出会い
「スザンナ、ごめん!遅くなって!」
「いいのよ。」
商店街近くにある、大きな木の下にスザンナは立って待ってくれていた。木の下で佇むスザンナは、木の女神のようだ。今日も美しい。
「もう少し待って来なかったら、アンリの家に行こうと思っていたの。お陰で読みたかった本がゆっくり読めたからいいわよ。」
昨日のオリバー宅の訪問の気疲れからか、すっかり寝坊してしまった。ダニエルはまだ寝ている様子だったが、今日は休日だからいいだろう。
「あそこの角の店でお昼にする?」
「遅れたから、食後のアイスは私が奢るね。」
「やめてよアンリ。お互い様じゃない。」
俺はすれ違う人に、「この子は俺の彼女です!」と紹介したい気分で、スザンナの腕を組んで歩き出す。本当なら腕を組まれたいんだけどな。身長差もあるし、仕方ない。
はあ、でもスザンナに触れる事が出来て幸せ。スザンナの二の腕、柔らかくて気持ちいいんだよな。
店には着いたが、出遅れたせいか店内はいっぱいで、通された席は相席だった。
(とりあえず、さっさと食事済ませてから、スザンナとショッピングして、公園で二人の今後でも語り合おうかな)
そんな事を考えながら席に着き、相席の客を見て激しく後悔した。大きなテーブルの2席を若い男2人が向かい合って座っていた。テーブルが大きいから密着はないが、どっちにしろ、スザンナを男の横に座らすことになる。汚いオッサンよりはマシかもしれないが。スザンナにチョッカイを出されたらどうしようと心配していると
「こんにちは。そちらの方は座らないんですか?」
男が声をかける。見ると男なんか選り取りみどりで、いい男なんか見慣れているはずのスザンナが立ったまま固まっていた。よく見るとこの男、ケンなんか比ではないくらいの美形だ。雰囲気も上品で、どこかの国の王子様でも通用しそうである。スザンナの表情は、どこかポーッとしている。
ヤバい!ヤバいぞ!俺のセンサーが激しく警報を鳴らし出した。スザンナ!男は顔じゃないぞ!目を覚ませ!
「スザンナ、混んでるから、時間置いてまた来ない?」
俺は立ち上がり、スザンナのそばまで行き声をかけた。
「スザンナさんと言われるんですね。どうぞ座って下さい。私達、隣の国から仕事で来たんです。旅の思い出に一緒に食事をしていただけませんか?」
美形王子が、とびきりのスマイルでスザンナに話かける。
「はい」
スザンナは、ポーッとした表情のまま、椅子に向かい歩きだすが、俺が座っていた王子の横の席に行こうとしている!
「スザンナ!そこは私がさっき座ってたから。私の席よ!」
「あっ、そうね。ごめんね。」
スザンナを押し退けて、王子の横に座る俺。
くそう。忌々しい気持ちで席に座る。王子の向かいの若い男も、まあまあ男前だが、王子がキラキラし過ぎているせいか、雰囲気も地味で、スザンナの視界に入っていないようだから、スザンナの隣で座る事を許そう。
「スザンナ、これとこれが美味しそうだから、これにしない?」
俺は、早く出来上がりそうなメニューを提示する。
「え、ええそうね。それにしようかしら」
スザンナは、ポーッとしたままで思考が出来ないのか、俺が勝手に決めても良さそうな雰囲気だ。
「じゃあ、注文するね。」
俺は店員を呼び止めて注文する。朝ごはんを食べていないから、もっとガッツリメニューを注文したかったが、店から早く立ち去るため、涙を飲んで我慢した。




