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  ゲーム

作者: GT

 勢いでできた作です。

 『ゲーム』の舞台へ移るまではそれっぽい導入部です。

 『ゲーム』の設定を読んでほぅ、とかへぇ、と思った方は後書きも読んで貰えれば幸いです。

 未だ日の光も見えない早朝、県道沿いにある某大手家電量販店前にはずらりと長蛇の行列が、シャッターの降ろされている店の前にある歩道の幅を、半分ほど占拠するように長く長く伸びている。

 其の列の中程に並ぶほっそりとした体格に、早朝に予期できる寒さ対策として着込んだ薄手のジャケットを羽織り、鼻を赤くしながら小刻みに震える男がいた。

 心の中で『寒い寒いこんな時間早く終われ早く太陽出ろ』と繰り返しながら、前方で本を読む集団に眼を向けたり、後方で携帯ゲームに没頭する大学生風の人物を、変わることの無い景色に見飽きたかのように盗み見たりしながら、其の後には時計を見て時間を確認するというお決まりとなった行動を繰り返していた。


『世界初! VR技術のゲームがついに解禁!』


 ふいに前方の集団が読む本のページに視線が吸い込まれる。

 未だハードの面でのコストから一般庶民には手が届かないVR環境の導入という現状で、今後市場を席捲するであろう『大衆向けの娯楽提供』という名を持つ、市場競争の急先鋒として最も需要のあるものであろう。

 そして、その情報公開がされたのがつい一月前。

 そのテスター募集の公募が家電量販店への委託を発表したのが先週。

 日時指定の発表と同時に店舗別に先着何名という情報が公開されたのが三日前である。

 そして、本日店頭にてチケット交付が行われる場所の一つがこの家電量販店という分けである。

 

 そんな情報の一部を載せている週刊誌に視線を向け続ける。

 『ゲーム』という太字での記載に、それに続く文字に視線を向けつつ自身の記憶にあるその続きを思い出して時間をつぶす。

 何度も読んだその週刊誌ではあるが、やはりここまで無為な時間が続くとそれを思い起こすだけでも期待と興奮で時間の経過を早く感じ、どことなくそわそわと、早く開けという思いが強くなるのを感じる。


 『ゲーム』


 未だタイトルも未定のまま、その内容だけはどのようなものになるかという方向性だけは示されている。

 無人のフィールドにて、プレイヤー同士での頭脳戦。

 派手な演出は未だこれまでの3D技術を模倣しつつも完成に至らない現状であり、未だそれがVRゲームへ導入されるまでの目処は付いていない。

 そんな中で、シンプルではあるがVRの体験ができるとなった今タイトルには、熱狂的なまでの歓迎と、圧倒的な期待を持って全国のゲーマーに支持されていた。


「えー、大変お待たせいたしました! もう間も無く開店の時間となります! 注意事項と致しましてお知らせします! 一度の入場は十名づつとなり、係りの者の声に従い、次の入場という手順をお願いしております! 『ゲーム』の情報展示ブースは当店三階の約半分のスペースを使い、大々的に行うこととなっております。

 『テスター応募チケット』についてですが、混乱を避けるため別室を設けております。

 入店後まっすぐお進み致しますと方向指示のある看板が御座います。そこで応募に必要な諸事項をご記入いただくことで手続きは終わりです。先着順となっておりますので、ご応募を戴くお客様には三階へと上る前に其方へと足をお運びいただくことになります。


 以上大変長らくお待たせしました! それでは開店となります! 先頭に御並びお客様からご入店お願いします!」


 大歓声に負けじと響く定員のスピーカー越しの声に、朝日を浴びた其の集団は異様な熱気を周囲に振りまいた。ゆっくりと進むもどかしさに誰ともなく皆一様に目を輝かせ、しまりの無い表情を浮かべて居る。

 其の脳裏に浮かぶのは、『自分こそがテスターに』という共通の思いだろう。

 開店から時間の経過と共に、長蛇の列は店内へと飲み込まれ。未だ吐き出されることなく其の腹の中へとぐいぐい押し込み。

 太陽が頂点へと差し掛かるころに漸く吐き出され始めた者の手には、一枚の長方形の紙が、『栄光への切符』が握られていた。









 テスター公募の後に漸く公開された情報には、たった一行だけの追加文。

『テスター当選者には、シリアルナンバー入りのチケット発送を持って当選の報告とさせていただきます』

 応募総数の明記も、募集テスター人員の明記もされて居ない。

 たったそれだけの追加情報に、全国のゲーマーは不満を燻らせながらもその日を待つことにした。


 そして、本日がその配送予定日。

 千葉 拓斗は、郵便受けに入れられていた見知らぬ封筒に眼が釘付けになった。

 その封筒の表に印字されている、『ゲーム』という文字に。

 その他の一切を忘れたかのようにその場で封を切り中に有るものを取り出す。

 一枚のチケットと簡素な地図、それに日時が書かれているだけの、たった二枚の紙切れ。

 

 チケットには

 『ゲーム』 serial:0025 

 という記載だけ。


 しかし、それだけで、それこそがという思いしか込上げてこない。

 只の紙切れであり、栄光を勝ち取った証。

 数分も眺めて漸く気を落ち着かせると、共に送られてきたもう一枚の紙へと視線を移した。







 指定された場所は巨大なビルの中にある、学校の教室を思わせる開けた一室。

 其の中には既に数十名が入室しており、拓斗が手に持つチケットと同じ色と大きさの紙を握り締められている。

 この後の展望を見るかのように遠い眼を浮かべたり、食い入るようにチケットを眺めたりと、どの顔も緊張と期待に溢れていた。

 

『ザザッ――。此度は当社の『ゲーム』テスターへのご応募誠にありがとう御座います。

 これより『ゲーム』を開始します。お持ちのチケットに記載されているシリアルナンバーをご確認ください。 此方がお呼びしたナンバーが記載されている方から順に別室へと移動していただきます。

 尚、フロア移動に付きまして、階段のみの使用をお願いします。エレベーターのご利用はお控えください。

 『ゲーム』に関する諸説明はスタート後に御座います。

 それではこれより移動をお願いいたします。

 シリアルナンバー:0001 19階、A室にお入りください。シリアルナンバー:0002―――


 


 ――ください。 シリアルナンバー:0025 20階、C室にお入りください」


 いよいよだ、という期待を胸に拓斗はその音声案内にて示された部屋を目指し、現在居る控え室と思われるその部屋を出ると目前に見える階段に足をかけた。


 部屋の中にあるのは機材に繋がれたリクライニング・チェアを思わせる形状のそれのみ。

 そこに『使用手順』という文字を見つけ、それに従うように次々と手を動かし体を動かす。

 アバターとなる体は投射を用いて自身の写し身を用いるらしく、その身体精査も行われる。

 手順の最後となる『ワード発声』と共に、拓斗の意識はヴァーチャルの空間へと飛んだ。








 眼が覚めたような感覚に次いで、視界を埋めたのは仮想現実世界の景観。

 鉄柵の張り巡らされた広場、そこにある簡素な家と思しき建築物。そしてその周囲に密生する木々。

 やや小高くなっているためか、遠めには此処が離島であることを示すように一部砂浜や海が見える。

 

 それから聞こえた声に、自分の他にもこの広場に数名いることが確認できた。

 この光景への賞賛や自身の幸運を噛み締めたりと、口々に言葉を紡ぐ。

 そんな中にあって、時間の経過と共に一人、また一人とその場に姿を見せ始め。

 其の都度辺りに響く声量も増し始める。

 


『規定人員となりましたのでこれよりゲームを開始します。

 最初にルールを説明いたします。一度しか行いませんので良く聞いてください。

 まず皆様方、右手をごらん下さい』



 機械音にも聞こえる複合音声が建物の方から響き、ゲームの開始を告げる。

 次いで流れる声に従い右手を見ると、そこには右手の各指に一つづつ指輪が嵌められていた。

 そして手首には腕輪が嵌められており、横長の四マスに区切られたゲージ、それから時計と思われるデジタル数字、MAPと書かれたボタンが付いている。 



『お気づきになられましたね。それがこのゲームでもっとも重要な物ですので、それを良く覚えといてください。

 それでは説明を続けます。

 

 まずこの地について説明します。

 ここは未開の無人島です。皆様の他には人間も動物もおりません。

 この地で皆様にして頂くゲームの内容は勝ち抜きサバイバルです。

 ここをスタート地点とし、その後ここを再びゴール地点とさせていただきます

 この地点から全員の出発を確認、又はスタートの合図後十二H経過後、ここは一定条件達成まで進入禁止とさせて頂きます。 



 ではゴール地点の進入禁止開放条件の説明に移ります。

 現在四十名のプレイヤーが居りますが、その手にある指輪は全員五個でスタートとなります。

 つまり、現在二百個の指輪がこの島に存在することになります。

 開放条件はこの島に指輪の残存数が『5』の時点となります。

 なお、残存数は二十単位での減少時、こちらからその時点での残存数を放送いたします。


   

 次に指輪の説明へと移ります。

 現在指輪は『空っぽ』という状態です。

 島の各地にある『チェックポイント』を見つけることでその指輪は効果を発揮できるようになります。

 チェックポイントにて効果を受けることができるのは三種類。

 絵柄にて銃、盾、おにぎりとそのポイントにて効果付与できるものは掲示されています。

 実際の形状を御確認いただく為広場中央に設置してありますのでそれをご覧ください』



 広場の中央には事務机ほどの大きさを持つ台座が三つ置かれてあり、そこには先程述べられた三種類の絵柄がそれぞれに刻まれている。

 その台座の上にはデジタル表記された物が其々の台座の上部に浮かび


 マーカー銃:射程五メートルの攻撃武器。HITした相手は生命力0となる。

 バリア   :マーカー銃の攻撃を無効化してくれる不可視のバリア。

 食料    :棒状携帯食料二本入り。一本で二ブロック回復。


 という文字でそれぞれの台座による効果説明がされていた。



『チェックポイントは全部で三十箇所あり、6回までという使用上限も御座います。上限を超えた時点でそのチェックポイントにある台座は消滅します。

 三種類、それぞれ十箇所。同ポイントでの効果付与は一人一度までとなります。

 以上を踏まえた上で、チェックポイントを見つけ出し、数量に限りのある指輪にどの効果を付与するべきかを考え、使用上限に注意を払った上でサバイバルをしてください。

 銃、バリア、食料の具現化には制限時間があり、十二時間の経過と共に消失します。 



 生命力についてご説明します。

 生命力は右腕にある腕輪にて現在値を御確認出来ます。四つのブロック表示されたそれは、三時間の経過で一ブロック消費されます。腕輪にて確認できる時計を使用しながら考えて行動してください。

 注意事項として二ブロック消費時移動速度が半減し、ゼロとなった時点で活動停止となります。

 生命力バーは食事を取ることで回復させることができます。

 生命力がゼロとなったプレイヤーは指輪を所持している状態であろうとその時点でゲームオーバーです。指輪の効果付与に食事が入っている状態であろうと同じですのでご注意ください。

 ゲームオーバーになりますと、指輪は消滅します。


 

 次に地図というボタンですが、これは押すとデジタルマップが展開します。

 島の外観を表示するだけのものでありますが、『三秒長押し』していただくことでグリッド表示に切り替わります。移動中にチェックポイントを見つけた場所を覚えておきたい時などに便利ですのでこれも覚えておいた方がよろしいでしょう。


 

 次に禁止事項です。

 物理的な干渉についてまず説明します。殴る、蹴るなどといった行為があった場合、一度に付き一つ加害者側の指輪が消失します。

 指輪は譲渡できません。恐喝、恫喝等は無意味であるということをお伝えしておきます。

 条件未達成状況でゴール地へ足を踏み入れた者は指輪の全てを消失します。

 


 最後にログアウトについてご説明します。

 ログアウトをするにはゲームクリア後そちらに見える建物内にて行うことができます。

 以上、長くなりましたが説明を終わります。

 それではみなさん、大変お待たせいたしました。

 これよりゲームの開始を宣言させて頂きます。皆様ログアウト目指して頑張ってください。

 それでは』







――  ゲーム・スタート――






 お読み頂きありがとうございます。

 えぇと、活動報告の方へも記載しましたが、改めて此方でも。

 勢いで作った物ですが、これ以上は今のところ続きを考えていません。(まぁ全くというわけではないですが)

 理由は別作を執筆してますので、そちらを優先しているためです。

 

 頭脳戦的な面は残存数に対してのチェックポイントの残数。それも種類別の、場所別の、他にもありますがまぁその辺ですか。

 心理戦的には同じくチェックポイント側の待ち伏せ、この辺は銃とバリア云々とか、まぁ考えると色々でてきそうかな?


 その辺の設定も煮詰めるともう少し緊迫感などだせるとは思いますが、前述の理由で私としては現状はこれ以上は弄る予定はありません、ごめんなさい。

 

 もしこの設定で続きかいてやんよって人が居りましたら、是非!って思ってます。まぁ……居ないでしょうけれど。


 それでは、ここまでお読み頂きありがとうございました。

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