはずの街中に現れるイベントで、

どこかにいるボスを倒さない限り延々と取り巻きである

雑魚モンスターを生み出すのである。


人によっては迷惑なイベントだが、ボスを討伐出来た場合

高確率でレアアイテムを取得できる上にかなりの低確率で

取り巻きからもレアアイテムがでるので積極的に参加する

プレイヤーも少なくない。



「どうしようかしら・・・瑠璃、貴女はボス討伐に行く?」


「そうですねぇ」



悩む瑠璃を眺めながら、咲耶はそういえば自分が持っている

龍牙は瑠璃がボス討伐で手に入れたもので、瑠璃が持っている

白百合は咲耶が取り巻きから手に入れたものであることを思い出す。


白百合はSランクのレアアイテムで龍牙はBランクの

レアアイテム、通常ではどちらも入手しにくいものだ。


レア度はPからP/S/A/B/C/D/Eまであり、入手何度としては

Pプレミアレアのアイテムはイベント等でしか入手できず

SはEの500万分の1程度のドロップ率とされている。



「(懐かしいわ・・・そういえばあの時初めて瑠璃と会ったのよね)」








視点:咲耶



高校卒業を間近に控えたある日、突然の事故で私は両親を失った。


別に仲良し親子というほどでもなかったし、もし私が親を

失ってもそれほど悲しくないだろうなと考えた時もあったが、

考えるのと実際にそれを体験するのとでは大きく違い

私は涙を流すことも忘れて頭の中が真っ白になる。


そのまま放心状態で過ごした私は気がつけば高校を

卒業しており、決まっていたはずの就職もふいにして

ついに引き篭もり生活を始めてしまっていた。


もともとネットをしながら毎日を過ごしてきた私は

新しく仕事を見つける気力も湧いてこないまま、

ただ親の保険金でだらだらと生きる毎日。


そんな私の目にふいに映ったのがナイトメアオンラインだった。



「ナイトメアオンライン、元の名前はドリームオンライン・・・か」



私はそのネットゲームの評価やレビューを見てみると、

初めはその完成度の高さや操作の自由性にまるで

夢のような世界だと書かれていた。


だた進むにつれて操作が自由すぎて好き勝手やる者が増え、

人の心の内の醜さを現すかのように夢は悪夢へと変わり

ナイトメアオンラインと呼ばれるようになったと書かれている。



「夢から悪夢・・・まさに今の私の事かもしれないわね」



ひょんな事からナイトメアオンラインに興味を持った私は

さっそく必要なものを買い揃え、その日の夜には

インストールも済ませてゲームを始めていた。


ゲームを起動するとタイトルにはドリームオンラインと

表示されているが、ゲーム内ではすでにナイトメアとして

通っているらしく私は見なかったことにする。



「新規キャラクター作成、名前は・・・」



もしこのゲームを気に入って長く続ける場合、ずっと

使用するキャラクターだけに念入りにキャラメイクを済ます。



「よし・・・それじゃ初めてみましょうかしら」



そして私は悪夢と呼ばれる世界に足を踏み入れたのだ。





皆様始めまして、百合姫シエナと申します。

前回はプロローグという事で、本編である今回から

後書きのほうを書かせて頂こうと思っています。

まぁ本編といっても1話あたりの長さはプロローグと

そう変わりませんが、もし1話あたりを長くして欲しい等の

ご要望があれば投稿が遅れはしますが対応するかもしれません。

それでは今後ともよろしくお願いします。

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