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【1】
冗談、だろ……?
彼は誰にとでもなく呟いた。
窪んだ部分の塗装が剥がれ、真新しい黒い傷が付いたオレンジ色の鉄柱。
渾身のフルスイングで見るも無残にひしゃげた金属バット。
くの字に折れ曲がった凶器を手にした実行犯の、常軌を逸した赤い眼と。
額に突き出た一対の黒いツノ――。
何ひとつ、日常的なものが見当たらなかった。
夢なんだろうか、コレは。
アスファルトに這いつくばったまま、彼は思った。
だが、擦り剥いた膝や手のひらは、いまも脈打つように痛む。
ああ。
――これは、夢ではないのだ。
オリジナル小説処女作です。
至らぬ点も多々ありますが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。