第二章 少女な大将軍とその従者
夏涼と「自称」利家は馬に乗り利家の言う「星華様のもと」へ向かう。夏涼は利家の腰につかまっている形だが、風を切るたびに利家の短髪から流れる甘い香りがするので変な気分になる。利家も、学校にいた女の子程ではないが、整った顔をしている。胸も大きい。木蓮や、女の子とは比にならないくらいだ。
(いいね~、最高)
夏涼は一般女子に言ったらひかれそうなことを考えつつ、馬に揺られた。
馬に乗って、何時間か経過した。村もいくつか通り過ぎている。
(しかし……どの村も昔ながらの木造建築だな……本当にタイムスリップかもな)
夏涼は甘い香りでふらつきそうになりながらも思考した。
日がすっかり傾き、夕暮れになった頃、「星華様のもと」についた。利家が馬から降りる。
「さぁ、ここに星華様がいらっしゃるぞ」
利家がさした先には一つの建造物があった。しかしただの建造物ではない。
(おっ俺ってやっぱりタッタイムスリップしたんだな……なんたって)
(目の前に城……安土城がありゃそう思うしかないだろ!!)
夏涼は安土城イメージ図は何度も見た事があった。この城はそのイメージ図にぴったり一致した。夏涼は口をだらしなくあけたままだった。
夏涼は一つ質問した。
「あー利家さん?」
「なんだ、貴殿」
「利家さんが、星華様、星華様言ってる、その星華っていう人は……」
「かの、天下人になりそうな(実際なってないけど)名将、織田信長ですか?」
「あぁ、そうだぞ」
夏涼は固まった。
(ははは……ちょっと整理するか)
夏涼は冷や汗をかいた。そして半笑いで思考する。
(えっと、俺は本当にタイムスリップしたわけで、来たのは戦国時代のパラレルワールドだってことだ……自分で考えてばからしくなってきたな)
夏涼はため息をつく。そして利家を見た。
「えっと、その信長さんに、会わせていただけるかな?」
「うむ、私もそのつもりだ」
利家は夏涼を置いて一人で歩きはじめ夏涼はそれについていった。
城内はすごく豪華な造りだった。いたるところに金ピカの彫刻が掘ってあり、まぶしい。
夏涼たちが何階かあがった先に大きな金色の襖があった。利家は襖に手をかけた。
「この先に星華様がおられるぞ」
利家は、小声で夏涼に言い、その襖を叩いた。
「星華様、お伝えしたい事があります」
と言い、襖を開けた。
(この時代でもノックみたいなのがあるんだな……)
夏涼はこの時代の意外な習慣に驚いた。
(ノックが始まったのって近頃じゃないっけ……)
そして夏涼はこの世界と、夏涼が来た世界とではズレがあることに気付いた、が信長の前なので思考は停止した。
信長はやけに豪華な椅子に足を組んで座っている。女王様というようなオーラを出しており、君主の威厳を夏涼は感じた。
(これが……あの婆娑羅将軍、織田信長……)
夏涼はその威厳に圧倒され、生唾を飲む。
利家は信長のまえに正座した。それにつられ夏涼も正座をする。
「……それで、伝えたいこととは何かしら。志南」
信長は利家の事を志南と呼んだ。夏涼の事は突っ込むことなく進める。
「はっ。天地の使者と思しき人物を捕まえてきました」
(俺は動物かなんかか?)
当然、夏涼の考えがわかるわけもなく利家は夏涼との出会いを話した。
「…………………………………………………………………………ということなんです」
利家はえらく長い話をした。利家は語るのが好きであった。
「……なるほど、確かに志南の言うように、不思議な格好ね。あなたどこから来たの?」
「うっ……あ~なんというかですね」
「早く言いなさい」
「俺はここと同じだけど、ここじゃないというか……」
「なによ、はっきりしないわね」
信長が足を組みかえる。足が長いのでその行動さえも綺麗だった。
「正直に話すと、俺はここ日本の未来から来たんだよ」
『!?』
二人は驚いた。夏涼を見て次の言葉を待つ。
「だから、俺は君たちがどんな人物なのか良く知っている。とまぁ言っても想像と全然違ったんだよね」
「……なるほど、信じがたい話だがもしこれが本当ならあやつの予言どうりね」
「はい、今日は満月ですし」
「?」
夏涼は首をかしげる。
「それってどういう事?」
「ここは私が説明します星華様。……先日「星読みの鳴」とかいう近頃噂になっている女がな、勝手にここに入ってきて「次の満月の日、一人の天地の使者が現れます。その使者はこの乱れた世を必ず納めてくれます。あなたもその天地の使者に恥じない立派な君主になってください」とだけ言ってな、帰ってしまったんじゃ。それもその噂は全国に広まってしまってな。大変な騒ぎになっておる」
「なるほど……」
夏涼は顎に手を当て考えた。
(俺がこの世界に来ることをわかっていた……いや予知していたということか?)
信長は組んでいた腕を戻し、ため息をついた。
「考えてもらちが明かないわね。であなた名前は?」
「へっ? 俺?」
「貴殿、場をわきまえろ」
「別にいいわよ志南。で名は?」
「俺の名前は、菅原夏涼です」
「夏涼ね」
信長はまた腕を組み考え込んだ。利家は正座のまま下をうつむく。
「分かったわ。志南、夏涼をあなたの兵として旗本に置きなさい。そしてその中国拳法とやらを十分に生かし、私の天下統一に協力しなさい」
「……え?」
夏涼は耳を疑った。
「喜べ夏涼!貴殿は私の配下になったのだぞ!」
(あぁなるほど……って納得できるか!)
夏涼は心の中で叫んだあと、ため息をつき確認する。
「て言う事は、俺も戦場に出ると」
「そういう事よ。あと私の指示は絶対だから…………いいわね」
「…………はい」
(そんなに殺気みたいなオーラを出さないで!信長さん!)
夏涼は信長の殺気に耐えられず目をそらした。
目をそらした夏涼に信長は聞いた。
「ところであなたの、『戦生の名』は何?」
「へ?」
「私はあなたの主となるのよ。そのぐらい知っておかないと」
「えっと、戦生の名……ってなんですか」
利家と信長は驚いた。この時代で戦生の名を知らないというのはあり得ないことだった。
「戦生の名を知らないなんて、本当にあなたは天地の使者なのかもしれないわね」
「そうですね星華様」
利家は信長から視線を外し夏涼に向ける。
「説明するぞ貴殿、良く聞いておれよ。戦生の名というのは、戦いで生きる名と書いて、親しい間柄で使われる、そのもののあだ名みたいなものだ。大きな心の動きがあった時、その場所の特徴や、現状などを元に自分で決める。そのものの生き様みたいなものを現したのが戦生の名だ。しかしこれは簡単に使ってはいけないぞ。親しくもない人が使うと即刻打ち首だ。……私の場合、星華様にいつまでも付いていく事を決心しなのが、南の所でな、だから「志南」なんだ。分かったか貴殿。」
「あぁ、大体。という事は、まず戦生の名を作らないといけないのか」
「別にそんなに急がなくてもいいわ、夏涼。まずはこの乱世に慣れる事よ。そうしてからでも遅くはないわ。それと一応、あなたを天地の使者と考えていくから頑張ってちょうだい」
「はい」
夏涼は素直に返事をした。あの殺気はもう嫌だった。
「では、これで失礼します」
そう言って利家は立ち上がり会釈をし外に出向く。それにつられ夏涼も立ち上がり、軽く会釈をして、この場を去った。
信長の部屋を去った後、利家は、夏涼に満面の笑みを見せた。
「貴殿、すごいな。一回で星華様に気に入られたのは、貴殿が初めてじゃぞ」
「そうなのか」
夏涼は、気に入られたとは思えなかった。
「普通ならば、兵になるのはおろそか、名前も聞いてもらえないのだぞ」
「へー」
夏涼には実感がないが故、適当な返事を返した。利家はその返事に眉を少しゆがめたが、気を取り直す。
「さて、兵になったのだから、未来を考え、まず愛武器を買わなくてはいけないな」
「武器か……確かに素手では戦乱の世は生きていけないな」
(相手は鎧やらの鉄だからな……素手で挑むのはちょっとなー)
「まあ、いい刀鍛冶を紹介するから、そいつと会うまで、考えておれ」
「ああ」
夏涼は顎に手を当て考え始めた。
まだ見ぬ自分のために
初会信長
初会利家
夏涼動揺
何起不明
二話です。利家と同じく信長も私のイメージですのでご了承ください。
この話ですが、いろいろおかしい点があります。(利家がなぜか安土城にいるとか)まあそこは目をつぶってください。
最後の奴ですが私の作った四字熟語みたいなものです。(意味は自分で考えてください)
それでは第三章で~