クラス全員で異世界召喚されたが、俺だけ教室に取り残されたのでとりあえず帰宅した
それは、梅雨入りのニュースが流れて少しした六月のことだった。
昼休み直後の日本史の授業。クラスの三分の一くらいがぼんやりしてたと思う。
始めは数人。
後ろから二番目の席にいた俺は、すぐ前の遠藤が不自然に床へと顔を向け、そのまま固まったことに気付いた。
前を見回せば同様に床を見つめているのが二人、三人。
つられて床を見ると、うっすらと光の筋のようなものが走っていた。
次第に強くなる光。
気付けばほとんどのクラスメイトが床を見つめ、先生も口をぽかんと開けて凝視している。
誰かが取り出したのを皮切りに、一斉に授業中は禁止されているスマホを手に撮影や録画をし始めた。ざわつく室内に響く電子音。
俺も同様に取り出したスマホでまずはカメラで二枚、続けて録画を開始した。
顔を上げて見まわしたときにクラスの様子が面白かったので、手を上にあげてそちらも映像に残す。
突然光の筋が光量を上げ、カッと視界一面が白く塗りつぶされた。
「うわっ!?」
思わず声を上げたのは俺だけではなく、全員が床の光を見つめていたことで被害はほぼすべてのクラスメイトに広がっていた。
光の中、ざわめきがぷつりと途切れ静寂が戻る。
視界が戻った時には、クラスメイトの姿は跡形もなく消えていた。
教壇には口を開けたままの日本史の先生。
「え?」
俺はそんな言葉を漏らしながら周りを、後ろを見回した。
残されたのは、俺一人だけだった。
『異世界召喚』
ウェブ小説ですでに王道どころか古風にすらなり始めているジャンルが脳裏によぎる。
「す、ステータス! ステータスオープン!!」
俺のつぶやきは、がらんとした教室の壁にぶつかり霧散した。
ハプニングで一人だけ能力持ったまま取り残されたパターンでは無かったらしい。
しばらくの間職員室の片隅で待機を命じられ、学校に自習を指示する放送が流された。
先生たちが会議をしている間に、生徒指導の先生から先ほどの出来事を聞かれるが、答えられることなんてほとんどない。
少しして警察が呼ばれ、今日はなるべく家から出ないようにと言われて、学校は休校になった。
今日はシフトが入ってない日でよかった。
帰り道、バイトしているファーストフード店の前を通りながらほっと溜息を吐いた。
一人だけ残っていたということで、先生たちは俺が何か知ってるんじゃないかと言いたげな目でじっと見ていた。
きっと警察の捜査ってのが始まったら参考人として色々聞かれるんだろうな。
でも俺何にも知らないし。だいたい異世界召喚って空想でしかないと思ってたし。
なんでうちのクラスで、さらには俺だけ残されたのか、スキルとか付与されてるならともかくただの残され損じゃんか、俺。
そんなことを考えながら歩いていた俺の足がぴたりと止まった。
召喚の条件。
例えば王道の魔王を倒す勇者を探していた?
そしたら召喚されるのは勇者と、よくて巻き込まれが数人だろう。
クラスひとつを召喚した? 異世界人はチートスキルが付与されるからその中から勇者とかそれに値するスキルを狙って、宝くじの十枚セットを買うみたいな感じで。
先生が残されてたのは、まぁ、年齢制限とかだよな?
じゃぁ何で俺が残された?
指定、クラス? 一クラスなんて単位が異世界にあるか?
一定年齢の集団? 学年全部が召喚されなかった理由が不明、俺が残された答えにもなってない。
一定年齢はあり得そう、それに条件をプラスして、同一集団に属している? 俺が残された理由は……属してなかった?
「あ」
思い当たることが一つ。
基本バイト禁止のうちの学校で、俺が許可もらえてる原因でもある。
うちの両親だ。
高校無償化をどう受け取ったのか、高校に支払う金はすべて国から出るんだから、高校からの請求は突っぱねていいと盛大な誤解を信じてるモンスターペアレンツ。
学校からの説明もぶっちして、ごみ箱に捨てられた手紙を読んだ俺は、少しでも足しになればとバイトを始めて毎月一定金額を収めている。それでも足りないけど。
「これが、原因、か?」
情けなさに乾いた笑いがもれた。
サービスを受けるのに料金を払って無ければ、そりゃ、正規の客扱いはされないよなぁ……。
俺は、本気で奨学金の申し込みを検討しようとスマホを取り出した。
読んでいただきありがとうございます~
テンプレのクラス転移書こうとしてたのになぜこうなったww
このタイトルでテンプレじゃないんかい!? って思われた方、それでも面白かったらお星さまぽち~していただけたらうれしいです




