母親面接
「さあアンリさん、このフルーツ召し上がってみて。昨日取り寄せたばかりなの。」
そう言って、オリバーの母親がフルーツを勧めてくる。オリバーの母親とやらが、口調はにこやかなのだが、目が全く笑っていないのだ。ダニエルには目もくれず、やたらと俺を見てくるし。面接されてるみたいで居心地が悪い。
そして、聞かされる苦労話…
「主人との結婚も反対されたのよ。私が結婚前にお茶屋で働いていたのもあったしね。」
「やめなさい、昔の事じゃないか。」
オリバーの父親がたしなめるが、母親の口調が段々ヒートアップしてきている。愚痴を聞いてくれる人目的で俺は呼ばれたのだろうか?
「私もね、H商会に来た時は姑と舅がまだ元気だったでしょ。それはそれはイビられました。だからね、私は絶対にお嫁さんには優しくするって決めているんです。世間からもね年上女房だの、学がないだの色々叩かれました。でも、私は必死に働いてきて世間を黙らせました。姑もね、死ぬ前に私の手を握ってありがとうって言ったの。もうそれだけで全部が報われた気がしたわ。」
完全にスイッチが入って誰にも止められないと誰もが気づいたので、皆うつむいて黙々とフルーツを食べる。
「アンリさん、私はね、オリバーが結婚する時は、絶対に反対しないって決めてるんです。だから安心してね。」
オリバーがお茶を吹き出している。
「オリバーはね、一人で部屋で本ばかり読んでいる子でね、遊びにも行かないし心配してたの。でも、ダニエルさんと仲良くなってから、友達と歩いていたとか、女性と歩いていたとか、色々聞くようになって、私喜んでいるんです。」
オリバーも大変だな。出歩いても何してるか母親に報告いくのか…こんな母親いたら部屋に閉じ籠るしかなくないか?オリバーって、心配するような性格もしてないのに、この母親全く見えてないんだな。
独りよがりで自分が正しいと思い込むお母さんって結構しんどいな。旦那も制御できてなさそうだし。娘でもいたら、いいクッションになって良さそうだけど、オリバーって一人っ子?お兄さんがいたっけ?まあどうでもいいや。俺はひたすらフルーツを食べ続けた。